福島みずほのどきどき日記

トーマス・ブリュアーさんとの対談録

【福島みずほ緊急連続対談4】
   トーマス・ブリュアーさん「ドイツの脱原発と自然エネルギーの現状」  (2011年4月13日)

 福島みずほ(以下、福島)
 トーマスさん、今日は本当にどうも有難うございます。今日はグリーンピースドイツ放射線安全アドバイザー、そしてファイナンシャル・アナリストでいらっしゃるトーマス・ブリュアーさんにお話を聞きます。ドイツは今非常に変わりつつあると聞きますが、福島原子力発電所の事故を受けて、ドイツの社会や政治にどんな変化があるかという点を話していただけますか。

 トーマス・ブリュアー(以下、ブリュアー)
 ドイツの社会そのものは長いこと原子力に反対していたのですが、政党については、社会と歩調をかなり早い段階から合わせているところと、そうでないところ、特に保守派は原子力を推進していたというところがあります。ただ、今回の悲しい福島の事故のあと、選挙結果で見る限り、ドイツ人に関しては原子力は受け入れられないということがはっきりしました。また、今回の事故で、原子力発電所を稼動させることのリスクを本当に理解し始めた人が増えてきたのではないかと思います。

 福島
 ドイツは段階的な廃止を早い段階から打ち出していますし、今回、メルケル首相が全面的に停止すると決めたことも大変印象的です。

 ブリュアー
 原子力は使っていかないと早い段階で決定しましたが、これは将来の為の決断だったと思っています。事故のリスクに加えて、再生エネルギー産業を育てていくことが、産業国のドイツにとって、経済成長や雇用の創出や輸出を増やしていくことにつながるということで、原子力よりも再生エネルギー、自然エネルギーのほうに未来、将来があるという考え方が非常に浸透しています。国として、自然エネルギーが産業の中で役割を果たしていくべきだ、という考え方があります。

 福島
 自然エネルギーの促進にドイツはとても熱心ですが、原子力発電をやめてどういうエネルギーで発電可能かのお考えを教えて下さい。

 ブリュアー
 まず最初に、そして最も重要なことですが、基盤となる、支えとなる法律・法制度を作っていかなければいけないと思います。市場を開放する、自由化して競争が起こるようにし、自然エネルギー法を作り、自然エネルギーにプライオリティを与えることが必要でしょう。その後に、自然エネルギーの発電能力を高めていく設備に対する投資拡大が必要になってくると思います。このような新しい発電設備に投資をしていくことが革新的なプロセスを開始させることになると思います。
 ドイツの場合、自然エネルギーの需要のほとんどは風力や太陽光で賄われています。今後これから地熱発電やバイオエネルギーが考えられますが、バイオエネルギーに関しては食品として使うこととエネルギーとして使うことが競合してしまうので慎重に考えなければいけない点があります。あと水力も可能性があります。
 日本について言えば、おそらく大きな貢献ができるのは太陽光発電ではないかと思います。特に南の方ではそうでしょう。それから集中的に太陽熱を利用していくやり方とか、地熱発電、風力発電も可能性があると思います。ただ風力についてはドイツほどではないと思いますが。いずれにしても、ドイツ、日本それぞれに自然エネルギーについては十分なポテンシャルがあると思っています。

 福島
 日本で自然エネルギーでやるべきだと言うと、原子力発電をやめたら需要を賄えない、と言う人が非常に多く、本当に残念です。ドイツでは最近、自然エネルギー100%が可能だという報告書が出たと聞いておりますが、それについて話していただけますか。

 ブリュアー
 グリーンピースがドイツ向けに出したレポートがありまして、その中でも2050年までに100%自然エネルギーが可能だといっています。自然エネルギーを使うということには別のアドバンテージもありまして、国としてエネルギー自給率を高めることができます。現在ドイツはエネルギー資源を輸入に頼っていますが、自然エネルギーを使っていくことで、より輸入に頼らず、自立していくことが可能になります。
 そして、原子力がないとたちゆかなくなるというのはこれは嘘です。というのはドイツではすでにずっとそういう論調で来ています。福島の事故のあと、8つの原子炉が閉鎖されました。この8つは国内の原子力発電所の能力の半分に相当するのですが、この8つの原子炉が止まっても何も起こっていません。ですので、エネルギーは十分ありますので、原子力がなくては需要を満たせないというのはこれは正しくありません。ドイツでは25%を原子力で賄っていますし、日本は33%と聞いていますが、自然エネルギーで十分賄っていけると思います。

 福島
 日本では、福島の原子力発電所事故のあと、残念ながら停止した原発はありません。ですから、ドイツの方が反応が早かった。日本は地震列島で、地震の起きる可能性がとても高くなっています。ですから社民党は、新規の原発はもう絶対に作らない、古いもの・老朽化したものは順次廃炉にし、危険な原子力発電所、とりわけ、浜岡原子力発電所や柏崎刈羽原子力発電所は止めるようにということを強く主張しています。柏崎刈羽は今動いているのは200万キロワット少々だけだときいています。むしろドイツでのデモや、原子力発電反対のムーブメントにしっかり学んで、福島の教訓を日本でこそ活かしたいと思っています。

 ブリュアー
 おっしゃるとおりだと思います。なるべくリスクの高いもの、地震のリスクや古いということでリスクの高いものから停止させるというのは良いアプローチだと思います。また、一般的に原子力発電所というものは非常に危険なものなのですが、特に日本は地震が多く、非常に強力な地震も可能性としてありますので、その意味からすると、日本は地球上で原子力発電所を建てる最悪の場所だといえるかもしれません。

 福島
 そうですね。日本は4つのプレートが重なっているところに位置していて、非常に地震の多いところです。ですから日本のどこに建てても、原子力発電所は危険だと思っています。
改めて、福島の原子力発電所をドイツからごらんになっていかがですか。レベルははじめ4と言っていたのですが、3月18日にレベル5に上がって、4月12日にレベル7に上がりました。5から7に突然上がったことと、保安院や原子力安全委員会や官邸がレベル7だということを3月末にはわかっていたということを聞いて、私はとても怒っています。
 要するに政府が、言葉は悪いですが国民をだましていた。今回の事故をできるだけ過小評価したい、ですからそれが、4から5になったが7をなかなか認めなかった理由だと思っています。今も進行形で起きている原子力発電所の事故の、問題点と被害が今も続いていることに本当に心を痛めています。ドイツから見て今回の福島の事故をどう受け止めていらっしゃるかを最後に話してください。

 ブリュアー
 グリーンピースとしては3週間前にいろいろ計算して、INESという国際評価尺度ではレベル7に相当するという結論を出していたのです。おそらくこういったことは伝わっていたのではないかと思いますし(福島:知っていました)、グリーンピースのそういった見方が正しかったかどうかもきちんと調べようと思えば調べられたのではないかと思います。ここで今回、グリーンピースが正しかったのが証明されたことになりますが。
 2点目としては、実際に福島に行ってみての感触なのですが、地域住民の方のためにとられている措置があまりにも少ないことに驚きました。チェルノブイリの事故があった当時を思い起こしてみると、ドイツでは、学校の校庭とか運動場、こういったところはきちんとチェックをして大丈夫ということが確認取れないと遊ばせないとか、或いは畑でとれた野菜などはサラダとして食べてはいけないということが言われたり、或いは、東のほうからドイツに入ってくる車についてはきちんと検査をして、必要であれば洗浄するというような措置がとられていました。
 こういうことが現在、福島で全くなされていません。そこから考えると、実際にその地域に住んでいらっしゃる方はまだいらっしゃいますし、今後、五年後、十年後、数十年後に健康に問題が生じるかもしれないと考えると、非常に地域住民にたいして無責任な対応ではないかと思っています。全く十分な措置がとられていません。

 福島
 日本も福島の事故から学んで、原発を国策として推進してきたことをしっかり変えて、失敗からきちんと学びたいと思っています。ドイツにも学んで、原子力発電という時代遅れの、そして廃棄物処理が全くできないものではなく、自然エネルギーで雇用を作って、命をだいじにするような政治をしっかりやって生きたいと思います。どうかドイツからも応援して下さい。有難うございます。

 当日、衆議院議員会館で行われた勉強会「ドイツ政府の原子力政策の現状と今後について」(日時: 2011年4月13日(水)12時~13時)で配布された資料のプレゼンテーション資料は以下でご覧いただけます。
 
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/presentation_tokio_JPNn.pdf

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