福島みずほのどきどき日記

飯田哲也さんとの対談録

 【福島みずほ緊急連続対談2】飯田哲也さん「中央集権から地方分権型エネルギーへ」 (2011年4月11日)

 福島
 飯田哲也さん、こんにちは。飯田さんとは付き合いも長く、私が国会議員になった13年前に、国会で自然エネルギーを促進しよう、と自然エネルギー促進法を議員立法で出しました。通らなくて本当に残念でしたが、自然エネルギーを本当に促進するための仕組みを作ろうと思って活動してきました。今回、3月11日大震災、そして原発震災の中で思っていらっしゃることを語って下さい。

 飯田
 もともと私は原子力を専門として、実際の事業部分と政策に実務として携わってきて、その頃から、私が原子力村と言ってきた裏側のグズグズの体制が結果的に世界史に残る最悪事故まで至ってしまったことは非常に残念で、これをほんとうに教訓として日本の政策をまっとうなものにしていかないと、もう日本は終わってしまうと思っています。ここで抜本的な転換が必要だと思いますね。

 福島
 抜本的な転換に向けての提案をお願いします。

 飯田
 今すぐやることと、もう少し時間をかけてやることと2つあるわけですが、今すぐやることは、原発自身のことと、エネルギー電力供給、この2つです。原発そのものについてはまだ全体として非常に混乱がみられるので、例えると、日露戦争日本海海戦を大本営参謀が東京で指揮しているような状況になっています。私はそこに政治家ではない全権委任の原発震災管理官的な人を選任して、24時間しっかりこれに当たれる人に、あらゆる権限を集中し、かつ、同時に国際的なチームを構成して、とにかくずっと水をかけ続けるんではなくて、熱を冷ませると同時に、しっかりと放射能漏れを防げる出口戦略を早く構築しないとずるずるとこの状況が続くことになるので、こちらの方を急ぐ必要がある。あわせて放射能のモニタリングを徹底的にやって、累積の国民・公衆の被曝線量を下げるための戦略の手を打つこと。これは直ちにやらなきゃいけない。

 同時にエネルギーに関しては、われわれは無計画停電と呼んでいましたが、計画停電はかなりデタラメなやり方でした。ようやく国も見直す方針を立てていますが、それも火事場泥棒的に環境アセスをすっ飛ばして火力を作るなどという、またぞろ古いやり方をやろうとしています。これは原発は勿論ですが、火力発電を作る必要もなく、今年の夏も乗り切れます。今年の夏を乗り切れるならこの先ずっと乗り切れますので、とにかく、使う側、無計画停電みたいにデタラメに止めるのではなくて、しっかりと省エネを促していく為の価格料金、需給調整契約をしっかり活用した方法で、まずは電力需給の不安をなくすことが必要でス。

 今度は中長期の話になりますが、原子力発電所はこれから放っておいても一気に減ります。今回の震災のダメージを受けた原発だけでも、1千万キロワットを超えて、なおかつ浜岡原発とか柏崎刈羽原発とか非常に不安のある原発、これも今年の夏より前に直ちに止めてもまったく問題ありません。

 福島
 柏崎刈羽を止めても問題ない。

 飯田
 それはわれわれ、ちゃんと需給分析しています。もともと今4基動いている柏崎刈羽の2基は今年の夏に計画的に止める予定になっているんですね、不思議なことに。残り2基もわずか270万キロワットほどですから。

 福島
 少ないですね。

 飯田
 これを止めても今年の夏は全く問題なく乗り切れます。

 福島
 中部電力の浜岡も2つ合わせて240万キロワットで、電力総量が3,240万キロワット、今は2千万キロワットを切ってますし、夏、2千何百万キロワットになっても十分大丈夫ですからね。

 飯田
 中部電力だけでも休止火力で大体500万キロワットありますし、西日本全体で見ると中国電力を始めとして膨大なる電気余りをしてますので浜岡も止めても全く問題ないです。

 福島
 そうすると、浜岡原子力発電所は止められるし、ずっとトラブル続きの柏崎刈羽も260万キロワットであれば、それは止めても大丈夫ですね。

 飯田
 電力需給は問題ないです。それはまず電力需給とか経済性の話ではなくて、福島の事故を前にしたときの、国民の生命・財産・安全を守るという視点で、国が停止命令を出す、まさに政治の責任が致命的にここは欠けていると思います。
 それは今年の夏の話ですが、同時にまず東北復興と日本全体をにらむと、自然エネルギーを爆発的に増やしていく必要があります。大体10年単位のスパンで見ると、ドイツがちょうど、過去のこれまでの10年で6%から17%に11ポイント、電力に占める自然エネルギー割合を増やしていますが、これからの10年では20ポイント、17%から35%に増やすというのがドイツの目標なんです。
日本はドイツよりも大体二回り、面積も人口も経済規模もエネルギー消費もちょうど二回り大きいので、ドイツと同じような増やし方をしようとすれば、日本は今の10%を2020年までに30%にすることができます。実現可能性をにらんでも全く問題なくできます。同時に、無理のない省エネ節電をしっかりやれば、今1兆キロワット時ある電力を2割落として8千億キロワットくらいに落とせます。これで省エネと自然エネルギー、全くクリーンなエネルギーで2020年にはほぼ半分を賄うことができます。
 原子力は放っておいても10%まで減ります。もしくは政治的な判断でゼロにするということも10年後にはあると思います。原子力はゼロから10の間、残り50から40%を、今60%賄っている石炭火力と天然ガスでカバーすることは量としては全く問題ないですが、地球温暖化問題を考えると天然ガスを多めにしたほうが日本としては国際社会の約束も守れます。そうすることによって、今よりも化石燃料の比率を下げながら、そのことによってエネルギーのリスク、日本は23兆円(GDPの5%)も、海外の化石燃料を買っているうえに、今回の原発の事故で世界的に石油と石炭に対する投機マネーが向かっていて、エネルギーコストが急騰しつつあります。これを押し下げる必要がある。そして地球温暖化問題を考えても化石燃料はやめなきゃいけない。そして、これほど国民の生命・財産を危険にさらしている原子力については、古くて危険な炉から早急に止めていく。それを補うのは省エネルギーと自然エネルギーを全面的にやっていくということしかないですね。

 福島
 そうですね。今、なかなか浜岡も、柏崎刈羽原発が止まらないんですよね。建設途中の上関と大間も建設すべきなんですが、なかなかそこが転換できてないんですよね。

 飯田
 これは基本的には、一義的には政治の責任だと思います。電力会社は事業者ですからとにかく前に進もうとはそれはある意味、事業者の本能で仕方ないんで、自主的に止めるのは無理です。しかしながら、政治には責任があります。まず、現在、福島の事故が進行している以上、現在の安全基準というのは耐震基準も含めて全く無効なわけです。その無効な安全基準の上で動かしているということを認めているのは、これは国の責任です、まず第一に。もう一つは、東京電力の福島の事故を見ると、何兆円にも及ぶ、下手をすると数十兆円に及ぶ損害がこれから生じます。もうすでに生じていますが。今の原子力損害賠償の枠組みも、現時点では全く無効になっています。国が破産してもひょっとしたら払いきれないような、東京電力の破産はもちろんですが、そういう損害が出るような原子力損害賠償のフレームワークも、現時点で無効になっているわけです。この、安全性と損害賠償が無効なのに動かしているのを認めているのは、これは完全に国の無責任、政治の責任です。

 福島
 そうなんですね。つまり、保安院がゴーサインを出して、中越沖地震のあとの耐震設計でゴーサインを出したのが福島原発。浜岡はゴーサインすら保安院は出せないにもかかわらず、最終判断がまだであるにもかかわらず、今動いていると。想定外と彼らは言うが、想定外のことが起きたわけだから、それはもう考え方を変えなくてはいけないんだけど、そうなっていないんですね。

 飯田
 考え方を変える以前に、もう完全に政治的無責任状態ですから、これはもう一義的に政府、及び今の首相の責任です。

 福島
 先ほど、政治家ではない、統括的な全責任を負う人が必要だとおっしゃいました。ただ私はこの間、経済産業省、保安院、原子力安全委員会など、そのほかに東京電力も、あまりに無責任、命を軽視していることに激怒をしています。貞観地震があったと事実を握りつぶしてきたのは保安院であり、斑目原子力安全委員会委員長は東大の教授だったとき、浜岡原子力発電所の裁判で、2007年2月に「非常用電気ディーゼルが全部失われた場合にどうなるか」と言われたときに、「割り切らなければ原発なんて作れませんよ。割り切りが必要です。そんなこと考えてたらできませんよ」と言った人ですし、総理に対して12日、「大丈夫、大丈夫、水素爆発はない。」と言った人なんですね。
ですから、私からみると、電力会社、保安院、経済産業省、そして原子力安全委員会、ここがほんとうに国民の命を守るために体を張ってがんばってるというふうには全く見えないです。ですから、それに適した人間というのは、果たしているのか、と思うんですね。

 飯田
 つまり、いわゆる原子力村と私は言っていますが、これまで個人が後に、組織の中に隠れていて、東電も保安院もみな無責任、個人としては全く責任を取らない構図で、しかも東京電力は事業者だからおまえやれ、と、これは交通事故を起こした加害者に事故の始末も全部やれと言っているのと同じで、それはそれで無理があるわけです。ですから、固有名詞で全責任を負っていただき権限を集中するという体制に組みなおすことが、今直ちに必要だと思います。政治家では絶対無理、政治家では24時間そのことをやることはできませんし。そういう風にトレーニングされてきたわけでもないので。日本海海戦にたとえると東郷平八郎が要るわけです。
 
 それは絶対に必要で、そのうえで今出た話は、短期と中期の間に入る話として、事故調査委員会が絶対必要なわけで、今福島さんがおっしゃっていたような、東京電力及び事業者の責任、保安院及び原子力安全委員会の責任、更には経済産業省がこれまで原子力一辺倒でやってきた政策の責任、これは警察や検察がやる被告人を探す犯人探しではなくて、こういう悲惨な事故を繰り返さない、なおかつ歪んだエネルギー政策を繰り返さない為に、どこに組織的な、あるいは人間的なミスやエラーや問題があったのかということを構造的に洗い出した上で、そして、全く新しい人心を一新した原子力安全規制体制、そして、エネルギー政策の新しい枠組みを建てるための総合的な事故調査委員会、これは全く利害関係のない人で虚心坦懐にやる必要があります。そこでさきほどの斑目さんの話や、保安院の問題、原子力一辺倒の今の政策の問題、あるいはそれを進めてきた自民党・民主党の政治家の問題などもすべて洗い出していく必要があると思っています。

 福島
 おっしゃるとおりですね。それはつまり、刑事処罰の為の事故調査ではなく、何がまずくてどこにどういう判断ミスがあって、何を変えなければならないのかということを検証すべきですよね。でもいまだ、あのベントと言って弁を開けるという、例えばドライベントですと、フィルターがないので、そのまま格納容器の放射性物質が外に出るということをやったわけですよね。これからもやるかもしれない。そのベントの時間ですら、ずっと昔、官邸から出ていたのには、12日の2時半にやったとなってるんですが、それが今、10時15分になったと早まっているんですね。だから私は、政府が出しているそういう公開の報告書ですら時間が変わっていることに、ものすごい捏造じゃないかという危惧を持っています。一つ一つ、今までの流れの、原子力政策、ほとんど60年くらいのこの間の問題と、今回の事故の問題と、やっぱり原子力発電所の、推進をやってきた経済産業省、政府、自民党・民主党の責任は、とりわけ自民党時代が長いわけですから検証しなくちゃいけないと思っています。そして、未来を切り拓いていきたいと。あと、何かおっしゃりたいことありますか。

 飯田
 あとは自然エネルギーをこれからの復興、及び日本経済、震災の後の復興経済の柱とすることが極めて重要で、特に自然エネルギーは他の大型の電源と違って、ものすごく小規模分散なので足が早いんですね。極めて短期間にできて、倍々ゲームで増えていく。今、ちょっと前まで、私は、自然エネルギーは百兆円市場になると言っていたのですが、新しいレポートでは、もう2百兆円になるというレポートが世界中に出ていて、去年はもうすでに20兆円市場です。おそらく2030年には、数百兆円、五、六百兆円を超えて1千兆円に近い、つまり世界のGDPの1割から2割を占める全く新しい経済セクターが、21世紀の最初の30年にいきなり出現しようとしている。しかし日本にはその投資マネーのわずか1%しか来ていない。これまでのエネルギー政策と非常に独占的な・閉鎖的な電力市場のまさに最大の責任で、ここを復興経済としつつも、日本経済がこれから更に再生していく為の梃子になる、というマクロ的にも意味がありますし、地域、地方社会的に見ても、地方で、今光熱費だけで、例えば秋田県を例にとると1千億円くらい光熱費で使っているんですが、それがみな県の外に出て行く、これは秋田県で言うとあきたこまちの売上1千億円とほぼ同じお金が外に出て行って、それを例えば秋田に風車を1,000本作るという話があります。秋田は1,000本どころか、1万本でも10万本でも作るチャンスがありますが、1,000本で1千億円の売上が立つわけです。
 これまでのように東京資本の企業がやっているとそのお金が外に逃げていくので、秋田は秋田の会社、青森は青森の会社がちゃんとお金を出して作ればその売上は地域の中にとどまりますので、地域経済の活性化に極めて有効、なおかつ、これまでの地域の金融機関は地域に投資先がほとんどなかった、ですから、大体、預貸率が6割くらいで、秋田も青森も岩手も大体2兆円くらいのお金は投資先がないので、東京もしくは世界に逃げていた。まさにキャピタルフライトしていたわけですが、そういった巨大事業をどんどんしかも地域資本でやると、地域の中でお金がどんどん回っていきますので、そこで人と雇用と経済が地域に回り始めると。そういうような、これまでの中央集中型の、収奪型経済のなれの果てが今回の福島の事故だとすれば、自然エネルギーは小規模分散型で地域自立型の新しいネットワーク経済を作るという、まさにそこの転換点です。そのための基盤として、これまでの9電力体制の地域独占を抜本的に見直して、発送電を分離して、自然エネルギーの買取を送電会社が率先して行う、そういう電力市場の抜本的見直しもこれからの大きな課題だと思います。

 福島
 送電線の独占も変えなくちゃいけないですよね。

 飯田
 送電線は独占していいんですが、それは今のように電力会社が独占するんじゃなくて、北海道から沖縄まで、例えば「日本送電会社」という唯一の会社で、ここは厳しく独占禁止法のもとで、例えば電力市場監視委員会が監視をする唯一の独占会社で、そのうえに乗っかった、エネルギービジネスとかいろんなところが、かなり自由でしかも自然エネルギーをベースとする非常に開かれた経済を作ると、そういう形にガラッと変わるんですね。

 福島
送電線は国有にしないほうがいいですよね、きっと。

 飯田
 国有でも民営でもいいと思うんですが、ヨーロッパの例なんかを見ると、唯一の民間会社で独占と。だからちょうど今の高速道路会社のような民営会社、国策民営会社になると思いますね。

 福島
 そのかわり、みんなが使える送電線ということですね。

 飯田
 そうです。排他的なビジネスをしてはいけない、かつ、自然エネルギーは最優先するということがだいじですね。

 福島
 そういう社会になるように一緒にがんばっていきましょう。有難うございます。

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