福島みずほのどきどき日記

未来バンクの田中優さんとの対談録

【福島みずほ緊急連続対談1】 田中優さん 「原発に頼らない社会へ」 (2011年4月11日収録)

 福島みずほ(以下、福島)
 田中優さん、こんにちは。3月11日大震災、そして原発震災が起きて社会は変わらなくちゃならない、政治は変わらなくちゃいけないと思いますが、どう受け止めていらっしゃいますか。

 田中優(以下、田中)
 今回のこの悲惨な震災、そしてその後に続いて起こってしまった原発震災、これを社会のターニングポイントに変えていくことが僕はとても重要だと思っていて、こういった原発事故が起こってしまうのをみすみす放置するのか、それともここをターニングポイントに変えることで社会を切りかえていくのか、そこがすごくだいじなポイントだと思います。
 その中でここで特に紹介したいのは、まずターニングポイントにすることで、たとえば日本の中で雇用を生み出すということも、そして地域を活性化させるということも実際には可能だということです。というのは、従来は大きな発電所を建ててそこには運転員数人しかいなくて、そして日本中に電気を送るというような仕組みになっていたのですが、これは残念ながらコストが高いくせに雇用される人が極めて少なかった。ところが一方でドイツの例を見てみると、すでに新たに自然エネルギーの産業が生まれて37万人が雇用され、そして炭素税で企業の負担している年金の半額部分に助成するということをやって、その結果25万人の正規雇用が増えている。合計で62万人ですけれど、人口は日本の3分の2ほどしかないから、日本で言うと93万人の雇用者数になる。こういうことが実は、自然エネルギー、各地域の分散型エネルギーをすれば実現可能になっていく。しかもその金額ですが、現在日本が輸入している石油・天然ガス・ウラン・石炭、これらに対して支出している金額は2008年で23兆円に及んでいます。それが地域の自然エネルギーに切り替わったとしたら、毎年23兆円を地域の中に流すことができる。そうすると、雇用がないなんてことはもう考えられなくなる。しかも自然エネルギーの場合には雇用者数が多い、にもかかわらずコストが安い、ということが特徴ですから、この社会を思いきり雇用を増やしながら、しかも電気料金を安くしていくことが可能になる。そういう仕組みにしていける一つのターニングポイントにできるかどうかが問われていると思っているのです。

 その中で実は大きなポイントになるのが、今回、原子力賠償制度という保険があってそれで賠償金が出される予定だったけれども、それをはるかに上回る被害額が出てしまった。そのために国家が立て替え払いをせざるをえないんです。国家が立て替え払いをせざるを得ないのであれば、だったら国家がお金を出す代わりに借金のカタにとりあげるべきものがある、と思っています。その一つが送電線です。電気というのは、発電・送電・配電、その3つに分けることができる。発電と配電はどんな事業者がやってもいいんだけども、このまん中に入る送電線というものは、これは本当は公共財です。車にとっての道路のようなもの、すなわち、道路のあちこちに関所を設けられてしまったとしたら車はもう走ることができない、現状の電気はそういう状況です。いろんな人たちが、例えば、北海道ではたくさんの風車を建てたがっている、ところが送電線を握っている北海道電力はそれを買おうとしない、そのおかげで日本では自然エネルギーが伸びない、という構造になっている。この送電線というものは、本来公がもって自由利用にすべきものです。それをするには、今回大きな借金を背負ったわけですからチャンスになる。
 
 つまり政府が金を出す代わりに送電線は公で持ちますよ、ともってくことができるようになるし、それをやるべきだ。しかも日本の電気供給の1/3を握っている東京電力ですから、1/3をそれで政府が公共財として持つことができるようになったら、後の会社は東京電力の資本と比べたら1/10程度ですから、そういったところからは、のちのちに公共財として今度は買わせて下さいという形で公が持つようにすればいい。そうすれば誰が発電しても買ってもらえる。そして誰でもがそこから人々におろして配電をして売っていくことができる、ヨーロッパ型のエネルギーデモクラシーが実現していくことになる。そのためにとても重要なのが、送電線網を公共財にするという仕組みだと思っています。

 あともう一つとりあげてほしいと思うのは、広告宣伝費です。広告宣伝費の中で東京電力は非常に大きな位置にいて、しかも日本には10社の電力会社があり、さらに電気事業連合会があり、さらに政府広報があり、ついでにいうとACの中の非常に重要な位置を占めているのが電力会社になっている。すなわち、メディアにとって一番重要な広告宣伝費の最大の支出をしているのが、トヨタ自動車を抜いて実は電力会社なんです。そのおかげで、電力会社の不都合になる情報がメディアに流れない。しかも日本の場合には、そのメディアが、テレビ・ラジオ・新聞が同じ系列で動くという形になっている。これは諸外国では情報を制限してしまうことになるので禁止されていたりするんですが、日本では、テレビ・ラジオ・新聞が同じ資本でやっていて、そこの最大の広告宣伝費のオーナーになっているのが電力会社、そのおかげでまともな情報が流れないわけです。日本の中でメディアを握ってしまっているのは、はっきり言ってエネルギー産業、しかも電力会社という構図になってしまっている。これを変えていかなければいけないけれども、今回はその一つの大きなチャンスになりうる。例えば、その中で最大の東京電力の推進している広告宣伝費を、政府が立て替え払いしたんだから、その分は返済にまわせ、と言うことは当然の権利です。そういう形で電力会社がメディアを抑えてしまうということを禁止していくことができる、だとしたらメディアが初めて日本で民主的な情報を流せるようになる、そういうことをすべきだと思っているんですね。

 福島
 これはやはり国策としてやってきたことで、だから、文部科学省が出している副読本も原発は安全だと、原発は五つの壁があるから大丈夫だとなっていたわけで、政府の国策である原子力推進策を変えて、自然エネルギー促進に向かうべきですよね。メディアだけでなくて、国の広報のあり方も全面的に変えていくべきだと思います。

 田中
 そしてその政府の出している資金というのも、政府の支出に対するパーセンテージで調べてみると、なんとこの50年間ずっと一貫して同じなんですよ。現時点で言うと約5千億円が毎年出されているわけですけれど、仮に5千億円を現在の価値で調べてみると、それが50年ですから25兆円に及ぶわけです。原子力発電は1基3千億と推進派の方が言っていて、これまでに55基あったわけですから、その55基×3千億円と50年×5千億円とどちらが大きいか、明らかに助成金の方が大きい。つまり、現在までの原発は実は電力会社が作ったわけではなく、人々の税金から作られたものです。それが良くなかったのだから、税金の側から止めて、もうやめていくということを決心すべきだと思います。そのお金の流れ方は非常におかしいと思います。

 福島
 そうですね。税金だけでなく、電気料金にも、特別会計、今は一般会計と言われていますが、実は一般会計もどきで立地などに使われてきましたから、電気料金と税金、これを大きく組み替えて自然エネルギーに使うべきだと思います。国策を変えよう!と言いたいですね。

 田中
 もしそれが可能だとすると、今、世界で最大の投資先と目されているのは、スマート・グリッド、賢い送電網というような仕組みが最大の投資額になっているわけですが、これには5つのものが必要です。一つは省エネ製品、一つはバッテリー、一つはIT技術、もう一つは自然エネルギー、そして最後に電気自動車、この5つが必要なんですが、この5つについて世界で最高の技術を持っているのは、この日本です。この日本が実は一番浮かびあがれる可能性を持っているのに、残念ながら既得権益である電力会社によってこれが伸びない形にさせられてしまっている。これを伸ばしていくことができるとしたら、世界で最も優れた技術を持つ国はこの日本になる。そういう形で政策を転換していけば、雇用も増えるし、非常に大きな未来が開けてくるのに、それを逆方向に進めてしまっていることに問題がある、と強く思うので、本当に福島さんのおっしゃるような政策をぜひとるべきだと思いますね。

 福島
 そして今、計画停電で大変だ大変だとなってますが、計画停電ではなくて無計画停電ですが、これは夏に向って節電やいろんな省エネや電気料金の体系を見直すことが必要ですよね。
田中:はい。ですが、これに関してまず人々が誤解しているのは、人々のライフスタイルの問題だと思い込んでしまっていることです。電気消費の3/4は家庭以外で消費しています。しかも電気は貯めることができないので、ピーク電力の消費のときに発電所が足りなくなるから、一番消費の多いところが問題なんです。そのピークは実は毎日は出ません。一年8,760時間ありますが、その中で10時間以下しか出ません。しかも日本最大の東京電力のピークは、これは定式があります。ピークが出ているのは、夏場・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたときです。ですからそのときにだけ、ピークの時に消費の多い事業者に対して料金を高くして制限をしますとか、31度を超える平日はあらかじめわかりますから、いついつの日には計画停電したいのだが御社は協力してもらえるかというような相談をしていけば、これは事業者にとって突然に需要を落とせと言われて切るよりも、よほど楽に対応できるのです。ですから、東京電力のピークは、まず、夏場・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたときだけしか出ないということをきちんと把握して対処すれば解決できる問題だということができる。
 そしてもう一つ、そのピークですが、実は家庭の消費は今言った、夏場・平日・日中、午後2時から3時にかけて気温が31度を超えたとき、このとき家庭は最も消費しない時間帯に当たっています。なんとピーク時の91%の消費が家庭以外の事業者によってのものです。だから、家庭の電気料金など上げても対応はできないんです。家庭はもともとたった9%しかピークには消費していませんから、そこにいくら値段を上げても変わりようがないんです。じゃ、事業者はなぜそのピークにどんどん消費してしまうかというと、実に簡単です。事業者の電気料金は使えば使うほど単価が安くなるようにできている。一方で家庭の電気料金は途中まで安くなるんですけれど、途中からは使えば使うほど高くなるように作られているんです。だから、これは簡単に解決できます。使えば使うほど高くなる電気料金を事業者の電気料金に入れることです。そうすると事業者はただちに3割程度省エネします。

 福島
 省エネ製品も売れるからいいですよね。

 田中
 ものすごく経済効果も出ますね。今、企業はたった3年でもとがとれる省エネ製品を導入していないんです。なぜならば、導入しても金がかかるだけで結局もとがとれるのに3年かかるわけですよね。使えば使うほど安くなる電気料金のもとでは省エネ製品を入れる意味がないんですね。ところが使えば使うほど高くなるように組まれたら、企業はあっという間に省エネ製品に入れ替えます。そうするとピークの消費は3割くらい下げられるから何の事はない、計画停電なんて何一つなくてもじゅうぶんに解決することが可能だとい思います。ですからそういったデータに基づいて仕組みを考えてみると、実は需要と供給を考えて、この需要がありきのうえで供給をふやすには原子力が必要だとついついみな考えがちなんですけれど、需要は減らすことができます。需要を減らした上で考えたなら、実は原子力に頼る必要すらないのです。なぜなら日本の電気消費は実は発電所の稼働率、正しくは負荷率ですが、1年平均で57から60%程度しかありません。

 ドイツと北欧では70%から80%近くあります。これは何かというと、1年間で平均してヨーロッパの発電所は3/4動いている、でも、日本では半分しか動いてないという、この差なんです。日本がドイツ・北欧並みにしたら、発電所は直ちに25%止めることができます。原子力の設備率は20%ですから1基もなくても困りません。ではどうやったらその負荷率、稼働率をヨーロッパ並みに70%強まであげることができるか。簡単です。上下の激しかった電気消費量の波、夜少なくて昼間大きくて、この激しかった波をなだらかに変えればいいのです。電気はためられないからピークにあわせて発電せざるを得ないのですが、なだらかにするとピークが下がる。なだらかにする方法ですが、フランスは夏場・平日・日中の電気料金を11倍高くしている。そしてイギリスやカリフォルニアでは株式市場でそれぞれの時間帯の電力を売り買いする。一時期は200倍値上がりしたことがあって、200倍高い電気なんか誰が買うかということでみな売り払ってくれたので、ピークの電気消費がぐっと下がりました。アメリカでは電力会社が電気料金を安くしてくれる仕組みがあって、そのときは家の送電線が1本だったものを2本に分けます。そのうちの1本にエアコンをつなぎ、もう1本にそれ以外の全ての電化製品をつなぐ。そして電気消費が増えてきて、このままではピークを迎えて電気が足りない、停電するということになると、電力会社がリモコンで他人の家のエアコンをばちっと消してしまいます。ただし、これは合理主義の国アメリカですから5分しか消しません。5分消されるとどうなるか、僕の友人が実際に営業中の鹿児島の喫茶店でやりました。30分で5分消すそうです。しかもリモコンを使って送風に変えるだけなんですが、それをやったらどうなったか、従業員、お客さん、誰一人気づかなかった。

 福島
 そのとき送風になっても温度がある程度冷えてたらわからないですよね。ばっちん、と切るんじゃなくて、みなでリモコンで送風に切り替えればいいわけですね。

 田中
 それだけでも効果が出るので、それをやることでピークの消費を、エアコンが一番大きい部分ですからエアコンをカットしてもらうことでピークを乗り越える、発電所を新たに作る必要がなくなったから電力会社は皆さんに電気料金を安くする、という仕組みで対応するんです。これ、今から装置を入れていけば夏場に間に合うんですよ。それをやりさえすれば簡単にピークなんて下げられるのに、電力会社はピークを伸ばすことで限りなく発電所を作ることに利権を見出していた。それを逆にすべきなんです。需要ありきではなく、需要は下げられます。需要を下げれば、今ほとんどの人が原発は必要悪だと思っている。でも、その必要性はなくすことができるんです。必要性がなくなったときに、原発は「悪」になりますね。だったらやめればいい。そうやって冷静に考えることが重要なので、需要は変えることができる、だから供給側から考えるのではなく、需要を下げる側を先に考えるべきなんです。実は省エネの方が全然コストも安い。家庭の中で太陽光発電を入れるよりも、実は省エネしたほうがずっと安いんですよ。まず省エネを先にして、そのあとに自然エネルギーを入れる、これが順序です。これを進めていくことがとても必要です。そう考えてみると、未来は可能性を作ることができるし、可能性に満ちているんです。その可能性を見出すことができなかったから、みな希望を失ってしまって「必要悪」と呼ばれるようなものにしがみつかざるを得なかった。解決は可能です。ですから、解決できるということを信じながら進めていくことが大事だし、それを具体的に実現していくことが大事です。評論家になるのはやめたほうがいい。学者もほとんどの場合、評論家です。僕が必要だと思うのは活動家なんです。僕自身は活動家のつもりです。ですから僕はまだ学術的に認められていなくたって、それが何といわれようと、希望が作れるものだったらトライしてみる。トライしてだめだったらあきらめましょう。でもそれ以前に我々にはできることがある。そのできることを進めていくことがまず重要だと僕は強く思っています。

 福島
 必要悪だった原発が、必要がなければ悪になる、と。現実に東京電力は3月31日までに福島第一7号機8号機の新規建設の申請をしていました。新規建設の原発など要りません。上関も大間も中止そのものをやるべきですし、古いものは廃炉にする、そして危ない浜岡原子力発電所など、いつ、東海・東南海・南海三連動の地震が起きるかわからないというのは中部電力も認めているんですが、だとしたら地震になってからでは遅い。もう危険な原子力発電所、順番に止めていきましょう。

 田中
 今回もうひとつすごく重要なのは、とても不幸中の幸いがあったんです。福島第一原発は日本の東の端っこにあったんですね。日本は偏西風地帯だから主に西から東に常に風が吹くんですよ。だからほとんどの放射能は太平洋に流れたんだけど、それで考えてみてください。佐賀県にある玄海原発、島根原発、福井県の若狭湾にずらっと並んでいる原発。あそこで地震が起こったら、日本を縦断して放射能が流れたんですよ。今回の原発が東の端っこだったから太平洋に流れてよかったけど、もしも西側の事故が起こったらどうなるのか。しかももう東海地震が起こることは決まっているのに、そこの震源地の真上に立っている浜岡原発、ここで事故が起こったら東京にそのまま来てしまいますからね。だからもうこういう事態になったんだし、しかも原発の瞬間的な揺れの加速度「ガル」で見てみると、日本の原発の中では浜岡原発が最大の強さですけれど、600ガルまでしか耐えられない。ところが実際には、阪神淡路大震災のとき、820ガルの揺れがあったわけです。820ガルが来たら全部もたないですからね。これはだめです。

 福島
 そうなんですよ。保安院は、福島原発の耐震設計には一応OKと言ったんです。浜岡はまだ中途で耐震指針が完了していません。大甘大甘の保安院ですら、浜岡はGOと言ってないんですね。地震だけでなく、津波対策も堤防がないんですね。小さな砂丘を堤防だといってるけれど、それではだめだと。
 今日、田中優さんがおっしゃった、例えば電気料金や自然エネルギーなどの体系を変えていくこと、仕組みは本当に必要で、そういうことを政治の場所でのコンセンサスにしたいと。広告料金など、広告も、今広告やるようなときじゃないでしょうと。仕組みを変えたい。私は、実は電力会社も、見通しのない、使用済み核燃料やいろんな廃棄物をどうするか、どこも引き受け手がないところで未来が実はないんですよね。原発などやめたいと思っているのが実は本音なのではないかと思っているんですけれどね。一緒に、そういう意味では、政治と社会とを変えていきましょう。これからもよろしくお願いします。

 田中
 僕も福島さんに期待しています。ぜひがんばって下さい。

 福島
 有難うございます。

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