
11月30日(日)
井上ひさしさん原作の「太鼓たたいて笛ふいて」の演劇を見ました。
作 井上ひさし、演出 栗山民也
主演 大竹しのぶ、木場勝己、梅沢昌代、神野三鈴、阿南健治、山崎一
えっ、林芙美子さんて、こんな人だったの!という驚き。
10代の頃、「放浪記」を読んだ。子どもの頃、林美智子さん主演で、NHK朝の連続ドラマ小説をやっていたっけ。
この演劇は、「ものを書く責任」を描いている。
そして、人々のすべての人の「時代と歴史に対する責任」を描いている。
登場をするのは、6人。
この6人が、時代に翻弄をされながら、必死で生きていく。
舞台は、1935年から始まる。林芙美子は、売れっ子作家である。
大竹しのぶさんが、はすっぱで、必死で、まっすぐで、真っ正直で、突き進んでいくバイタリティーあふれ、ちょっとどこか下品な林芙美子をみごとに演じている。
売れっ子の林芙美子は、従軍作家として、従軍し、文章を書き、ラジオに出る。
国内の人々は、戦地のことを知らないから、知りたがり、また、鼓舞される。
時代の物語にすっぽり林芙美子がはまっていく。
第2幕目は、様相が変わってくる。1945年の冬。疎開をしている信州の志賀高原で、林芙美子は、村の集まりで、「ここまできたら綺麗に負けるほかない。」と言い、物議をかもすことになる。権力ににらまれる。
何度も従軍をしているうちに、戦争の実相に心を打たれ、真実がわかるのである。
それを隠したり、うまく取り繕わない、とりつくろえないのが、林芙美子である。
「太鼓たたいて笛ふいて」人々を戦争へ、戦争へと煽動し、鼓舞をしたからこそ、胸をかきむしるような思いで、特に、戦後は、戦争に傷ついた人々をこれでもか、これでもかとひたすら書いていく。「書かなきゃ」と書いていく。
中途半端なインテリだったら、ごまかすだろうし、頬かむりするだろうし、知らんぷりして、発言を変えるだろう。また、変わった「新しい時代の歌」を歌うだろう。しかし、林芙美子は、不器用なくらい、「暗い」と言われながら、戦争で傷ついた人々のことを書いていくのである。
木場勝己さん演ずる三木孝は、調子のいいマスメディアをうまく表現をしている。
何と言っても彼は、はじめは、レコード会社のプロデューサーだったのが、日本放送協会にはいり、情報局(内閣情報部が改組してできた機関)にはいり、戦後は、また日本放送協会に戻る。
林芙美子に、「戦争は儲かる。」とささやき、彼女を鼓舞し、彼女と一緒に「太鼓たたいて笛をふく」のだが、あらま戦後はそんなこと全く関係ないように、「新時代」向きの番組を作ってさわやかに生きていくのである。
「おかしいなあ。」「これでいいのかなあ。」と思いながら、メディアも含めて、ひとつの時代に突き進んでいく様子がよく描かれている。
国会のなかだって、たとえば、こっそり、「福島さん、社民党はがんばって、憲法9条を守らないとだめだよ。」という自民党の議員がいたり、小泉構造改革が吹き荒れているときであっても、参議院のなかでは、そのことにかげでブーブー言う自民党の議員はいたのである。しかし、それが、はっきり公的な議論になり、自民党の政策を変えることにはならなかった。
国会にいると、「もっとまじめにやれ!」と怒鳴りたくなることがしょっちゅうである。
賛成をしていないのであれば、はっきり意見を言うべきである。
今の時代でも、国会の内外を問わず、「何となく時代の流れ」「時代の物語」にどどっと流されていると思うことがしょっちゅうである。2大政党制の流れについてしかり、憲法をめぐる議論についてしかり。
小泉構造改革が吹き荒れたとき、わたしは、「改革の方向が違う」「このような労働法制の規制緩和や2200億円の社会保障費のカットは、格差を拡大し、貧困を生む」と主張をした。結果は、その通りになった。
では、太鼓たたいて笛吹いて儲けた人たちは、責任をとったか?
太鼓たたいて笛ふいてということは、ジャーナリストや物書きの人々についてだけ言われているのではない。
これは、やっぱり一人ひとりに対しても言われているのだと思う。
そして、今の問題なのである。
わたしが、井上戯曲に感動をするのは、難しい話を難しく語らず、大きな話をいかにも大きく語らず、時には、ユーモアをまじえ、立体的に構築し、しかも救いがあるからである。げらげら笑っているうちに、「ちょっと待てよ。」と考えることになる。
林芙美子さんは、根っから、人々から生まれ、だからこそ、人々のために、書き続けたのだろう。
登場人物6人の人生が、それぞれ語りかけてくる。
時代に乗せられ、人々を巻き込む責任、時代に乗りたい弱さと欲、知りながら頬かむりをすること、調子の良さ、戦争などに翻弄される苦しみや悲しみなどいろんなことがつまっている。
林芙美子さんの母親役の梅沢昌代さん(うまい!)と阿南健治さん、山崎一さんの3人で、ど迫力で歌う「行商人の歌」が圧巻。朴勝哲さんのピアノに合わせて、みんなで歌い、踊る楽しい劇でもある。
井上ひさしさん原作の「太鼓たたいて笛ふいて」の演劇を見ました。
作 井上ひさし、演出 栗山民也
主演 大竹しのぶ、木場勝己、梅沢昌代、神野三鈴、阿南健治、山崎一
えっ、林芙美子さんて、こんな人だったの!という驚き。
10代の頃、「放浪記」を読んだ。子どもの頃、林美智子さん主演で、NHK朝の連続ドラマ小説をやっていたっけ。
この演劇は、「ものを書く責任」を描いている。
そして、人々のすべての人の「時代と歴史に対する責任」を描いている。
登場をするのは、6人。
この6人が、時代に翻弄をされながら、必死で生きていく。
舞台は、1935年から始まる。林芙美子は、売れっ子作家である。
大竹しのぶさんが、はすっぱで、必死で、まっすぐで、真っ正直で、突き進んでいくバイタリティーあふれ、ちょっとどこか下品な林芙美子をみごとに演じている。
売れっ子の林芙美子は、従軍作家として、従軍し、文章を書き、ラジオに出る。
国内の人々は、戦地のことを知らないから、知りたがり、また、鼓舞される。
時代の物語にすっぽり林芙美子がはまっていく。
第2幕目は、様相が変わってくる。1945年の冬。疎開をしている信州の志賀高原で、林芙美子は、村の集まりで、「ここまできたら綺麗に負けるほかない。」と言い、物議をかもすことになる。権力ににらまれる。
何度も従軍をしているうちに、戦争の実相に心を打たれ、真実がわかるのである。
それを隠したり、うまく取り繕わない、とりつくろえないのが、林芙美子である。
「太鼓たたいて笛ふいて」人々を戦争へ、戦争へと煽動し、鼓舞をしたからこそ、胸をかきむしるような思いで、特に、戦後は、戦争に傷ついた人々をこれでもか、これでもかとひたすら書いていく。「書かなきゃ」と書いていく。
中途半端なインテリだったら、ごまかすだろうし、頬かむりするだろうし、知らんぷりして、発言を変えるだろう。また、変わった「新しい時代の歌」を歌うだろう。しかし、林芙美子は、不器用なくらい、「暗い」と言われながら、戦争で傷ついた人々のことを書いていくのである。
木場勝己さん演ずる三木孝は、調子のいいマスメディアをうまく表現をしている。
何と言っても彼は、はじめは、レコード会社のプロデューサーだったのが、日本放送協会にはいり、情報局(内閣情報部が改組してできた機関)にはいり、戦後は、また日本放送協会に戻る。
林芙美子に、「戦争は儲かる。」とささやき、彼女を鼓舞し、彼女と一緒に「太鼓たたいて笛をふく」のだが、あらま戦後はそんなこと全く関係ないように、「新時代」向きの番組を作ってさわやかに生きていくのである。
「おかしいなあ。」「これでいいのかなあ。」と思いながら、メディアも含めて、ひとつの時代に突き進んでいく様子がよく描かれている。
国会のなかだって、たとえば、こっそり、「福島さん、社民党はがんばって、憲法9条を守らないとだめだよ。」という自民党の議員がいたり、小泉構造改革が吹き荒れているときであっても、参議院のなかでは、そのことにかげでブーブー言う自民党の議員はいたのである。しかし、それが、はっきり公的な議論になり、自民党の政策を変えることにはならなかった。
国会にいると、「もっとまじめにやれ!」と怒鳴りたくなることがしょっちゅうである。
賛成をしていないのであれば、はっきり意見を言うべきである。
今の時代でも、国会の内外を問わず、「何となく時代の流れ」「時代の物語」にどどっと流されていると思うことがしょっちゅうである。2大政党制の流れについてしかり、憲法をめぐる議論についてしかり。
小泉構造改革が吹き荒れたとき、わたしは、「改革の方向が違う」「このような労働法制の規制緩和や2200億円の社会保障費のカットは、格差を拡大し、貧困を生む」と主張をした。結果は、その通りになった。
では、太鼓たたいて笛吹いて儲けた人たちは、責任をとったか?
太鼓たたいて笛ふいてということは、ジャーナリストや物書きの人々についてだけ言われているのではない。
これは、やっぱり一人ひとりに対しても言われているのだと思う。
そして、今の問題なのである。
わたしが、井上戯曲に感動をするのは、難しい話を難しく語らず、大きな話をいかにも大きく語らず、時には、ユーモアをまじえ、立体的に構築し、しかも救いがあるからである。げらげら笑っているうちに、「ちょっと待てよ。」と考えることになる。
林芙美子さんは、根っから、人々から生まれ、だからこそ、人々のために、書き続けたのだろう。
登場人物6人の人生が、それぞれ語りかけてくる。
時代に乗せられ、人々を巻き込む責任、時代に乗りたい弱さと欲、知りながら頬かむりをすること、調子の良さ、戦争などに翻弄される苦しみや悲しみなどいろんなことがつまっている。
林芙美子さんの母親役の梅沢昌代さん(うまい!)と阿南健治さん、山崎一さんの3人で、ど迫力で歌う「行商人の歌」が圧巻。朴勝哲さんのピアノに合わせて、みんなで歌い、踊る楽しい劇でもある。
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