
社会を変えようと、いま、必死でやっているものの一つに障がい者施策がある。
昨年12月に首相を本部長、わたしと官房長官を副本部長に「障がい者制度改革
推進本部」ができ、精力的に議論を重ねている。「障害者」ではなく「障がい者」
としているところも変わった点である。
障がい者の人たちの運動はずっとあったけれど、社会の現状は、障がい者にとっ
てまだまだ住みにくいといっていい。わたしの父は1年前に亡くなったが、晩年
は骨折をして、車いす、そして寝たきりになってしまった。高齢者の問題と障が
い者の問題は共通している点があるとつくづく思う。
社会を変えようという熱い思いで、「障がい者制度改革推進会議」が開催され、
討議されているが、この会議自体、初めてということがたくさんある。
24人のメンバーのうち14人が障がい者か、その家族である。障がいの当事者が
多いので、問題点が深く、切実に掘り下げられる気がする。みんな、何とか改善
をしたい、改革をしたいと思っているのだ。
聴覚障がいがある人、視覚障がいがある人、知的障がいがある人、車いすの人、
精神障がいの人などが参加している。難しい表現が出てきたときには、知的障が
いの人が「イエローカード」を提示するというルールがある。「表現が分かりま
せん」と指摘してもらうのだ。
手話通訳の人や介助者も同席する。聴覚と視覚の両方に障がいを持つメンバー
の隣では、指点字通訳者の人が座り、情報を伝えている。要約筆記の人が発言を
短くまとめ、それがスクリーンに映し出される。
インターネットを見てほしい。会議の全容が手話と字幕付きで見ることができ
る。これも初めてのことである。全国で障がいのある人たちが注視しており、傍
聴ができなくても会議の議論の様子が分かるようにしたのである。
推進会議の司会者も障がいを持つ人で、担当室長は車いすの弁護士である。
会議の進め方も丁寧だ。「何とかさん、大丈夫ですか」と言って、休みを取り
ながら会議が4時間続く。こんな感じで進む政府の会議は初めてだと思われる。
推進会議では・サービス利用者の1割負担に障がい者の人が悲鳴を上げた障害
者自立支援法を廃止し、替わりに総合福祉法を作る・障がい者差別禁止法を作る
・障害者基本法の改正を行う―ことを目指している。
差別禁止法ができたら、随分と社会は変わるだろう。障害者権利条約を批准す
る予定である。教育、雇用、移動の自由、政治参加など多くの点で前進できるよ
うにみんなで力を合わせていきたい。
わたしはたまたま弁護士として、障がいのある子どもの両親の離婚事件を立て
続けに3件担当したことがある。そうした経験を通じて、まだまだこの社会はい
ろんな苦労を親に押し付けていると思った。
推進会議では、これから多くの役所とのバトルと対話が始まる。大変だがやら
なければならいことだ。障がい者施策が大いに進んで、本当は「障がい」という
言葉そのものさえなくなる社会を夢見ている。これから力を合わせて大きな前進
を勝ち取りたい。
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」4月26日号より)
昨年12月に首相を本部長、わたしと官房長官を副本部長に「障がい者制度改革
推進本部」ができ、精力的に議論を重ねている。「障害者」ではなく「障がい者」
としているところも変わった点である。
障がい者の人たちの運動はずっとあったけれど、社会の現状は、障がい者にとっ
てまだまだ住みにくいといっていい。わたしの父は1年前に亡くなったが、晩年
は骨折をして、車いす、そして寝たきりになってしまった。高齢者の問題と障が
い者の問題は共通している点があるとつくづく思う。
社会を変えようという熱い思いで、「障がい者制度改革推進会議」が開催され、
討議されているが、この会議自体、初めてということがたくさんある。
24人のメンバーのうち14人が障がい者か、その家族である。障がいの当事者が
多いので、問題点が深く、切実に掘り下げられる気がする。みんな、何とか改善
をしたい、改革をしたいと思っているのだ。
聴覚障がいがある人、視覚障がいがある人、知的障がいがある人、車いすの人、
精神障がいの人などが参加している。難しい表現が出てきたときには、知的障が
いの人が「イエローカード」を提示するというルールがある。「表現が分かりま
せん」と指摘してもらうのだ。
手話通訳の人や介助者も同席する。聴覚と視覚の両方に障がいを持つメンバー
の隣では、指点字通訳者の人が座り、情報を伝えている。要約筆記の人が発言を
短くまとめ、それがスクリーンに映し出される。
インターネットを見てほしい。会議の全容が手話と字幕付きで見ることができ
る。これも初めてのことである。全国で障がいのある人たちが注視しており、傍
聴ができなくても会議の議論の様子が分かるようにしたのである。
推進会議の司会者も障がいを持つ人で、担当室長は車いすの弁護士である。
会議の進め方も丁寧だ。「何とかさん、大丈夫ですか」と言って、休みを取り
ながら会議が4時間続く。こんな感じで進む政府の会議は初めてだと思われる。
推進会議では・サービス利用者の1割負担に障がい者の人が悲鳴を上げた障害
者自立支援法を廃止し、替わりに総合福祉法を作る・障がい者差別禁止法を作る
・障害者基本法の改正を行う―ことを目指している。
差別禁止法ができたら、随分と社会は変わるだろう。障害者権利条約を批准す
る予定である。教育、雇用、移動の自由、政治参加など多くの点で前進できるよ
うにみんなで力を合わせていきたい。
わたしはたまたま弁護士として、障がいのある子どもの両親の離婚事件を立て
続けに3件担当したことがある。そうした経験を通じて、まだまだこの社会はい
ろんな苦労を親に押し付けていると思った。
推進会議では、これから多くの役所とのバトルと対話が始まる。大変だがやら
なければならいことだ。障がい者施策が大いに進んで、本当は「障がい」という
言葉そのものさえなくなる社会を夢見ている。これから力を合わせて大きな前進
を勝ち取りたい。
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」4月26日号より)

