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福島みずほのどきどき日記

クライマーズ・ハイ

8月12日(火)
「クライマーズ・ハイ」
 監督 原田真人
 主演 堤真一、堺雅人、尾野真千子、高橋政宏、山崎努

 1885年8月12日、日航機が、御巣鷹山に墜落をした。 
 そのときのことを本当に良く覚えている。
 その後、遺族の人たちと知り合う機会があった。
 8・12連絡会の美谷島さんは、9歳のけんちゃんが、ひとりで,乗っていて、亡くなってしまった。
 河口さんのおとうさんが、飛行機のなかで、書いた家族にあてた手紙は、心に迫るものだ。
 妻と娘と息子に、呼びかけている。今まで幸せな人生だったと書き、残される家族の事を心配をする河口さんは、素晴らしい人だ。息子さんも娘さんにも会ったことがある。また、西井さんという夫を亡くした人にも会った。

 河口さんの遺書のメモが大きな役割を果たしていると思うが、遺族の人たちは、事故の原因究明と再発防止を一生懸命やってきた。
 全く私利私欲なく、ひたすらもう遺族は作りたくないとみんなで、力を合わせてやってきたと思う。
 補償の交渉が終わっても、力を合わせて運動をすることが続いてきたのは、子どもへの愛情にあふれた美谷島さんをはじめみなさんのお人柄ではないだろうか。

 わたしは、議員になってから、国土交通省と、事故だけでなく、再発防止のためには、インシデント、たとえば、事故には至らなくても接近しすぎてしまったなど、飛行機の運航についてのインシデントを集積し、発表をするべきだと、交渉をしたりした。
 それらは、少しずつ実現をした。

 事故の悲惨さを伝え、2度と事故が起きないようにするために、飛行機の機体の残骸を残して欲しいと8・12連絡会は取り組んだ。
 事故原因の究明のための刑事訴追をはじめ、長期に取り組んできたがんばりは、本当に尊敬をしている。

 この「クライマーズ・ハイ」は、美谷島さんが、家族にチケットを送ってくれた。
 だったら、何としても8月12日までに見に行かなきゃと見に行った。

 映画は、横山秀夫 さんの原作の面白さ、新聞社内の抗争、他社との競争、記者の家族たち、山登りなどが、あいまって、ダイナミックな、そして、誠実なものとなっていた。

 事故の悲惨さも家族の思いも伝わってくる。

 そして、わたしが、本当に面白いと思ったのは、新聞の作り方である。
 会社や組織、人間関係のややこしさ、嫌になっちゃうことが、これでもか、これでもかと描かれる。
 わたしたち弁護士も論争をするが、そんなものがおとなしく見えるほどの怒鳴りあい。確かに、弁護士は、あまり怒鳴りあいはしない。気が弱かったら、新聞社内で、埋もれて、おしやられてしまうという感じ。「2人組でやれ。」と言われた女性記者が、「これはわたしのネタです。」と悠木に食ってかかるシーンがある。上司に言われて、「ハイ、そうですか。」とはならないのだ。

 悠木は、40歳を超えた中堅の記者。やんちゃで、反抗心旺盛で、社長に坊やと言われてきた。
 北関東新聞の社長は、山崎努演ずる癖のある社長である。
 編集のなかの足の引っ張り合い。
 悠木は、この日航機事故の責任者になるが、そのことを面白くなく思っている者もいる。
 この地方新聞社は、大久保・連赤事件の過去の遺産で食っている局長などが、幅をきかせ、なかなか若手の出番がまわってこない。

 一面をどうするかで、怒鳴りあいをし、出し抜きが続く。
 現地に飛んだ若手2人は、真っ黒になって、苦労のしすぎだが、なかなか報われない。

 編集部は編集部のなかで、嫉妬と対立と見解の相違と足の引っ張り合いがあり、大変なのだが、これに、広告部と販売部との熾烈な対立がある。販売部と対立をするときは、今度は、編集部が一丸となって、まとまるところが面白い。
 でも、こんな熱気で、作っているのかという感動がある。
 夜中の1時過ぎまで、みんなヘロヘロになって、怒鳴り合う。

 予期もしない大事件が起きたときに、どう行動をするか。
 家族とうまくいかないことや職場のなかの失望や絶望。
 他人から、批判をされることやスクープにするかどうか迷うところ。

 横山秀夫さん(「半落ち」などの作家)は、上毛新聞の記者をされていた。
 日航機事故のときには、記者で経験をしているので、リアルで本当に面白い。

 「プラダを着た悪魔」の映画は、ファッション雑誌の業界をかいま見れて面白かったが、この映画は、日本のなかで、映画になりにくい「職場」を採り上げていて、その不条理さと人間関係と仕事の大変さが、ホント伝わってきた。

 仕事に没頭し、家族との関係がうまくいかなくなることやだからこその思い、倒れた同僚やがんばる部下や変になってしまう部下への思いも描かれる。

 クライマーズ・ハイとは、仕事への没頭を意味しているようにも思えるし、父親的なものや困難の克服のようにも思えるし、山登りに象徴される同僚と力を合わせて、無心に山登りをし、仕事をするということのようにも思える。

 大事件をある意味風化させることなく、ドキュメンタリー仕立てで、骨太にドラマにしている。
 堤真一とそれから宮崎出身の堺雅人、そして、山崎努がいい。
 そして、役者さんが演じているのだけれど、ああ、こんな上司っているよねと思わせる演技力は、みんなそれぞれすごい。
 なんかみんな実は楽しく演技をしているようにも思える。

 今日は、一日、心のなかで追悼をしよう。

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