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福島みずほのどきどき日記

相模鉄道退職者会で講演

 3月18日(月)
 相模鉄道労働組合退職者会で講演しました。
相模鉄道労働組合で講演

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愚直に、そして果敢に

 新防衛大綱に、武器輸出禁止三原則の見直しは明記されなかった。しかし、武器の
国際共同開発については「検討する」となっており、これからもまったく油断を許さ
ない。内部告発サイト「ウィキリークス」が暴露した米国の外交公電によると、米国
は日米共同開発中の海上配備型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)の対ヨーロッパ
輸出を可能とするため、日本に武器輸出三原則の見直しを求めている。

 わたし自身が、武器輸出三原則を特にリアルに考えるようになったのは、クラス
ター(集束)爆弾の禁止に多くの非政府組織(NGO)の人たちと取り組むように
なってからである。投下後、1発の爆弾から多数の「子爆弾」が空中で分散するクラ
スター爆弾は不発率が高いとされ、紛争や戦争が終わっても、この子爆弾に触れた子
どもや市民を殺傷している。

 セルビア人のカペタノビッチさんは、このクラスター爆弾の処理技術者だった。爆
弾が爆発し、手足を失ったカペタノビッチさんが来日した際、わたしが教えていた大
学の授業で話をしてもらった。そして、みんなの努力でクラスター爆弾禁止条約がで
き、日本も批准をした。

 日本の自衛隊が保有しているクラスター爆弾の77%は国産だ。わたしは、その数字
を知って、本当にショックを受けた。こんなに造っているのかと。日本は、専守防衛
だから、自衛隊はそのクラスター爆弾を外国で使わなかった。しかし、もし日本に武
器輸出禁止三原則がなかったら、日本製の武器が世界に分散して、子どもたちを殺傷
してしまうだろう。

 クラスター爆弾を造っているのは、米国、フランスをはじめ世界の超大国である。
一方、爆弾で傷ついているのは、アフリカや中東など紛争や戦争があった国々の子ど
もたちや市民である。武器を造って売っている国の人々は傷つかず、造らず、もうけ
もしない国の人々が殺され、傷ついている。この非対称性にもショックを受ける。

 わたしたちは日本製の武器が世界中の子どもたちを殺すことを望むのかということ
が問われている。武器の共同開発をしなければ、乗り遅れるといわれることがある
が、そうだろうか。共同開発とは“奉加帳”にすぎず、各国からお金を集め、米国が
実際上はその利益を占めるという新聞報道があった。武器を輸出し、依存する経済を
いったんつくると、紛争や戦争を支え、継続させることになる。

 共同開発の後、第三国に輸出されることをどうやって制限していくのか。その後、
転売されることをどう食い止めるのか。武器は世界に流れていき、使われる。

 「自民党政治がやれなかったことをやるんだ」と民主党政権が大きく踏み出してい
くことを、いいことはいいが、問題があるものはダメとしっかり主張し、頑張ってい
くのが社民党である。その意味で、まさに社民党の出番だと思っている。

 わたしは、参院予算委員会のメンバーだが、失言とそれに対する批判が延々と続く
場に居ると、こんな議論を国民はちっとも望んでいないとつくづく思う。2011年
―。税制、景気回復、雇用・医療・介護の立て直し、子育て支援、男女平等、環境な
ど、国民の声をしっかりと受け止め、愚直に、そして果敢に頑張りたい。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」1月3日号より)

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政治の迷走に危機感(10年11月22日号バックナンバー)

■政治の迷走に危機感
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」11月22日号より)

 実はわたしは「映画オタク」なのだ。議員になる前から、ある映画賞の審査員
をしており、審査会で趣味と実益を兼ねて映画を見ている。旅行にはなかなか自
由に行けなくても、映画では一時間半でどこへでも〝トリップ(旅行)〟ができ
る。

 堺雅人さん主演の「ゴールデンスランバー」を見た。首相暗殺犯に仕立て上げ
られた人間の逃走劇を描いている。テレビに犯人として映し出されると、本当に
その通りに人々は信じていく。でっち上げていく捜査機関の恐ろしさ…。

 映画を見ながら、厚生労働省の公文書偽造をめぐり無罪が確定した村木厚子さ
んの事件やさまざまな冤罪を思い出していた。かつて元大阪高検公安部長だった
三井環検察官は、検察庁の裏金問題を内部告発しようとした矢先に、別件で逮捕
されたっけ。ストーリーが作られてしまうと、その個人に動機があったかどうか
などとは関係なく、犯人に仕立て上げられ、手続きが進んでいく。

 村木さんは一貫して否認し、かつ家族などの支援に励まされ、弁護団が優秀で、
そして何より捜査があまりにもずさんであったので、無罪を勝ち取った。しかし、
ほとんどの人は、捜査の可視化がない中では、強要による〝自白〟をしてしまう。

 運悪く、そんな中に一個人が落ち込んだら、なかなか自力では克服できない。
おまけに村木さんの件では、検察官が証拠を捏造していたかどうかまで問われて
いる。映画なんかより、日本の現実の方がずっと怖く、構造的に不正義がまかり
通っているのではないか。

 信じ難いと言えば、尖閣諸島周辺で起きた中国漁船衝突事件をめぐるビデオの
流出問題もそうである。「こんなことが起こるのか。政府のガバナンス(統治)
は一体どうなっているのか」と、まず思った。海上保安庁で働く人たちが誇りを
持ち命を懸けて、大変な苦労の中で働いていることはよく分かっている。社民党
は2010年度補正予算案で、海上保安庁の体制整備の支援をしっかり盛り込ま
せた。

 しかし、組織の判断とは別に、一人の公務員が個人の判断で、刑事上の証拠で
もあり、また、外交上も微妙な問題に発展しかねない内容を流出させることは、
組織としてまったくガバナンスが取れていないと言わざるを得ない。海上保安庁
や政府には責任がある。警視庁が持っていた国際テロ捜査に関する情報の流出に
も心底驚いた。

 「えっ、こんなことが起きるのか」という事が立て続けに起こる政治に大きな
危機感を持っている。尖閣諸島の問題で言えば、衝突のあった9月7日、国土交
通相は海上保安庁に対して「毅然としてしっかり対応してください」と言ってい
る。問題は、その後である。

 公務執行妨害罪として刑事司法にのっとって手続きを進めることと、もう一つ、
政治、外交上、どのように判断し、どのような方針に基づいて、どう解決をして
いくかということが極めて重要である。政治上の方針や決意が見えず、十分な説
明もされないことが、さまざまな「迷走」を生んでいる。

 時代がどう転がっていくか、大変危うい。だからこそ、政治は揺るぐことなく、
政権は見識を明確に示さなければならない。
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捜査の可視化と証拠開示を(10年10月18日号バックナンバー)

■捜査の可視化と証拠開示を
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」10月18日号より)

 大阪地検特捜部元検事の前田恒彦被告が日付を書き換えていたという事件には、
本当にびっくりした。現在、上司の2人も逮捕、拘置され、関与の有無が焦点と
なっている。

 自白の強要といったレベルではなく、自分のストーリーに合わせ証拠を捏造
(ねつぞう)するということであれば、極端に言えば、誰だって被疑者、被告人
にできることになってしまう。

 わたしは、参院厚生労働委員会に属しているので、被害者の元厚生労働省雇用
均等・児童家庭局長の村木厚子さんを知っている。先日、久しぶりに会ったら、
元気な様子だったが、「体重が6キロやせた」と言う。彼女は、自白をせず、無
罪を一貫して主張し、認められた。これは彼女や弁護団の信念や努力に負うとこ
ろが大きかったからだと、わたしはつくづく思う。

 事件については、現在、最高検の捜査が続いているが、これだけでは駄目であ
る。検察の、検察による、検察のための捜査や調査になりかねない。柳田稔法相
は、自分の下に第三者機関を設け、民間人も入れて、今回の問題にとどまらず、
検察の在り方全体にメスを入れるべきである。最高検も含めた全体を「検証」し
なければならない。

 かつて名古屋刑務所で受刑者暴行事件が起きたとき、わたしは当時の森山真弓
法相に迫ったことがある。「法相の首をかけて、問題にメスを入れ、刑務所改革
を実現してください」と。法相の下に、行刑改革会議が設置され、その結果、監
獄法が約100年ぶりに改正された。

 今回の検察庁の問題の発覚を契機として、第三者による検討会議を設け、メス
を入れ、報告書を作成し、必ず制度改革もすべきである。法相にこのことを要請
した。現在、柳田法相は民間人も入れた第三者による会議を設置すると約束をし
ている。わたしはしぶとくこの問題をフォローして、「検証」と「改革」を実現
していきたい。

 今まで、多くの冤罪(えんざい)被害者たちと会ってきた。免田事件の免田栄
さんをはじめ、「死刑台からの生還」を果たした方たちの話を聴いてきた。

 富山県の氷見事件の冤罪被害者にも会った。彼は強姦(ごうかん)罪で逮捕、
拘置され、実刑判決を受け、刑務所で何年も服役をして出所した。真犯人が現れ
たので、無罪が明らかになった。裁判の負担と刑務所での服役、出所後の困難な
ど、本人は大変な苦労をされてきた。真犯人が出てこなかったら、彼は一生、汚
名を着せられたままだった。

 さまざまな冤罪事件が明らかになっても、まだ制度が改革されていない。英国
では、映画「父の祈りを」で描かれた冤罪事件が明らかになった後、捜査の可視
化などが実現した。

 国会の中で、捜査の可視化や証拠開示の問題に取り組んできた。政権が代わっ
ても、内閣の方からこの件に関する法案が提出されないのは本当に残念である。
法務省などに対して迫っていくが、議員立法という形でも提出し、実現したいと
思っている。

 わたしも狭山事件の再審請求事件にかかわっているが、ようやく一部証拠が開
示された。制度改革によって、「不条理」な捜査をなくすべきである。多くの人
たちと力を合わせて、捜査の可視化と証拠開示を実現したい。
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政策と権力(10年9月6日号バックナンバー)

■政策と権力
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」9月6日号より)

 12年前、社民党党首だった土井たか子さんに、参院議員の候補にならないか
と誘われた。「わたしは気が弱いので、政治家には向きません」と答えると、土
井さんは黙っていたが、「そんなことはないだろう」と思っておられたのかもし
れない。

 そして、次にわたしが「一日、一日楽しく、気持ち良く生きていきたいと思っ
てきました。しかし、政治家になったら、一日、一日楽しく、気持ち良く生きて
いくということができなくなるような気がするんです」と言うと、土井さんはし
ばらく黙っていた後に、こう言った。「毎日、毎日楽しくというわけにはいかな
いけれど、やりがいを感じるときはあります」。

 こうしたやりとりがあって、わたしは立候補を決意し、参院議員になった。時
々、土井さんの言葉を思い出す。毎日がハッピーという状態にはなかなかならな
いが、確かにやりがいを感じるときはある。

 わたしは当時、「市民の政策直行便」を掲げていた。民法改正をはじめとして、
市民立法を、政策実現をしたいとの思いがあった。ドメスティックバイオレンス
(DV)防止法策定など、超党派でも活動してきたが、立法、政策実現は政治の
大きな仕事であり、やりがいがあって実に面白い。

 しかし、同時に、政治は権力闘争であるということも痛感している。民主党代
表選は、権力闘争の一種でもある。会社にも、大学にも、団体にも権力闘争はあ
る。権力闘争を見たことがないという職業人は少ないのではないだろうか。

 政治における権力闘争は「ホンモノ」の権力闘争である。わたしは、幹事長、
党首、大臣を経験をしてきた。権力は間違いなく「地位」(ポジション)に付い
ている。どんなに優秀で、素晴らしい人でも、ポジションがなければ、なかなか
権能を振るえない。大臣当時、正直、党首の方が大臣より10倍大変だと思った。

 それは、官僚組織と政党の違いである。官僚組織の中でトップの権限は大きく、
指示を出せば、頭脳として、あるいは手足として的確に動いていく。政策の変更
も、新たな政策を実現することも可能である。

 政治家は権力を取って政策を実現するために闘うのだろう。

 しかし、と思う。闘争のための闘争になっていたり、とにかく自分が権力を握
ればいいのだとなっていたりするのではないか。それでは政治が人々から遠く離
れてしまう。権力を取ることにこだわっていると、与党でなければ政治ができな
いなんて勘違いをもしかねない。

 確かに、与党の方が政策を実現できるが、野党としての大事さもある。社民党
にしても野党としての方が、脱原子力発電のテーマなどをばりばりやっていきや
すいという面がある。与党であれ、野党であれ、その場所で政策実現のため努力
すべきだし、そうできると思う。

 国民不在の権力闘争では、本当に誰のための政治なのか分からなくなってしま
う。

 日本弁護士連合会の宇都宮健児会長が、大逆事件などを担当した有名な布施辰
治弁護士の言葉を集会で引用した。「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば
民衆のために」。政治もそうであるべきだし、わたしも心してそう生きたい。
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たくさんの涙に応えたい(10年8月2日号バックナンバー)

■たくさんの涙に応えたい
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」8月2日号より)

 先の参院選では、新しい経験をした。街頭で多くの若い人の涙を見たのである。

 千葉県で街頭演説をしていたら、最後に若い女性に声を掛けられた。「学校を
卒業しても仕事に就けなくて。『自己責任』と言われてつらいんです」と、大粒
の涙を流した。

 横浜駅では、20代と思われる女性が「私、独りぼっちなんです。お父さんが
死んで、家族がバラバラ。仕事も首になってしまった」と話をすると、泣きだし
てしまった。

 「日本の母子家庭の貧困率は54・3%。こんな状況で、消費税を上げたらど
うなるか」。こう演説した高円寺駅では、またまた、若い女性が「私、母子家庭
なんです」と言うと、涙を止めどもなく流した。若いママさんではないか。生活
のことを考えながら生きているのだと考えさせられた。

 愛知県豊橋市では、派遣切りに遭った男性と会った。新宿駅では「何回となく
ハローワークに通っても仕事がない。もうじき、雇用保険が切れてしまう」と切
羽詰まった様子で男性が語った。年配の女性にも声を掛けられた。「息子が2人
いるけれども、2人とも正社員ではないんです。だから毎月の給料が乱高下して
不安定。アパートの家賃を払えないから、家を出て独立できない。若者の雇用問
題を何とかしてください」と。

 さらには大阪から東京に戻ってきたという50代の男性は「親の介護のために、
仕事を辞めて帰ってきた。でも、もう限界で施設に預けたくても預かってくれる
所がまだ見つからないんです」と語った。

 赤ん坊を抱っこした女性。「福島さん。障がいのある子どもでもこの社会で元
気に生きていけますか」。話し終わった後、彼女は赤ん坊を見せてくれた。鼻に
は医療用のチューブが通っている。私は政府の障がい者制度改革推進会議で取り
組んできたこと、これからの取り組みについて必至で話をした。

 たくさんの涙。政治は本当に一人一人にまだまだ、まだまだ、届いていない。
どれだけ多くの人が、さまざまな困難を抱えて生きていることか。

 私は、長年の政治、とりわけ小泉構造改革が雇用や社会保障を壊してきたと思っ
ている。雇用の劣化は続いている。人々はそんな政治を転換することこそを求め
ているのに、転換がなかなかできない。むしろ公務員の首を切れと主張するみん
なの党や自民党が躍進をした。民主党内の軸も大きく変わりつつある。

 小泉政権下で「切れ、切れ」とやって、地方の自治体病院では閉鎖するところ
が増えた。新自由主義、弱肉強食の政策が雇用の劣化を生み、医療をはじめとし
た福祉の切り捨てが進行してしまった。格差を是正、貧困を解決、生活を再建し
社会を立て直すことが、個人も社会も元気になるウィンウィン(互恵)の関係を
もたらすはずなのに、これ以上、生活を不安定にして一体どうしようというのか。

 労働者派遣法の改正や有期雇用やパート労働者の権利保護、正社員も含めた長
時間労働の規制こそ急務である。

 街頭での多くの人たちの涙に応えられる政治をやっていくこと。今回参院選で
3度目の当選を果たした私のこれからの6年間の課題である。
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米国に「県内はノー」を(10年5月24日バックナンバー)

■米国に「県内はノー」を
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」5月24日号より)

 今、大臣として消費者、男女共同参画、少子化、自殺対策、障がい者施策のほ
か、若者育成や薬物、犯罪被害者などの対策に取り組んでいる。それぞれ成果を
出すべく多くの人と力を合わせている最中である。

 そして、米軍普天間飛行場の移設問題である。普天間飛行場の返還と沖縄の負
担軽減については、多くの人が賛同してくれると思う。そのためにどうするか。
今、全力を挙げて実現すべき時である。

 沖縄の海兵隊は果たして抑止力なのか。米国は海兵隊を米領グアムに移転する
こととしており、その数は日米合意で約8000人とされている。沖縄県庁は米
軍への聴取から実数約1万2400人としている。約8000人を差し引くと約
4000人しか残らない。また、アフガニスタンやイラクに、海兵隊の多くは派
遣され、その間は「不在」が目立った。

 テレビ番組で森本敏拓殖大大学院教授と論争した時に、彼は「沖縄に海兵隊が
いる必要はない」と発言した。その通りである。そもそも佐世保から艦船が沖縄
に来て、海兵隊が乗船してから国外へ出掛けることになる。沖縄からパッと出掛
けるというわけではないのである。

 万が一、朝鮮半島が有事になった際に必要だなどと言われることがある。しか
し、海兵隊は当たり前だが、自国民である米国民の救援をするのである。このこ
とは、自民党議員が「米国人の救出をするのが当然である」「余席があれば、日
本人も救出をする」と言っている。

 「抑止力とは何か」「沖縄に海兵隊は存在しなければいけないのか」「グアム
をもっと統合的な基地にしようとする米国の戦略はどういうものなのか」…。わ
たしたちは議論をもっともっとすべきである。

 社民党は、政府団として、そして与党として、グアム、北マリアナ諸島のテニ
アンの視察を行った。最近、北マリアナ諸島議会は上院、下院共にテニアンが最
適地であり、自分たちは歓迎をするとの決議を行った。民主党の川内博史衆院議
員はじめ6議員もグアム、テニアンを訪問し、知事などの親書を託されてきてい
る。

 自民党政権時代、沖縄・辺野古の沿岸部に海上基地を造ると決めたものの、く
い一本打てなかった。沖縄の人たちの強い反対があったからである。今ももちろ
ん沖縄の民意は「県内はノー」の立場である。

 自民党時代の資料を見ると、埋め立て方式では約9年半、くい打ち桟橋方式で
も約7年かかると試算している。これから10年後には東アジア情勢も大きく変
化しているだろう。そして、外交も含めた対外的な交渉力こそ大きく発揮されな
ければならないだろう。経済的にもっともっと密接になっているはずである。

 埋め立て方式であれ、くい打ち桟橋方式であれ、サンゴや藻場への影響は甚大
である。いったん壊したサンゴは元へは戻らない。米国に対して「沖縄の人の同
意は取れず、県内は無理です」とはっきり言うべきである。米国も民意を無視す
ることはできないからである。

 普天間問題は、民主主義の問題であり、みんなの問題である。沖縄に犠牲と負
担を強いることは反対である。わたしたちは、力を合わせ、これまでと違う政治、
未来をつくるべきだ。
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障がい者差別禁止法を(10年4月26日バックナンバー)

■障がい者差別禁止法を
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」4月26日号より)

 社会を変えようと、いま、必死でやっているものの一つに障がい者施策がある。

 昨年12月に首相を本部長、わたしと官房長官を副本部長に「障がい者制度改革
推進本部」ができ、精力的に議論を重ねている。「障害者」ではなく「障がい者」
としているところも変わった点である。

 障がい者の人たちの運動はずっとあったけれど、社会の現状は、障がい者にとっ
てまだまだ住みにくいといっていい。わたしの父は1年前に亡くなったが、晩年
は骨折をして、車いす、そして寝たきりになってしまった。高齢者の問題と障が
い者の問題は共通している点があるとつくづく思う。

 社会を変えようという熱い思いで、「障がい者制度改革推進会議」が開催され、
討議されているが、この会議自体、初めてということがたくさんある。

 24人のメンバーのうち14人が障がい者か、その家族である。障がいの当事者が
多いので、問題点が深く、切実に掘り下げられる気がする。みんな、何とか改善
をしたい、改革をしたいと思っているのだ。

 聴覚障がいがある人、視覚障がいがある人、知的障がいがある人、車いすの人、
精神障がいの人などが参加している。難しい表現が出てきたときには、知的障が
いの人が「イエローカード」を提示するというルールがある。「表現が分かりま
せん」と指摘してもらうのだ。

 手話通訳の人や介助者も同席する。聴覚と視覚の両方に障がいを持つメンバー
の隣では、指点字通訳者の人が座り、情報を伝えている。要約筆記の人が発言を
短くまとめ、それがスクリーンに映し出される。

 インターネットを見てほしい。会議の全容が手話と字幕付きで見ることができ
る。これも初めてのことである。全国で障がいのある人たちが注視しており、傍
聴ができなくても会議の議論の様子が分かるようにしたのである。

 推進会議の司会者も障がいを持つ人で、担当室長は車いすの弁護士である。

 会議の進め方も丁寧だ。「何とかさん、大丈夫ですか」と言って、休みを取り
ながら会議が4時間続く。こんな感じで進む政府の会議は初めてだと思われる。

 推進会議では・サービス利用者の1割負担に障がい者の人が悲鳴を上げた障害
者自立支援法を廃止し、替わりに総合福祉法を作る・障がい者差別禁止法を作る
・障害者基本法の改正を行う―ことを目指している。

 差別禁止法ができたら、随分と社会は変わるだろう。障害者権利条約を批准す
る予定である。教育、雇用、移動の自由、政治参加など多くの点で前進できるよ
うにみんなで力を合わせていきたい。

 わたしはたまたま弁護士として、障がいのある子どもの両親の離婚事件を立て
続けに3件担当したことがある。そうした経験を通じて、まだまだこの社会はい
ろんな苦労を親に押し付けていると思った。

 推進会議では、これから多くの役所とのバトルと対話が始まる。大変だがやら
なければならいことだ。障がい者施策が大いに進んで、本当は「障がい」という
言葉そのものさえなくなる社会を夢見ている。これから力を合わせて大きな前進
を勝ち取りたい。
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いのちのゲートキーパーに(10年3月15日号バックナンバー)

■いのちのゲートキーパーに
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」3月15日号より)

 私は以前から超党派の議員連盟で自殺対策の活動をしており、自殺対策担当大
臣となった今、少しでも自殺者を減らすべく全力を挙げています。自殺者は年間
約3万人。10年間で30万人の方が亡くなっています。一人一人の人生とその
人の家族のことを思うと、本当に心が痛みます。

 昨年11月、自殺対策を担当する内閣府の政務三役と内閣府本府参与で構成す
る「自殺対策緊急戦略チーム」は「自殺対策100日プラン」を作りました。年
末年始にはハローワークで、心の健康相談や法律相談など「生きるための総合支
援」を行いました。

 東京のハローワークに視察に行きましたが、多重債務の相談をしていた人が
「時効になっていますよ」と言われ、短期間で解決。ホッとして帰っていきまし
た。法律相談などで救われることはたくさんあります。

 今年2月5日には、自殺総合対策会議で、「100日プラン」をベースに「い
のちを守る自殺対策緊急プラン」を決定しました。まず、一年中で一番自殺をす
る人が多い3月を自殺対策強化月間にしました。

 自殺対策緊急プランとして、ハローワークにおける心の健康相談、中小企業経
営者向け相談、連帯保証制度の在り方の検討、鉄道駅ホームや高層建築物からの
転落防止対策などを盛り込み、内閣を挙げて、対策を講じています。

 3月1日は新橋駅で自殺対策「お父さん眠れてる?」キャンペーンを展開しま
した。キャンペーンのポスターやチラシに「気づき」「共感」「つなぎ」という
言葉があります。内閣だけではなく、ぜひ自治体や企業と一緒になって自殺対策
に取り組んでいきたい。

 自死遺族の人たちと話をしていると、「まさか、と思った」と、言われること
があります。まさに本心だと思います。多くの人が自殺のことを自分にも起こり
得る大事な問題だと考えてもらいたい。

 失業保険が切れる前に自殺をしてしまった人もいる。その人を担当していた公
務員が「失業保険が切れても『こんなことができますよ』と言っておけばよかっ
た」と話をしているのを聞いたことがある。「これからみんなで話をしていきま
す」と聞いて心強く思いました。

 悩みを持つ人々と手紙のやりとりをしているお坊さんたちがいます。手紙を書
くことで悩みを相対化できるし、また、自分と向き合ってくれる人がいることを
確信することで「自分は一人ではない」と感ずることができます。

 手紙で、悩み相談に乗ることは骨の折れることです。そのことをやり続けてい
るお坊さんたちには、心底頭が下がります。ソーシャルワーカーの人たちと話を
すると、多くの人が、自殺の問題にかかわっていたり、関心を持っていたりして
いることが分かります。

 看護師さんから「自殺をして傷付いた人が病院に運び込まれて来る」といった
話や、薬剤師さんが「大丈夫ですか」と尋ねることで救われるケースもあると聞
きます。

 多くの人に「いのちを守るゲートキーパー」になっていただけるよう、働き掛
けていきます。雇用や社会保障の立て直しについても最低限やらなければなりま
せん。


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政治の迷走に危機感

 実はわたしは「映画オタク」なのだ。議員になる前から、ある映画賞の審査員
をしており、審査会で趣味と実益を兼ねて映画を見ている。旅行にはなかなか自
由に行けなくても、映画では一時間半でどこへでも〝トリップ(旅行)〟ができ
る。

 堺雅人さん主演の「ゴールデンスランバー」を見た。首相暗殺犯に仕立て上げ
られた人間の逃走劇を描いている。テレビに犯人として映し出されると、本当に
その通りに人々は信じていく。でっち上げていく捜査機関の恐ろしさ…。

 映画を見ながら、厚生労働省の公文書偽造をめぐり無罪が確定した村木厚子さ
んの事件やさまざまな冤罪を思い出していた。かつて元大阪高検公安部長だった
三井環検察官は、検察庁の裏金問題を内部告発しようとした矢先に、別件で逮捕
されたっけ。ストーリーが作られてしまうと、その個人に動機があったかどうか
などとは関係なく、犯人に仕立て上げられ、手続きが進んでいく。

 村木さんは一貫して否認し、かつ家族などの支援に励まされ、弁護団が優秀で、
そして何より捜査があまりにもずさんであったので、無罪を勝ち取った。しかし、
ほとんどの人は、捜査の可視化がない中では、強要による〝自白〟をしてしまう。

 運悪く、そんな中に一個人が落ち込んだら、なかなか自力では克服できない。
おまけに村木さんの件では、検察官が証拠を捏造していたかどうかまで問われて
いる。映画なんかより、日本の現実の方がずっと怖く、構造的に不正義がまかり
通っているのではないか。

 信じ難いと言えば、尖閣諸島周辺で起きた中国漁船衝突事件をめぐるビデオの
流出問題もそうである。「こんなことが起こるのか。政府のガバナンス(統治)
は一体どうなっているのか」と、まず思った。海上保安庁で働く人たちが誇りを
持ち命を懸けて、大変な苦労の中で働いていることはよく分かっている。社民党
は2010年度補正予算案で、海上保安庁の体制整備の支援をしっかり盛り込ま
せた。

 しかし、組織の判断とは別に、一人の公務員が個人の判断で、刑事上の証拠で
もあり、また、外交上も微妙な問題に発展しかねない内容を流出させることは、
組織としてまったくガバナンスが取れていないと言わざるを得ない。海上保安庁
や政府には責任がある。警視庁が持っていた国際テロ捜査に関する情報の流出に
も心底驚いた。

 「えっ、こんなことが起きるのか」という事が立て続けに起こる政治に大きな
危機感を持っている。尖閣諸島の問題で言えば、衝突のあった9月7日、国土交
通相は海上保安庁に対して「毅然としてしっかり対応してください」と言ってい
る。問題は、その後である。

 公務執行妨害罪として刑事司法にのっとって手続きを進めることと、もう一つ、
政治、外交上、どのように判断し、どのような方針に基づいて、どう解決をして
いくかということが極めて重要である。政治上の方針や決意が見えず、十分な説
明もされないことが、さまざまな「迷走」を生んでいる。

 時代がどう転がっていくか、大変危うい。だからこそ、政治は揺るぐことなく、
政権は見識を明確に示さなければならない。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」11月22日号より)
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捜査の可視化と証拠開示を

 大阪地検特捜部元検事の前田恒彦被告が日付を書き換えていたという事件には、
本当にびっくりした。現在、上司の2人も逮捕、拘置され、関与の有無が焦点と
なっている。

 自白の強要といったレベルではなく、自分のストーリーに合わせ証拠を捏造
(ねつぞう)するということであれば、極端に言えば、誰だって被疑者、被告人
にできることになってしまう。

 わたしは、参院厚生労働委員会に属しているので、被害者の元厚生労働省雇用
均等・児童家庭局長の村木厚子さんを知っている。先日、久しぶりに会ったら、
元気な様子だったが、「体重が6キロやせた」と言う。彼女は、自白をせず、無
罪を一貫して主張し、認められた。これは彼女や弁護団の信念や努力に負うとこ
ろが大きかったからだと、わたしはつくづく思う。

 事件については、現在、最高検の捜査が続いているが、これだけでは駄目であ
る。検察の、検察による、検察のための捜査や調査になりかねない。柳田稔法相
は、自分の下に第三者機関を設け、民間人も入れて、今回の問題にとどまらず、
検察の在り方全体にメスを入れるべきである。最高検も含めた全体を「検証」し
なければならない。

 かつて名古屋刑務所で受刑者暴行事件が起きたとき、わたしは当時の森山真弓
法相に迫ったことがある。「法相の首をかけて、問題にメスを入れ、刑務所改革
を実現してください」と。法相の下に、行刑改革会議が設置され、その結果、監
獄法が約100年ぶりに改正された。

 今回の検察庁の問題の発覚を契機として、第三者による検討会議を設け、メス
を入れ、報告書を作成し、必ず制度改革もすべきである。法相にこのことを要請
した。現在、柳田法相は民間人も入れた第三者による会議を設置すると約束をし
ている。わたしはしぶとくこの問題をフォローして、「検証」と「改革」を実現
していきたい。

 今まで、多くの冤罪(えんざい)被害者たちと会ってきた。免田事件の免田栄
さんをはじめ、「死刑台からの生還」を果たした方たちの話を聴いてきた。

 富山県の氷見事件の冤罪被害者にも会った。彼は強姦(ごうかん)罪で逮捕、
拘置され、実刑判決を受け、刑務所で何年も服役をして出所した。真犯人が現れ
たので、無罪が明らかになった。裁判の負担と刑務所での服役、出所後の困難な
ど、本人は大変な苦労をされてきた。真犯人が出てこなかったら、彼は一生、汚
名を着せられたままだった。

 さまざまな冤罪事件が明らかになっても、まだ制度が改革されていない。英国
では、映画「父の祈りを」で描かれた冤罪事件が明らかになった後、捜査の可視
化などが実現した。

 国会の中で、捜査の可視化や証拠開示の問題に取り組んできた。政権が代わっ
ても、内閣の方からこの件に関する法案が提出されないのは本当に残念である。
法務省などに対して迫っていくが、議員立法という形でも提出し、実現したいと
思っている。

 わたしも狭山事件の再審請求事件にかかわっているが、ようやく一部証拠が開
示された。制度改革によって、「不条理」な捜査をなくすべきである。多くの人
たちと力を合わせて、捜査の可視化と証拠開示を実現したい。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」10月18日号より)
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政策と権力

 12年前、社民党党首だった土井たか子さんに、参院議員の候補にならないか
と誘われた。「わたしは気が弱いので、政治家には向きません」と答えると、土
井さんは黙っていたが、「そんなことはないだろう」と思っておられたのかもし
れない。

 そして、次にわたしが「一日、一日楽しく、気持ち良く生きていきたいと思っ
てきました。しかし、政治家になったら、一日、一日楽しく、気持ち良く生きて
いくということができなくなるような気がするんです」と言うと、土井さんはし
ばらく黙っていた後に、こう言った。「毎日、毎日楽しくというわけにはいかな
いけれど、やりがいを感じるときはあります」。

 こうしたやりとりがあって、わたしは立候補を決意し、参院議員になった。時
々、土井さんの言葉を思い出す。毎日がハッピーという状態にはなかなかならな
いが、確かにやりがいを感じるときはある。

 わたしは当時、「市民の政策直行便」を掲げていた。民法改正をはじめとして、
市民立法を、政策実現をしたいとの思いがあった。ドメスティックバイオレンス
(DV)防止法策定など、超党派でも活動してきたが、立法、政策実現は政治の
大きな仕事であり、やりがいがあって実に面白い。

 しかし、同時に、政治は権力闘争であるということも痛感している。民主党代
表選は、権力闘争の一種でもある。会社にも、大学にも、団体にも権力闘争はあ
る。権力闘争を見たことがないという職業人は少ないのではないだろうか。

 政治における権力闘争は「ホンモノ」の権力闘争である。わたしは、幹事長、
党首、大臣を経験をしてきた。権力は間違いなく「地位」(ポジション)に付い
ている。どんなに優秀で、素晴らしい人でも、ポジションがなければ、なかなか
権能を振るえない。大臣当時、正直、党首の方が大臣より10倍大変だと思った。

 それは、官僚組織と政党の違いである。官僚組織の中でトップの権限は大きく、
指示を出せば、頭脳として、あるいは手足として的確に動いていく。政策の変更
も、新たな政策を実現することも可能である。

 政治家は権力を取って政策を実現するために闘うのだろう。

 しかし、と思う。闘争のための闘争になっていたり、とにかく自分が権力を握
ればいいのだとなっていたりするのではないか。それでは政治が人々から遠く離
れてしまう。権力を取ることにこだわっていると、与党でなければ政治ができな
いなんて勘違いをもしかねない。

 確かに、与党の方が政策を実現できるが、野党としての大事さもある。社民党
にしても野党としての方が、脱原子力発電のテーマなどをばりばりやっていきや
すいという面がある。与党であれ、野党であれ、その場所で政策実現のため努力
すべきだし、そうできると思う。

 国民不在の権力闘争では、本当に誰のための政治なのか分からなくなってしま
う。

 日本弁護士連合会の宇都宮健児会長が、大逆事件などを担当した有名な布施辰
治弁護士の言葉を集会で引用した。「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば
民衆のために」。政治もそうであるべきだし、わたしも心してそう生きたい。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」9月6日号より)

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たくさんの涙に応えたい

 先の参院選では、新しい経験をした。街頭で多くの若い人の涙を見たのである。

 千葉県で街頭演説をしていたら、最後に若い女性に声を掛けられた。「学校を
卒業しても仕事に就けなくて。『自己責任』と言われてつらいんです」と、大粒
の涙を流した。

 横浜駅では、20代と思われる女性が「私、独りぼっちなんです。お父さんが
死んで、家族がバラバラ。仕事も首になってしまった」と話をすると、泣きだし
てしまった。

 「日本の母子家庭の貧困率は54・3%。こんな状況で、消費税を上げたらど
うなるか」。こう演説した高円寺駅では、またまた、若い女性が「私、母子家庭
なんです」と言うと、涙を止めどもなく流した。若いママさんではないか。生活
のことを考えながら生きているのだと考えさせられた。

 愛知県豊橋市では、派遣切りに遭った男性と会った。新宿駅では「何回となく
ハローワークに通っても仕事がない。もうじき、雇用保険が切れてしまう」と切
羽詰まった様子で男性が語った。年配の女性にも声を掛けられた。「息子が2人
いるけれども、2人とも正社員ではないんです。だから毎月の給料が乱高下して
不安定。アパートの家賃を払えないから、家を出て独立できない。若者の雇用問
題を何とかしてください」と。

 さらには大阪から東京に戻ってきたという50代の男性は「親の介護のために、
仕事を辞めて帰ってきた。でも、もう限界で施設に預けたくても預かってくれる
所がまだ見つからないんです」と語った。

 赤ん坊を抱っこした女性。「福島さん。障がいのある子どもでもこの社会で元
気に生きていけますか」。話し終わった後、彼女は赤ん坊を見せてくれた。鼻に
は医療用のチューブが通っている。私は政府の障がい者制度改革推進会議で取り
組んできたこと、これからの取り組みについて必至で話をした。

 たくさんの涙。政治は本当に一人一人にまだまだ、まだまだ、届いていない。
どれだけ多くの人が、さまざまな困難を抱えて生きていることか。

 私は、長年の政治、とりわけ小泉構造改革が雇用や社会保障を壊してきたと思っ
ている。雇用の劣化は続いている。人々はそんな政治を転換することこそを求め
ているのに、転換がなかなかできない。むしろ公務員の首を切れと主張するみん
なの党や自民党が躍進をした。民主党内の軸も大きく変わりつつある。

 小泉政権下で「切れ、切れ」とやって、地方の自治体病院では閉鎖するところ
が増えた。新自由主義、弱肉強食の政策が雇用の劣化を生み、医療をはじめとし
た福祉の切り捨てが進行してしまった。格差を是正、貧困を解決、生活を再建し
社会を立て直すことが、個人も社会も元気になるウィンウィン(互恵)の関係を
もたらすはずなのに、これ以上、生活を不安定にして一体どうしようというのか。

 労働者派遣法の改正や有期雇用やパート労働者の権利保護、正社員も含めた長
時間労働の規制こそ急務である。

 街頭での多くの人たちの涙に応えられる政治をやっていくこと。今回参院選で
3度目の当選を果たした私のこれからの6年間の課題である。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」8月2日号より)

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米国に「県内はノー」を

 今、大臣として消費者、男女共同参画、少子化、自殺対策、障がい者施策のほ
か、若者育成や薬物、犯罪被害者などの対策に取り組んでいる。それぞれ成果を
出すべく多くの人と力を合わせている最中である。

 そして、米軍普天間飛行場の移設問題である。普天間飛行場の返還と沖縄の負
担軽減については、多くの人が賛同してくれると思う。そのためにどうするか。
今、全力を挙げて実現すべき時である。

 沖縄の海兵隊は果たして抑止力なのか。米国は海兵隊を米領グアムに移転する
こととしており、その数は日米合意で約8000人とされている。沖縄県庁は米
軍への聴取から実数約1万2400人としている。約8000人を差し引くと約
4000人しか残らない。また、アフガニスタンやイラクに、海兵隊の多くは派
遣され、その間は「不在」が目立った。

 テレビ番組で森本敏拓殖大大学院教授と論争した時に、彼は「沖縄に海兵隊が
いる必要はない」と発言した。その通りである。そもそも佐世保から艦船が沖縄
に来て、海兵隊が乗船してから国外へ出掛けることになる。沖縄からパッと出掛
けるというわけではないのである。

 万が一、朝鮮半島が有事になった際に必要だなどと言われることがある。しか
し、海兵隊は当たり前だが、自国民である米国民の救援をするのである。このこ
とは、自民党議員が「米国人の救出をするのが当然である」「余席があれば、日
本人も救出をする」と言っている。

 「抑止力とは何か」「沖縄に海兵隊は存在しなければいけないのか」「グアム
をもっと統合的な基地にしようとする米国の戦略はどういうものなのか」…。わ
たしたちは議論をもっともっとすべきである。

 社民党は、政府団として、そして与党として、グアム、北マリアナ諸島のテニ
アンの視察を行った。最近、北マリアナ諸島議会は上院、下院共にテニアンが最
適地であり、自分たちは歓迎をするとの決議を行った。民主党の川内博史衆院議
員はじめ6議員もグアム、テニアンを訪問し、知事などの親書を託されてきてい
る。

 自民党政権時代、沖縄・辺野古の沿岸部に海上基地を造ると決めたものの、く
い一本打てなかった。沖縄の人たちの強い反対があったからである。今ももちろ
ん沖縄の民意は「県内はノー」の立場である。

 自民党時代の資料を見ると、埋め立て方式では約9年半、くい打ち桟橋方式で
も約7年かかると試算している。これから10年後には東アジア情勢も大きく変
化しているだろう。そして、外交も含めた対外的な交渉力こそ大きく発揮されな
ければならないだろう。経済的にもっともっと密接になっているはずである。

 埋め立て方式であれ、くい打ち桟橋方式であれ、サンゴや藻場への影響は甚大
である。いったん壊したサンゴは元へは戻らない。米国に対して「沖縄の人の同
意は取れず、県内は無理です」とはっきり言うべきである。米国も民意を無視す
ることはできないからである。

 普天間問題は、民主主義の問題であり、みんなの問題である。沖縄に犠牲と負
担を強いることは反対である。わたしたちは、力を合わせ、これまでと違う政治、
未来をつくるべきだ。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」5月24日号より)
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障がい者差別禁止法を

 社会を変えようと、いま、必死でやっているものの一つに障がい者施策がある。

 昨年12月に首相を本部長、わたしと官房長官を副本部長に「障がい者制度改革
推進本部」ができ、精力的に議論を重ねている。「障害者」ではなく「障がい者」
としているところも変わった点である。

 障がい者の人たちの運動はずっとあったけれど、社会の現状は、障がい者にとっ
てまだまだ住みにくいといっていい。わたしの父は1年前に亡くなったが、晩年
は骨折をして、車いす、そして寝たきりになってしまった。高齢者の問題と障が
い者の問題は共通している点があるとつくづく思う。

 社会を変えようという熱い思いで、「障がい者制度改革推進会議」が開催され、
討議されているが、この会議自体、初めてということがたくさんある。

 24人のメンバーのうち14人が障がい者か、その家族である。障がいの当事者が
多いので、問題点が深く、切実に掘り下げられる気がする。みんな、何とか改善
をしたい、改革をしたいと思っているのだ。

 聴覚障がいがある人、視覚障がいがある人、知的障がいがある人、車いすの人、
精神障がいの人などが参加している。難しい表現が出てきたときには、知的障が
いの人が「イエローカード」を提示するというルールがある。「表現が分かりま
せん」と指摘してもらうのだ。

 手話通訳の人や介助者も同席する。聴覚と視覚の両方に障がいを持つメンバー
の隣では、指点字通訳者の人が座り、情報を伝えている。要約筆記の人が発言を
短くまとめ、それがスクリーンに映し出される。

 インターネットを見てほしい。会議の全容が手話と字幕付きで見ることができ
る。これも初めてのことである。全国で障がいのある人たちが注視しており、傍
聴ができなくても会議の議論の様子が分かるようにしたのである。

 推進会議の司会者も障がいを持つ人で、担当室長は車いすの弁護士である。

 会議の進め方も丁寧だ。「何とかさん、大丈夫ですか」と言って、休みを取り
ながら会議が4時間続く。こんな感じで進む政府の会議は初めてだと思われる。

 推進会議では・サービス利用者の1割負担に障がい者の人が悲鳴を上げた障害
者自立支援法を廃止し、替わりに総合福祉法を作る・障がい者差別禁止法を作る
・障害者基本法の改正を行う―ことを目指している。

 差別禁止法ができたら、随分と社会は変わるだろう。障害者権利条約を批准す
る予定である。教育、雇用、移動の自由、政治参加など多くの点で前進できるよ
うにみんなで力を合わせていきたい。

 わたしはたまたま弁護士として、障がいのある子どもの両親の離婚事件を立て
続けに3件担当したことがある。そうした経験を通じて、まだまだこの社会はい
ろんな苦労を親に押し付けていると思った。

 推進会議では、これから多くの役所とのバトルと対話が始まる。大変だがやら
なければならいことだ。障がい者施策が大いに進んで、本当は「障がい」という
言葉そのものさえなくなる社会を夢見ている。これから力を合わせて大きな前進
を勝ち取りたい。

(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」4月26日号より)
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