福島みずほのどきどき日記

政治の迷走に危機感(10年11月22日号バックナンバー)

■政治の迷走に危機感
(共同通信社会員制情報誌「Kyodo Weekly」11月22日号より)

 実はわたしは「映画オタク」なのだ。議員になる前から、ある映画賞の審査員
をしており、審査会で趣味と実益を兼ねて映画を見ている。旅行にはなかなか自
由に行けなくても、映画では一時間半でどこへでも〝トリップ(旅行)〟ができ
る。

 堺雅人さん主演の「ゴールデンスランバー」を見た。首相暗殺犯に仕立て上げ
られた人間の逃走劇を描いている。テレビに犯人として映し出されると、本当に
その通りに人々は信じていく。でっち上げていく捜査機関の恐ろしさ…。

 映画を見ながら、厚生労働省の公文書偽造をめぐり無罪が確定した村木厚子さ
んの事件やさまざまな冤罪を思い出していた。かつて元大阪高検公安部長だった
三井環検察官は、検察庁の裏金問題を内部告発しようとした矢先に、別件で逮捕
されたっけ。ストーリーが作られてしまうと、その個人に動機があったかどうか
などとは関係なく、犯人に仕立て上げられ、手続きが進んでいく。

 村木さんは一貫して否認し、かつ家族などの支援に励まされ、弁護団が優秀で、
そして何より捜査があまりにもずさんであったので、無罪を勝ち取った。しかし、
ほとんどの人は、捜査の可視化がない中では、強要による〝自白〟をしてしまう。

 運悪く、そんな中に一個人が落ち込んだら、なかなか自力では克服できない。
おまけに村木さんの件では、検察官が証拠を捏造していたかどうかまで問われて
いる。映画なんかより、日本の現実の方がずっと怖く、構造的に不正義がまかり
通っているのではないか。

 信じ難いと言えば、尖閣諸島周辺で起きた中国漁船衝突事件をめぐるビデオの
流出問題もそうである。「こんなことが起こるのか。政府のガバナンス(統治)
は一体どうなっているのか」と、まず思った。海上保安庁で働く人たちが誇りを
持ち命を懸けて、大変な苦労の中で働いていることはよく分かっている。社民党
は2010年度補正予算案で、海上保安庁の体制整備の支援をしっかり盛り込ま
せた。

 しかし、組織の判断とは別に、一人の公務員が個人の判断で、刑事上の証拠で
もあり、また、外交上も微妙な問題に発展しかねない内容を流出させることは、
組織としてまったくガバナンスが取れていないと言わざるを得ない。海上保安庁
や政府には責任がある。警視庁が持っていた国際テロ捜査に関する情報の流出に
も心底驚いた。

 「えっ、こんなことが起きるのか」という事が立て続けに起こる政治に大きな
危機感を持っている。尖閣諸島の問題で言えば、衝突のあった9月7日、国土交
通相は海上保安庁に対して「毅然としてしっかり対応してください」と言ってい
る。問題は、その後である。

 公務執行妨害罪として刑事司法にのっとって手続きを進めることと、もう一つ、
政治、外交上、どのように判断し、どのような方針に基づいて、どう解決をして
いくかということが極めて重要である。政治上の方針や決意が見えず、十分な説
明もされないことが、さまざまな「迷走」を生んでいる。

 時代がどう転がっていくか、大変危うい。だからこそ、政治は揺るぐことなく、
政権は見識を明確に示さなければならない。

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