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福島みずほのどきどき日記

いのちのゲートキーパーに

 私は以前から超党派の議員連盟で自殺対策の活動をしており、自殺対策担当大
臣となった今、少しでも自殺者を減らすべく全力を挙げています。自殺者は年間
約3万人。10年間で30万人の方が亡くなっています。一人一人の人生とその
人の家族のことを思うと、本当に心が痛みます。

 昨年11月、自殺対策を担当する内閣府の政務三役と内閣府本府参与で構成す
る「自殺対策緊急戦略チーム」は「自殺対策100日プラン」を作りました。年
末年始にはハローワークで、心の健康相談や法律相談など「生きるための総合支
援」を行いました。

 東京のハローワークに視察に行きましたが、多重債務の相談をしていた人が
「時効になっていますよ」と言われ、短期間で解決。ホッとして帰っていきまし
た。法律相談などで救われることはたくさんあります。

 今年2月5日には、自殺総合対策会議で、「100日プラン」をベースに「い
のちを守る自殺対策緊急プラン」を決定しました。まず、一年中で一番自殺をす
る人が多い3月を自殺対策強化月間にしました。

 自殺対策緊急プランとして、ハローワークにおける心の健康相談、中小企業経
営者向け相談、連帯保証制度の在り方の検討、鉄道駅ホームや高層建築物からの
転落防止対策などを盛り込み、内閣を挙げて、対策を講じています。

 3月1日は新橋駅で自殺対策「お父さん眠れてる?」キャンペーンを展開しま
した。キャンペーンのポスターやチラシに「気づき」「共感」「つなぎ」という
言葉があります。内閣だけではなく、ぜひ自治体や企業と一緒になって自殺対策
に取り組んでいきたい。

 自死遺族の人たちと話をしていると、「まさか、と思った」と、言われること
があります。まさに本心だと思います。多くの人が自殺のことを自分にも起こり
得る大事な問題だと考えてもらいたい。

 失業保険が切れる前に自殺をしてしまった人もいる。その人を担当していた公
務員が「失業保険が切れても『こんなことができますよ』と言っておけばよかっ
た」と話をしているのを聞いたことがある。「これからみんなで話をしていきま
す」と聞いて心強く思いました。

 悩みを持つ人々と手紙のやりとりをしているお坊さんたちがいます。手紙を書
くことで悩みを相対化できるし、また、自分と向き合ってくれる人がいることを
確信することで「自分は一人ではない」と感ずることができます。

 手紙で、悩み相談に乗ることは骨の折れることです。そのことをやり続けてい
るお坊さんたちには、心底頭が下がります。ソーシャルワーカーの人たちと話を
すると、多くの人が、自殺の問題にかかわっていたり、関心を持っていたりして
いることが分かります。

 看護師さんから「自殺をして傷付いた人が病院に運び込まれて来る」といった
話や、薬剤師さんが「大丈夫ですか」と尋ねることで救われるケースもあると聞
きます。

 多くの人に「いのちを守るゲートキーパー」になっていただけるよう、働き掛
けていきます。雇用や社会保障の立て直しについても最低限やらなければなりま
せん。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」3月15日号より)
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幸せ実感できる子育てに

『パリの女は産んでいる』(中島さおり著、ポプラ社)という本を読んだことがあ
る。

 3年前にフランスの大統領選に出馬したフランス社会党の女性候補ロワイヤルさん
と対談するためにパリを訪れた。その時、通訳をしてくれた日本人女性には2人の小
さな子どもがいて、彼女から、子ども手当や保育園などの話を聞いて「フランスは子
育てをしやすい国なんだなぁ」ということを実感した。最近、彼女に3人目の子ども
が生まれたとのこと。

 これまた最近、フランスの駐日大使が大臣室に来てくれて、フランスの子育て事情
を話してくれた。2008年のフランスの合計特殊出生率(1人の女性が産む平均の
子ども数)が2・02なのに対し日本は1・37。フランスでは新生児の45%が婚外子で
あるのに対し日本は2%。婚外子が45%と聞いて驚くなかれ。もともと結婚届を出さ
ない関係が増加している中で、連帯市民協約(PACS)ができて、事実婚について
法律婚にかなり準じた保護を与えた。つまり、法律婚と事実婚で、法的に極端な差が
生じないようになっているのである。

 前述したように日本での婚外子の割合は2%。婚外子になると分かっていると、中
絶率が高くなるというデータを見たことがある。いろんな結婚があり、生まれた子ど
もは差別をされないという寛容な社会では、やっぱり子どもは生まれやすいのだろう
なあと思う。

 少子化担当相として、お正月明けにフランスを訪問、「集団的保育園」と「家族的
保育園」の二つを視察してきた。集団的保育園は日本で言えば民間委託のような仕組
みである。家族的保育園は、2、3人の子どもを自宅で見ている「保育ママ」さんが
子どもを連れて集まって、子どもたちを遊ばせたり、交流させたりしていた。

 保育ママさん自身の研修も行っている。あまり人数は多くなく、ゆったりとした時
間が流れている。保育ママさん同士も交流できるし、孤立を防ぐことができる。訪れ
た保育園は、夏になるとバカンスで3週間休みになるとのこと。確かに日本とは違い
すぎるところもある。

 フランスには「全国家族手当金庫」があり、子ども手当や保育所などへの子育て支
援についての財源を一元的に管理している。約7兆円。日本の税収は37兆円だから、
フランスはとにかく子どものためにびっくりするぐらいのお金を使っていることが分
かる。しかもこの7兆円の「全国家族手当金庫」の60%は何と事業主負担なのであ
る。びっくりするぐらい企業も子育てを支援しているのである。

 日本も「少子化でたいへんだ」と騒ぐのだったら、子育て支援のために政治は対応
すべきことをきっちりやっていくべきであって、今、まさにやろうとしている。1月
29日に「子ども・子育てビジョン」を発表した。前文冒頭は「子どもを大切にする社
会をつくりたい」にした。「少子化」「少子化」と若者を追い立てるのではなく、少
子化にならざるを得ない、社会の抱える問題こそ解決すべきなのである。

 格差や貧困をなくし、雇用の確保と安定、そして子育て支援をしっかりやっていき
たい。子育てが「負担」ではなく、「幸せ」と感じることができる社会をつくってい
く。


【共同通信会員情報誌「Kyodo Weekly」2月8日号より】
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貫徹!平和への思い

 最近、記者の人たちに会うと「連立政権に入るのですか」ということばかり聞かれ
る。

 いよいよ衆院選である。激動の政治の季節である。そんな中で、きちんとかじ取り
をし、社民党は議席増を果たし、新しい政治の中で重要な役割を果たさなければなら
ない。

 衆院選でどこの政党が何議席取るかによって、政治の在り方は変わってくる。自民
党政治は末期であると思う。国民の生活は疲弊し、格差は拡大し、年収200万円の
人が、働く人の5人に1人になっている。

 政治を変えようというのが、いまの大きな流れである。新しい政治をつくるとき
に、社民党は大きな役割を果たしたいと思う。

 衆院選後にどの政党の議席数がどのようになっているかによって、まったく政治の
有り様は変わってくる。自民党の一部が民主党へ流れ込んでくるかもしれない。ま
た、自民党と民主党の大連立の可能性だってある。そんな政権が誕生すれば「そこの
けそこのけ、憲法改正が通る」となり、強行採決の“オンパレード”になりかねな
い。

「危ない政権」ができないように、社民党が議席を増やし、社民党の政策を反映さ
せ、またチェックができるようにしたいものである。

 どんなことが大事で、社民党はどんなことで頑張ろうとしているのか。

 まず、格差是正がある。社民党は2002年から格差是正を主張し、労働者派遣法
の抜本改正を訴えてきた。いま、派遣法の抜本改正のために、他党、とりわけ民主党
に働き掛けている最中である。

 また、社会保障費の伸びを毎年2200億円ずつカットしていくことをやめるべき
である。自分で言うのも何だが、2200億円カットの問題を一番初めに国会で問題
にしたのはわたしである。

 次に平和の問題がある。自民、公明両党の与党は2年前、衆院で憲法改正の手続き
を定めた国民投票法案を強行採決した。そして先日も、衆院で憲法審査会の委員数な
ど運営方法を定める審査会規程が与党によってまた強行採決された。社民党は憲法審
査会を動かし憲法改正案づくりをし、憲法9条を変えて、自衛隊の海外での武力行使
を認めることに反対である。

 わたしは11年前に、土井たか子さんに誘われて立候補することを決意した。「国会
の中で憲法9条を変えないという政党がなくなったら困る」と、本当に思ったからで
ある。この思いは強くなることはあっても弱くなることはない。憲法審査会を動かさ
ないこと、自衛隊を海外派兵させないことのために全力を尽くしたい。

 国民の半分以上は、憲法を改正する必要がないと答え、憲法9条を変えない方が良
いという人はもっと多い。しかし、国会の中では、そのように考える議員は極めて少
数になっている。国民と国会の間に大きなズレ、ギャップが生じている。

 二大政党だけが残るということに対して、大きな危機感を持っている。国民の中に
多元的な価値観が必要である。激動の政治。あらゆることが起こり得る。しかし、そ
の中で、政治を志した原点を大事にし、国民の期待に応え、信頼を裏切ることだけは
絶対しない、と決意している。


【共同通信社会員情報誌「Kyodo Weekly」6月22日号より】


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日本ブランド

 伊勢崎賢治さんはアフガニスタンで部族の武装解除に成功した人である。国際紛争
を解決し、国際平和学を教えている紛争解決のプロである。アフガンと部族の長たち
に「武装・動員解除、元兵士の社会復帰」(DDR)をしてもらい、武器を破壊させる
経過がとっても面白い。

 伊勢崎さんいわく「憲法9条のおかげである」と。日本は平和憲法を持ち、軍事力
をバックに他国に侵略戦争をしないという「美しい誤解」(伊勢崎さん)があって、
DDRに成功したそうな。

 確かに、中東などでは多くの人が親日的である。ポーランドでも中南米でも「ヒロ
シマ・ナガサキ」は知られている。戦後復興を遂げ、科学技術が発達した国として尊
敬もされてきた。

 わたしは、戦後、日本には良いところがいっぱいあったと思う。あると言うべき
か。他国で武力行使をしなかったこと、武器輸出三原則があって日本製の武器が世界
中の子どもを殺傷してこなかったこと、などが特に良い点だと思う。

 伊勢崎さんの話は「戦争をしない」と決めた憲法9条が日本のかけがえのない信
頼、ブランドになっているということである。グッチやシャネルではないけれど、ブ
ランドは一朝一夕ではできない。これはとても貴重である。

 オバマ米大統領がプラハで核軍縮に取り組むと言明した。「唯一の核兵器を使った
国として、核廃絶に努力する」という趣旨のことも言った。また、オバマ大統領の核
廃絶は二つあり、核兵器とプルトニウム利用の二つをともに問題にしている。核兵器
廃絶だけでは駄目であるとの認識は正しいと思う。

 日本は核兵器を使われた国として、もっと核兵器廃絶の先頭に立つべきである。日
本こそ憲法9条を基に平和に貢献すべしと思うが、日本の政治はそうなっていない。

 海上自衛隊がソマリア沖に派兵された。国会で首相に質問をしたが、首相答弁は
「まず、応急措置的に自衛隊を出し、その後、海賊対処法を作る」というものであっ
た。つまり、新たな立法措置を講じないまま海上自衛隊は海外へ出掛け、これから法
律を成立させようとしているのである。国会の事前承諾も一切ない。

 海賊対処法案は、別にソマリア沖に地域を限定していない。これなら「海賊」を名
目に、世界のどこの海にも自衛隊は出掛けることができてしまう。

 世界中には、日本人、日系企業、日本の製品があふれている。それを守れと出掛け
ることができるとしたら、いつでも、どこでも自衛隊が行けることになってしまわな
いか。邦人保護のための派兵ということなら、戦前の侵略戦争の論理とどこが違うの
か。海賊の次は山賊。山賊の次はテロとならないか。2005年に発表された自民党の新
憲法草案は必ずしも国会の事前承認がなくとも自衛隊を出せることになっている。海
賊対処法案の次は自衛隊派兵恒久法案にならないか―。

 前述の伊勢崎賢治さんは今回、「国益」を理由に自衛隊が派兵されたことを「戦後
最大の違憲行為」「憲法9条は日本人にもったいない」と言う。わたしは「ちょっと
待ってくれ。ちゃんと生かして輝かせるから」と言いたい。

【2009/05/18号「Kyodo Weekly」より】
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わたしも「軍縮、軍縮」

 オバマ米大統領が核軍縮について演説を行った。米大統領としてヒロシマ、ナガサ
キについて初めて反省の弁を述べるとともに、核軍縮について提言を行った。

 世界の核兵器のほとんどを米国とロシアが保有している。さまざまな国の核軍縮に
取り組む人たちと話をしていると、「今が核廃絶についての大きなチャンス」と口々
に言う。わたしは毎年、ナガサキの平和祈念式典に参加しているが、大きく核廃絶に
向かって、活動をしていこうと意を強くしている。

  「大砲かバターか」という議論があるが、わたしは断然、大砲ではなくバターをと
いう意見である。軍縮が進み、武器で苦しむ人たちが減り、税金が人々のために使わ
れる、そんな世界を実現したい。

 戦後の日本には誇るべきものがたくさんあるとわたしは考える。日本が武力行使を
して人々を傷つけることはなかったということ。武器輸出三原則にのっとり、海外に
武器を売っていないということ。

 ところが、国会で「武器を海外で売れるようにすべきだ」という意見が出ることが
ある。とんでもない。日本製のコンパクトで性能が良くて、環境に優しく、人間に
とって極めて残酷な武器が、世界の子どもたちを殺すことをわたしたちが望むのか、
ということが問われている。

 クラスター(集束)爆弾によって手足を失ったセルビア人のカペタノビッチさんに
東京で会った。彼や非政府組織(NGO)の人たちの努力で、クラスター爆弾全面禁
止条約ができた。

 クラスター爆弾とは、小さな子爆弾に分裂し、不発弾が地雷のような被害を生む爆
弾である。戦争が終わった後にも人々が、とりわけ子どもたちなどがクラスター爆弾
の被害に遭う、という極めて非人道的な兵器である。

 日本の自衛隊も148億円分のクラスター爆弾を保有している。しかも国産品の割
合は77%である。これらのクラスター爆弾を廃棄するのに、100億円以上掛かると
いわれている。地雷廃棄のときも同様だった。地雷を爆破させ、廃棄させるために莫
大な費用が掛かった。高い武器を買って、今度は廃棄するのに多額の税金を掛けてい
るのである。そもそもこんな武器を買うな、と言いたい。地雷やクラスター爆弾を国
内の一体どこにまくというのか。

 ミサイル防衛計画に今まで7千億円を超えるお金を使い、これからも何兆円も掛か
るといわれている。有効性や税金の掛け方も含めて客観的に検証していく必要があ
る。限りのある税金を何に使っていくのかを真剣に議論をしよう、と言いたい。

 武器の問題とは違うが、米国の領土であるグアムに米軍のための基地を造るのに、
日本の税金の中から7千億円を掛ける。米軍住宅1戸造るのに7千万円とも。「大砲
ではなくバターを」と言ったのは、人の命を生かすことにこそ貴重な税金を使えとい
う思いからである。生活保護の母子加算を廃止し、200億円ほどをカットした。毎
年2200億円ずつ社会保障費をカットし続けて、どれほど医療・介護・年金・生活
保護などが壊れたのか。

 オバマ氏ではないが、わたしも「軍縮、軍縮」と叫んで、命を大切にする政治を実
現したい。

【共同通信社会員情報誌「Kyodo Weekly」4月20日号より】
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企業献金廃止し新しい政治を

企業献金廃止し新しい政治を

 政治とお金の問題で、国会は今、大揺れである。社民党は企業献金を禁止すべきだ
という明確な立場である。参院議員になって11年。いろんな業界が政治を動かすのを
見てきた。こんなのは全くひどい。企業が議員に企業献金をし、議員はその企業や業
界のために動く。しかし、これは政策や政治を金で買うということではないか。

 ムダな大規模公共事業の指摘をたくさんしてきた。すべてではもちろんないが、ム
ダなものも不透明なものも、理解できないものも合理的でないものもたくさんある。
ダムや埋め立て、ある種の道路や建造物や橋…。工期がどんどん延び、当初予算の何
倍にも膨れ上がることなど、ざらである。これらに全部税金が使われているのであ
る。

 佐世保市に立ち退いてもらったために道路特定財源の費用で造った8棟の米軍住宅
を見に行った。1キロメートルに200億円も1000億円近く掛かる道路。土地は
タダ。そして、建物を8棟だけ造るために28億円掛かっている。なぜこの建物を造る
ために28億円も掛かるのか。本当に首をひねってしまった。

 民主党の小沢一郎代表は「政党支部なら企業献金を受けても問題ない」と言ったけ
れども、巨額の政治献金を受け続けることは政治のあるべき方向として間違っている
のではなかろうか。

 わたしは国会で、特に雇用問題に取り組んできた。日本経団連をはじめさまざまな
経済界が提言を出している。経団連は一貫して、労働法制を規制緩和すべきだという
立場であり、そのような提言をしている。規制改革会議も規制緩和一辺倒。そうした
中、国会で労働法制が規制緩和されてきた。

 2002年には労働者派遣を製造業についても認める、と法律が変わった。今や非
正規雇用は3人に1人、フリーターの生涯獲得賃金は正社員の4分の1である。大企
業は内部留保を増やし、株式配当はこの10年間で、4兆円が16兆円になった。大企業
は好況の時に大いにもうけたが、その陰にはワーキング・プアの存在があり、大不況
になった途端、たたき切られている。企業献金し、自分たちに都合の良い法制度をつ
くり、税制を変え、雇用保険だって受けにくくしてきたのである。

 当たり前だが、政治は全国民、主権者のものである。しかし、現実はそうなってい
ない。国民一人一人は広く薄くお金をかき集める対象であり、政治は強くて大きな
者、自分や自分の政党に、そして自分に巨額の献金をくれる者のために動いてきたの
ではないか。

 議員の周りに利権構造がつくられ、それに群がる人が出てくる。その議員が亡くな
れば、それで終わりということではない。ちゃんとした2世、3世議員もいるが、自
民党の半分以上が2世、3世議員であり、わたしにはこれは利権構造の相続に思え
る。

 社民党は新しい政治を切り開いていきたいと考えている。新しい政治をするために
は新しい仕組みが必要である。企業献金をもらい続けて、新しい政治を切り開いてい
けるわけがない。02年に野党で出した公共事業を受注している企業から献金を受けな
いという法案は与党の反対でつぶれた。再度提出し、成立を目指したい。

【共同通信社会員情報誌「Kyodo Weekly」03月23日号より】

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いのちと緑で雇用を

 わたしは愛国者である。風力発電や太陽光発電など自然エネルギー問題で、日本が
孤立化し、後れを取っていくことを心から心配をしている。日本は問題を提起した
り、産業を育成するチャンスをみすみす逃していると思っている。

 例えば、国際連帯税、つまり、国際的な投機に税をかけるという考え方などについ
て、福田内閣の時に検討するとなったが、うやむやになってしまった。昨年の北海道
洞爺湖サミットの時もホスト国として地球温暖化防止や環境についても数値目標を
もっと具体的に設定し、イニシアチブを取れたのに、それもできなかった。

 わたしが理解できないのは、日本はなぜ自然エネルギーの促進に積極的じゃないの
かということである。約10年前に国会議員になって、自然エネルギー促進議員連盟を
多くの人とつくった。自然エネルギーの促進は多くのメリットを生む。いま、米国の
オバマ大統領が言うグリーン・ニューディールにつながっている。

 ドイツは、自然エネルギー促進に積極的な国である。1990年に自然エネルギー
を固定価格で買い取る「買い取り価格制」の導入を盛り込んだ自然エネルギー促進法
を成立させた。その後、自然エネルギーの割合はぐんぐん高くなっている。

 20世紀のドイツの産業・経済・社会に貢献した自動車の割合を21世紀は自然エネル
ギーが果たすとして、電力供給の主力45%を自然エネルギーにし、二酸化炭素(CO
2)削減は1・1億トン、産業経済効果は4兆円、雇用効果は25万人と試算。地域の
活性化を図ろうとしている。スペインも94年に固定価格制を導入し、デンマークも採
用している。

 言うまでもないことだが、再生可能エネルギーは環境にいいし、新たなビジネスを
つくり、雇用創出につながる。社民党はこの自然エネルギーを促進させようと努力し
ている。

 それにしても、と思う。ドイツが法律をつくった10年前、社民党はほかの野党とと
もに、ドイツと同じような自然エネルギー法案をつくり、国会に提出した。しかし、
経済産業省がつくった電力会社に一定量の新エネルギーの導入を義務付けるRPS制
度に負けてしまった。まさに「失われた10年」。もし、当時、自然エネルギー促進法
が成立していれば、日本は太陽光発電について世界で首位の座を奪われることなく、
風力発電をはじめほかの発電ももっともっと隆盛を極めていたことだろう。

 日本は技術があるのに、政治が新しい産業がテイクオフ(離陸)する間、しっかり
応援しないのである。なぜ、経産省が消極的なのか分からない。分散化する地方分権
的な自然エネルギーがいやなのか。

 日本弁護士会がデンマークに視察に行き、「こんなに環境基準が厳しかったら、経
済にとってマイナスではないですか」と聞いたら「逆です。環境にいいデンマークの
製品は世界で高く評価され、売れています」とのことだった。うーん、風力発電機器
には確かにデンマーク製も多い。社民党は雇用創出として、いのちと緑の公共事業
「ヒューマン・ニューディール」を提唱している。自然エネルギー促進法をつくり、
雇用創出すべく全力を挙げたい。

【共同通信社会員情報誌「KyodoWeekly」02月23日より】
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「政治災害」に立ち向かう

 1月2日夜、私は厚生労働省の講堂にいた。260人の人たちが布団を敷いて休ん
でいる。 この光景、どこかで見た記憶がある。そうだ、地震などの被災地の体
育館の風景に似ている。地震の被災者の人たちは家族単位でまとまり、この「派
遣村」で休んでいる人たちは、男性の単身者たちという違いはあるけれど…。

 地震は「自然災害」なのに対し、派遣切りを含めた雇用の劣化はまさに「政治災
害」だというということをあらためて痛感する。政治が生み出した「雇用破壊による
被災者」が目の前で布団を敷いて寝ているのだ。

 政治災害と言うには理由がある。度重なる派遣法の改悪、労働法制の規制緩和に
よって違法なことを合法にしてきた。2003年、小泉政権下、製造業についても派遣を
可能にした。大企業の大工場の現場で、派遣が爆発的に増えたことはご存じの通りで
ある。

 景気が悪くなると問答無用で首を切られた。真っ先に。契約期間の途中でも切られ
る。明日、仕事があるかどうか分からない過酷な働き方である。グッドウィルやフル
キャストといった日雇い派遣の問題に取り組んできたが、今回よく分かった。派遣
は、みんな「日雇い」ではないか。派遣切りに遭えば、明日の雇用も保障されない。

 派遣村の湯浅誠“村長”が書いた「反貧困」(岩波新書)という本がある。彼はこ
こで「すべり台社会」ということを書いた。社会に「溜(た)め」がなくなっている
社会のことだ。そのことを今、本当に痛感している。

 派遣切りに遭うと一挙に仕事と住まいを失い、路頭に迷うのである。派遣村には、
茨城から歩いて来た人がいる、所持金が全くないという人たちもいる。神奈川で派遣
切りに遭って、自殺を図り、助けられて、お巡りさんと一緒に来たという人もいる。

 1月5日で日比谷公園の派遣村はなくなったけれども、ニュースでちらっと見て、群
馬から自転車でとにかくやってきたという人もいる。社民党の県連合などには、電話
がいっぱい今もかかってくる。「派遣村」の功績は、貧困や派遣切りの実態をとにな
く「可視化」したことである。

 政治の動きも急ピッチである。参院では「雇用と住居など国民生活の安定を確保す
る緊急決議」を何とか全会一致で行った。民主党は今まで60日以下の日雇い派遣を禁
止するという案であった。そこで社民党は、民主党に働き掛けて、専門職に派遣を限
定し、製造業については派遣を認めないという法案を提出したいと奮闘をしている。
野党だけでなく、与党にも働き掛けたい。歴代首相は、今まで私が非正規雇用の問題
について質問をすると、「多様な働き方」と答弁をしてきた。その責任を取ってもら
いたい。

 私は「派遣村」で力をもらった。勇気をもらい、励まされた。それは「分かち合
い」「助け合い」「支え合い」の姿からだ。

 大分キヤノンの派遣切りに対して、地元では匿名で100万円カンパしたり、また、
高校生たちが街頭でカンパ活動を繰り広げたりということが起きた。「人ごとではな
い」。そんな気持ちが広がっている。「連帯」を具体的な成果にと、政治の場面で頑
張りたい。

【共同通信社会員情報誌「KyodoWeekly」01月26日より】


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雇用安定社会の創造を

 12月4日、東京・日比谷野外音楽堂で「派遣法の抜本改正を勝ち取ろう」という集
会が開かれた。大分キヤノンで「派遣切り」に遭った若者は「僕をホームレスにさせ
ないでください」。別の労働者は「あなたは今日で終わり。10日後に寮を出て行って
くれと言われた」などと、次々に発言した。

 そうなのだ。日雇い派遣であれ、そうでなくても、また期間の定めのある派遣であ
れ、定めのない派遣であれ、「あなたは今日で終わりです」と言われてしまう働き方
なのである。中途解約だって、全く自由に行われている。「ああ、そうか。理由がな
くても、期間の途中でもクビにできるから、派遣という働き方は企業にとって便利な
のだ」ということをひとつひとつの事例で痛感する。

 非正規雇用の働き方について、国会でずっと質問をしてきた。政府の答弁は「多様
な働き方を望む人たちがいる」というものだった。しかし、本当に問いたい。「あな
たは今日で終わりです」といつ言われるか分からない働き方など、一体、誰が望むだ
ろうか。

 景気の“調整弁”として使われ、いったん不況になったら、一挙に“放出”される
のである。いったん非正規雇用となると、なかなか正社員になれない。だから、賞与
や昇級がなくても「正社員」であり続けるために、必死で働かざるを得ないのであ
る。

 政府は、先の臨時国会に労働者派遣法改正案を提出した。30日以内の日雇い派遣は
禁止するというもので、今回の派遣切りなどに何ら対応できない内容である。

 2003年の派遣法改悪で、製造業へも派遣が可能とし、大企業の大工場の現場で派遣
が広がっていった。派遣については、製造業については認めず、専門職に限定すべき
である。そうすれば、「部品」のようにたたき切る派遣切りは少なくなっていくだろ
う。社民党はそのような案を主張している。

 これからどのような日本社会をつくっていくのか。まさにそのことが問われてい
る。今のように、3人に1人が非正規雇用の社会をつくり、4人に1人が年収200万円以
下の人であるという社会をつくるのか。それとも、もっと安定した社会をつくるの
か。今のままでは国民皆保険もどんどん壊れていってしまう。

 米国は、1%の人が20%の富を持ち、1990年代に受刑者数が100万人だったのが、10
年ちょっとで倍の200万人となった。私は、格差の拡大している州ほど殺人率が高い
という統計を見て、ギョッとなったことがある。
 
 確かにそうだ。社会の中に絶望が広がっていて、いいわけがない。社会は別の形で
コストを払うことになる。

 私は、社会民主主義のまさに出番だと思う。大規模公共事業を見直して、医療、教
育、福祉にもっとお金を振り向け、地球温暖化に対応する再生可能エネルギーの開発
などで「グリーンジョブ(緑の雇用)」を創出すべきである。そして、できるだけ多
くの人に税金と保険料を払ってもらう方がはるかに社会は安定する。非正規雇用の
人、高齢者、障害のある人などをどんどん押しのけていく「排除型社会」からの転換
を訴えたい。

【共同通信社会員情報誌「Kyodo Weekly」12月29日号より】
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迷走の国家買収的事業

 国会の代表質問と予算委員会で、麻生太郎首相に質問をした。麻生氏が首相になっ
て2カ月になるが、正直、何をやりたいのかさっぱり分からない。この間、さまざま
な政策が提示されたが、迷走に次ぐ迷走を繰り返しているからである。

 定額給付金の問題―。初めは「定額減税」構想だったのに、いつしか「生活支援定
額給付金」となり、「定額給付金」となってしまった。所得制限を設けないと言って
いたのだが、「えっ、麻生さんも国会議員ももらうの?」という声が大きくなったこ
とから、突然、所得制限を設けることとなった。しかし、所得制限を設けるのは事務
が煩雑になるという意見が出るや、所得制限を設けず、年収1800万円以上の人
は、自主的に辞退をしてくれとなったのである。なぜ1800万円なのかもよく分か
らない。そして最終的には、所得制限を設けるかどうかは各自治体で判断をするとい
う。

 これはもう「政策」なんかではない。辞退する人と辞退しない人が出てくるだろう
し、まったく変な制度である。大金持ちは国民年金を受給するのはやめてくれ、と言
えるだろうか。どっちに転んでも問題が起きるから、責任を自治体に押し付けたので
ある。そして、高額所得者にも受け取るか、受け取らないかの責任を押し付けたの
だ。これで「政治」かと怒りが込み上げてくる。

 そもそも1回だけばらまいて、どんな効果があるのだろうか。地域振興券だって、
配布額7000億円に対し、配布費用700億円!景気への有効性はほとんどなかっ
たといわれている。今回の2兆円は全くの無駄遣いではないか。このお金は麻生首相
のものでも、自民党のものでもなく、国民の税金なのである。首相は「3年後には消
費税を上げる」と明言をした。定額給付金は1回だけだが、増税は一生である。

 地方への交付税についてもまったく同じく迷走に次ぐ迷走である。麻生首相は追加
経済対策として道路特定財源から1兆円を地方への臨時交付金に回すよう指示したも
のの、この1兆円に関して現行の地方道路整備臨時交付金7000億円を含むかどう
かが明確でない。1兆円なのか、1兆7000億円なのか―。ある知事は一緒になっ
た会合で「1回こっきりなんておかしいし、効果がない。1兆円の税源移譲をすべき
である」と言ったが、その通りである。

 定額給付金にしろ、地方への交付税にしろ、みそは「1回こっきり」ということ。
衆院選前の1回きりのばらまきである。国家的規模での公職選挙法違反の「買収」み
たいなものではないか。定額給付金はやめるべきである。

 オバマ上院議員が米次期大統領に選ばれた。沖縄では「オバマさんになって一体何
が変わるの?」という声を聞いた。もちろん、その通りの面もある。しかし、と私は
思う。米国民は戦争に「ノー」、そして格差と貧困を拡大する政治に「ノー」と言っ
たのだと。

 日本も利権政治、国民を苦しめる小泉構造改革、戦争に加担する政治に決別すると
きだ。新自由主義から社会民主主義の経済政策へ転換すべきときである。国会の「も
う政治とはいえない政治」を終わらせ、新しい政治を切り開いていく。

【共同通信社会員情報誌「KyodoWeekly」11月24日号より】
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しっかり審議、そして解散

 「そわそわ国会」「ジタバタ国会」となってきている。「今日の天気予報」ではな
いけれど、毎日いろんな情報が飛び、微妙に解散の日についての予測が変わってい
く。今の時点では11月30日説が濃厚となっている。

 株価がどーんと下がって、今とても首相は衆院を解散できる状況ではないと考えて
いる節もあり、また、4度目の挑戦で首相になったからには1日でも長くやりたいと
思っているようにも見える。これに対して、民主党は「解散をしろ」と迫っている。

 私が国会の中で痛感しているのは、どちらもどっちが自分たちにとって選挙が有利
かということがともすれば優先し、国民のことが忘れられがちだということである。

 2008年度補正予算案と、海上自衛隊によるインド洋での給油活動を継続するための
新テロ対策特別措置法改正案はしっかり成立させたい自民党。「早く解散を」という
ことで、衆院での新テロ特措法案の審議を2日間で終わらせることに合意した民主
党。やっぱり変だ。

 前回、新テロ対策特別措置法が参院で議論になった時には2カ月かけた。日本が提
供した油が一体何に使われているのか情報公開を求めて大議論になったことを覚えて
いる人も多いだろう。それがなぜ今回ちゃちゃちゃと成立させてしまうのか。

 米国のアフガニスタン攻撃とイラク攻撃はきちんと検証されなければならないこと
だ。しかも日本は名古屋高裁の違憲判決ではないが、戦争に加担してはならないの
だ。おまけに多額の税金を使っている。今までインド洋で給油に使った税金は700億
円。油代だけでは234億円。きちんと議論をすべきである。

 解散権を持っている首相に「解散、解散」と迫っても「その手に乗るか」と、反対
の態度を取られるのは当然である。また、国会は審議をすべきことはきちんと審議す
べきである。

 米国のサブプライム住宅ローン問題や今の金融危機はグローバリゼーションの中
で、新自由主義で突っ走ってきた米国経済が破たんをきたしたということである。
「暴走する資本主義」ではだめだということである。高所得世帯の上位1%が総収入
の20%を占める社会が多くの人にとって住み良い社会であるわけがない。

 日本でも政策の転換が今こそ必要である。この10年間くらいの間に、日本はすっか
り変わってしまったと私は思う。大企業が潤えば働く人が潤い、大都会が潤えば地方
が潤うという関係はなくなってしまった。

 サラリーマンの給料は10年間下がり続け、労働分配率は下がった。働く人の3人に1
人が非正規雇用。今、真っ先に派遣の人たちが切られている。株式配当は4兆円から
16兆円と4倍になり、内部留保も増えたのに働く人たちは使い捨てである。

 2003年から始まった「三位一体改革」ならぬ「三位バラバラ改悪」で、地方に行く
財源は交付税で5兆円、補助金で1兆円、合計6兆円減った。

 自治体病院の休止や民営化も進んでいる。地域に住めず、人口移動すら起きてい
る。だから政策転換こそ必要なのである。まっとうな政治へと変えることこそが最大
の景気回復なのである。

【共同通信社会員情報誌「KyodoWeekly」2008/10/27号掲載】
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コップの中の争い

 国会の議員会館で、夕方、資料を読んでいると、電話が入る。「福田首相が午後9
時半から記者会見をします。会見の中身はまだ分かりません」ということである。

 辞職会見だろうということになる。去年9月、安倍晋三前首相も突然、政権を投げ
出した。デジャブュ(既視感)。まさか。ひどい。福田さんの記者会見も安倍さんの
記者会見も国民に対する謝罪の言葉はなく、国民に対する思いはまったく感じられな
い。国民投げ出し内閣。ポイッと投げ捨てられているのは国民ではないか。衆院選の
ために福田首相を辞めさせたい自民党と、政権を投げ出す福田さんの両方とも国民の
ことをまったく考えていないのではないか。

 かつてパチンコ屋さんの前に毎日「新装開店オープン」の花輪が飾ってあって、私
は通り掛かるたびに「今日も新装開店オープンなのかな」と、どこかおかしく思って
いた。

 自民党も「新装開店オープン」して、看板を付け替えて、選挙をするつもりなの
だ。支持率が上がったところで、ほとんど何もせず、ぼろが出ないうちに選挙をする
というシナリオ。国民も甘くみられているものであると、腹が立ってくる。看板を変
えても中身の政策が変わらなくては政治は変わらない。自民党はドッジボールの球を
絶対に外へは渡さないという執念だけで、政治をやっているようにも思える。

 今、全国を回っている。先日も沖縄に行き、タクシーの運転手さん、農業や漁業従
事者の意見を聞いた。

 当たり前だが、東京とはまったく違う。東京のタクシー運転手さんの年収は平均3
00万円をちょっと上回る。これでは子どもの教育費など本当に出せない。しかし、
沖縄のタクシー運転手さんの平均年収は180万円台。初乗りは500円で、燃費高
騰で、もうまったくやれない状況になっている。漁業関係者もそうだが、燃費を含め
たコスト高に仕事もできない状況になっている。

 北海道の北見市に行き、生協などで小売業者の話を聞いた。生活品がどれもこれも
高騰している。「北見は8月末から寒くなる。年間30万円ぐらい灯油代が掛かる。今
年の冬は高齢者の中で凍死者が出るのではないか」。そんな話も聞いた。北見赤十字
病院では、リウマチなどの内科医がいないと院長に聞いた。治療を受けるために旭川
や札幌に引っ越す人がいる、との話も聞いた。病院を求めて人口移動が起きているの
だ。

 千葉県の銚子市が、市立病院の閉鎖を決めた。多くの市民が反対をしているにもか
かわらず、である。総務省は「自治体病院改革ガイドライン」を作り、自治体病院の
集約化をしようとしている。集約化と言っているが、赤字の病院は撤退せよというこ
とである。

 地方財政が逼迫(ひっぱく)している折、国の助成を増やし、病院を確保すること
が必要なのに、今の政治は生きることの支援を放棄している。自民党総裁選では経済
政策をめぐり、「上げ潮」か「積極財政」かが問われるといわれている。しかし
「コップの中の争い」でしかない。対立軸は「新自由主義」か「社会民主主義」か、
である。政策転換のために、社民党は奮闘し、選挙で躍進をしたい。

【共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」09月15日号より】
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だんだん、どんどん社民主義

 社会民主主義の可能性を確認するために7月上旬、ギリシャを訪れた。社会主義イ
ンターナショナルの世界大会が5年ぶりに開かれたのである。社会主義というよりも
社会民主主義。世界中から120カ国、150の政党、約700人以上が大集合し
た。

 ヨーロッパには政権党も、かつて政権を担った政党も多い。ドイツ社民党、イギリ
ス労働党、フランス社会党、スペイン社会労働党、スウェーデン社民労働党、ノル
ウェー労働党…。そして今や中南米の多くの国では政権を社民党が取っている。

 アフリカの国々も多い。南アフリカのANCをはじめ多くの政党が参加をしてい
た。私は、長年あこがれていたスウェーデン社民労働党のモナ・サリーン党首らに会
えて、元気をいっぱいもらった。

 大会の主なテーマは・気候変動・格差、貧困、食糧の危機・平和―である。私は、
平和のところで壇上でスピーチをした。憲法9条の意義と9条を生かす動き、社民党
は2001年「北東アジア非核地帯の設置」および「北東アジア総合安全保障機構の
創設構想」を提案し、それが6カ国協議の決議に採用されたこと、イラク派兵や自衛
隊派兵恒久法案を作る動き、憲法改悪の動きなどについて話をし、社民党は日本が軍
事大国になることを阻止する要の政党になると、決意を表明した。

 また、パレスチナのアッバス議長とイスラエルのバラク労働党党首が壇上で一緒に
並び、スピーチをした。座っている距離は近いけれど問題解決まではまだまだ遠い。

 私は大会の主な3つのテーマが非常につながっていることをあらためて痛感した。

 平和を議論したときには、もう紛争や戦争をしている場合ではないと繰り返し語ら
れた。また、資源や水の奪い合いが紛争や戦争を生んでいるという指摘があった。中
南米ハイチの社民党員がこう演説をした。「気候変動で自然災害が起き、収穫高がゼ
ロになった。もう種も全部食べてしまった。種を買うお金もない。栄養状態が悪く
なっている。もう待ったなしだ」と。

 気候変動は誰が起こし、誰に被害が発生しているのか。気候変動は特に、貧しい地
域や貧しい人々を直撃している。そして、格差を拡大し、貧困の問題、食糧の危機を
生んでいる。気候変動と貧困問題はつながっている。
 
 日本で開かれた主要国(G8)首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の宣言は、地球
温暖化について「二酸化炭素(CO2)を2050年までに半減することを世界に提
案をする」という恐ろしく気の長いもの。気候変動が待ったなしの課題であるという
危機感がまったくない。ひどすぎる。

 社会主義インターナショナルの大会では、新自由主義の経済が何を生んだのか、公
平公正な経済の在り方、投資を規制するトービン税導入の必要性などが議論された。

 世界にはふたつの大きな流れがあり、ひとつはアメリカを中心とした新自由主義の
流れであり、もうひとつは、この大会でも集まった社会民主主義の流れである。時代
はだんだん社民党、時代はどんどん社民党だと思った。日本の中でも、国会の中でも
ふたつの潮流が闘っている。日本の社民党も、もっと頑張らなきゃ。

【共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」08月18日号より】
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裁判員制度の開始延期を

 国会議員になってこの7月でちょうど10年。政治の責任をますます重く感じるよう
になった。どういう法制度をつくるかによって、ひとりの人の一生が決まっていく。
政府が戦争に参加すると決定すれば、多くの人命が失われていく。後期高齢者医
療制度などもガラリと変わる。秋葉原の事件だって、2003年に製造業へも派遣が
できるとし、派遣先を大きく拡大したことと無縁ではないだろう。「政治は人が涙を流
さないためにある」とも思うようになった。

 来年5月にスタートする裁判員制度のことで「一体、どう考えたらいいのですか」
「選ばれてもやれるかどうか不安です」との質問や意見をもらう。政府が想定してい
る裁判員制度が決していいわけではない。よく言われるが、99・9%の有罪率で本
当にいいのだろうか。長い目で見れば、「司法の民主化」は国民が司法を身近に感
じ、責任も担っていくのだから、それこそ長い目で見ればやはりいいことだろう。

 しかし、状況が整っていないとして、実施を延期すべきではないか。見切り発車は
良くない。裁判は命と人権に関することであり、1件でも間違えれば、信頼関係が壊
れていく。

 第1に裁判員6人は陪審制と違って、量刑についても責任を持つ。極めて重い責任
である。しかも全員一致ではない。自分は、この人は冤罪(えんざい)で無罪だと
思ったとする。しかし、合計9人のうち5人の多数決で死刑になったとする。自分は
その判決に責任を持つのである。どうやってその後生きていけるだろうか。一生悔や
みきれない思いを抱えて生きていくことになるだろう。死刑にするには、せめて全員
一致でなければならないということが必要だろう。

 第2に、冤罪を生まないために、代用監獄の廃止や、取り調べの様子を記録するな
ど捜査の可視化、証拠開示などが必要である。今まで多くの冤罪事件を生んできた。
制度改革の前提条件がなければ、一般の人は冤罪に知らず知らずのうちに加担する
ことになりかねない。改革が実現しないうちに裁判員制度に踏み切ることには反対で
ある。

 第3に、裁判が拙速になるのではないか。アンケートによれば、職業別に見ると、
経営管理者・社員・職員および自営・自由業の多くは「裁判に参加することで仕事に
支障を生じる」と回答する傾向が見られる。

 現在、だいたい裁判への参加日数は3日間ぐらいといわれているが、3日も仕事を
空けることは自営業の人などは大変だろう。そして、もし被告人が公判廷で「実は私
は無罪です」と言い出したら、どうなるだろうか。3日では済まなくなる。職業上の
裁判官はきちんと聞く日数を持ち得るが、裁判員の多くは「今日で終わると思ってい
たのに、1日でも延びたら大変だ」となるのではないか。裁判は、公判前整理手続き
にのっとって、短期間に処理するものになってしまわないか。なぜそのような事件が
起きたか、十分検討する前にあっという間の有罪判決になりかねない。

 一般の人にしてみれば、準備不足でよく分からず、制度も整っていないのに、死刑
も含めて全部責任を負えと言われるようなものではないか。裁判員制度をとにかく拙
速に始めることには反対である。


【共同通信社会員情報誌「Kyodo Weekly」07月07日号より】

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ねじれの成果

 今、後期高齢者医療制度廃止法案を社民、民主、共産、国民新の4野党で提出した
後なので、忙しい。

 後期高齢者医療制度は4月から施行されたものの、国民から怒りの声が上がってい
る。75歳以上の約1300万人を対象に、ほかの医療制度から切り離し、保険料も年
金から天引き徴収される。社民党で怒りのホットラインを開設したところ、多くの電
話がかかってきた。ある人は「終わりが近いと政府に言われる筋合いはない」と。ま
さにその通り。

 後期高齢者医療制度廃止法案の発議者は、4野党計9人となっている。私もそのひ
とりで、発議者が集まっては議論を続けている。法案の提出理由を考えたり、自民、
公明の与党側からの質問をみんなで想定したりしている。先日は、4党の発議者たち
が与党側への事前説明にそれぞれ呼ばれた。

 国会で政府に質問し、追及することは慣れているけれど、答弁席に立つことは私自
身あまりなかった。民法改正案やドメスティックバイオレンス(DV)防止法案な
ど、いくつかの法案で答弁に立っただけだ。
 与党からどんな質問が飛び出すか、4野党で額を寄せ、知恵を絞っている。こんな
形で答弁に立つのもまあまあ珍しい。いつも「追求型」で、答弁をするのは慣れてい
ないから、結構、みんな緊張し、ワイワイガヤガヤやっている。参院は野党の方が多
数を占め、与野党が逆転しているので、後期高齢者医療制度廃止法案は可決された
後、衆院へ送付される。世論を盛り上げ、頑張っていきたい。

 後期高齢者医療制度を含んだ医療制度改悪法案が2006年6月、私の目の前で
“強行採決”された時は、本当に悔しかった。当時、委員会でガンガン議論していた
けれど、強行採決のオンパレードの時だったので、メディアにもそんなに取り上げら
れなかったっけ。

 その時のことを考えると隔世の感がある。去年、参院が与野党逆転となり、まさに
国会は変わった。逆転がなければ、廃止法案が提出され、可決されるという事態もな
かっただろう。

 道路特定財源のひどい使い方がこんなに明らかになったのも与野党が逆転した成果
である。いろんなことがボロボロ出てきている。3時間のシンポジウムをやるのに
6000万円を使ったり、佐世保市の米軍住宅を8棟建てるのに28億円を道路特定財源
から使っていたり。ほかにも国道事務所で意味不明の税金の使い方も明らかになっ
た。本当にあきれる。

 かつては道路利権に手を突っ込むなんて命が危ないなんて言われることがあったの
だ。与野党が参院で逆転して初めて資料が国会に提出され、新たな法律も成立するよ
うになった。参院では捜査における可視化法案も上程されている。「ねじれ国会」と
言われているけれど、数の論理だけで強行採決をし続け「そこのけ、そこのけ、自民
党が通る」と踏みつけてきたことに比べれば、ずっーといい。

 福田康夫首相は、徳川幕府の15代将軍、慶喜みたいだ。問題にうすうす気付きなが
ら「体制」の側にいて、自らメスを入れ、変えることはできない。もうすぐ新しい
「物語」が始まる。そんな予感がしている。

【共同通信社会員情報誌「Kyodo Weekly」06月09日号より】
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