福島みずほのどきどき日記

只野靖さん「浜岡原発は止めても大丈夫」対談録

福島
今日はどうもありがとうございます。只野さんは弁護士で、浜岡原発訴訟の代理人なので、今まで裁判の中で原発がどう争われてきたか、あるいは何が裁判の争点として争われてきたかについてお聞きしたいと思っています。

只野
私は10年間浜岡原発訴訟を担当してきましたが、それ以前の原発の裁判と浜岡以後と大きく違うと思います。というのは、原発ができた当初から、原発に反対する裁判はたくさんあり、一部もんじゅでも争点になりましたが、地震を大きな争点にした裁判は浜岡が初めてです。
そのきっかけとなったのは、1997年に石橋克彦神戸大学名誉教授が唱えられた「原発震災」という概念だと思います。原発震災を今更説明するまでもありませんが、大地震が起きた時にそれだけでも大変なのに、原発が事故を起こすと非常に多くの方が苦労する、被曝する、しかも助けにも行けないということが言われていました。1997年に先生は「原発震災」を指摘し、起こる可能性が高いのは浜岡だと、浜岡原子力発電所は何としても止めてほしいとおっしゃって、それを受けた裁判を担当してきました。

福島
私も石橋克彦先生の兵庫県のご実家に行き、いろいろ地震の問題を教えて頂いたことがあります。4月1日に浜岡原子力発電所を止めてくれと申し入れに行きましたが、そのときにもらったパンフレットに原発は地震になったら自動停止します、と書いてあります。パンフレットはそこで終わっているんですが、仮に制御棒がしっかり入れば停止しますが、そもそも地震で横揺れ縦揺れが激しければ制御棒そのものがうまく入らないということがまず問題ですよね。

只野
おっしゃるとおりです。原発の安全性を示すのによく使われる言葉が、止める・冷やす・閉じ込める、と、これはもうさんざんテレビなどで言われています。(対策は)その3つに本当に収斂されます。福島の場合は、幸いにして止めることには成功しました。ところが、我々は浜岡の場合にはこれは止めることができないんじゃないかという危惧を持っています。理由は、福島の地震の場合は震源がものすごく遠く、深いんです。
最初の縦波が来て、そして横波が来るまでの間、時間差がある、最初の縦波を感知して制御棒が入ればこれは止めることができます。ところが、浜岡原発の場合は、福島原発を襲った地震に比べると、ものすごく近いところに震源域があります。これは地震学者共通の見解となっていると思います。そしてものすごく浅い。結局、浜岡原発は東海地震の想定震源域の直上にあって、震源域の深さが15キロなんですね。こんな危険なところはありません。最初の一撃でやられてしまい、止めることができないんじゃないかと非常に危惧しています。

福島
4月1日に浜岡原子力発電所に行き、中部電力側からもらったレジュメにも、ここは100年から150年の間、マグニチュード8の地震の発生地として知られていますと書いてあります。東海・東南海・南海の三連動、二連動が起きる可能性があることはちゃんと書いてあります。でも安全との主張が私たちと見解が違うんですが。裁判ではどんなことが争われてきたかを話していただけますか。

只野
裁判での大きな争点としては、どの規模の地震が来るのかということです。彼らの言い分では、150年に1回の地震が来ることは認めています。これは地震学者共通の見解です。日本政府も認めています。ところがその規模ですが、1854年の安政東海地震がマックスなんだと言っている。ただ、現在と違い、1854年というのは地震計ももちろんありませんし、よって立つところが当時どの程度の墓石が壊れたとか、土蔵が壊れたとかの古文書を解きおこして、どの程度の揺れがあったかということなんです。地震学はすさまじい勢いで進歩しており、今ではかなりいろんなことがわかっています。1854年がマックスだという証拠は何もないんですね。もっと大きな地震が来る可能性があることが分かっている。しかし、中部電力は1854年がマックスだと主張し、裁判所もそれを追認してしまった。要するに、むやみに大きい地震を想定するのはおかしいと、適当でないというような主張で負かされてしまったんですが。

福島
マグニチュード8が定期的に起きるということは認めています。マグニチュード8でも相当大きいと思うんですけどね。

只野
福島はマグニチュード9とされていますので、大きさだけを比べれば今回の地震の方が大きいんですが、問題はマグニチュードの大小もさることながら、地上の構造物に与える地震の波がどれだけ大きいかということです。地震の波の大きさを決めるのは、マグニチュードの大きさももちろん影響しますが、やはり震源からの距離です。福島の地震は九州では今回はあまり伝わらない、というそういう物理的距離と、深さの点が非常に重要で、裁判所が言うような、むやみに大きな地震を想定すべきでないということは、今回完全に科学的根拠がないことが明らかになったと思います。
福島
もう一つの争点、たとえば私が今回(予算委員会で)質問しましたが、非常用電気ディーゼルが2つとも失われる場合についてどうか、当時東大教授であった斑目さんは今は原子力安全委員長ですが、中部電力側の証人として2007年の法廷に呼ばれた時に、「割り切らなければ原発はできない。それは割り切るんですよ」と言っていますからね。だから、非常用電源が失われた場合にどうなるかということは既に議論になってるんですよね。

只野
今ご指摘の点は、当時、止める・冷やす・閉じ込める、の二番目の冷やす、という部分です。原発は1/3だけは電気の熱で使いますが、残り2/3は常時ものすごい熱量を海に捨てているわけですね。ところが電気がないとそれを冷やせません。結局冷やすためのもとは海の水ですので、海水をぐるぐる循環させて冷やしている、そのポンプが止まれば冷やせなくなる、これはもう原発を作った当初から弱点だと言われていたことですね。我々としては、津波や地震の想定もさることながら、原因はともかく、その電気が全部失われることを想定しないといけないんじゃないか、原因は地震でも津波だけでなく、他の原因もある。たとえば泊原発では、地震も津波も何もないのに、実際機械が故障をおこして非常用ディーゼルが2機とも動かなかった事例があります。
非常用ディーゼルだけに頼らずに、多様な電源を確保すべきじゃないかということも主張しました。しかし当時東大教授の斑目さんの証言によって、それを裁判所が受け容れてしまい、国が定めた基準だから安全だというところから一歩も出ないままにしてしまった。きわめて想像力のない判決だと思います。

福島
ほかにはどういう点が争われたんですか。

只野
大きく2点です。それから、やはり老朽化も一つのポイントでした。古い原発は止めろとずっと言い続けてきました。

福島
たしかに今回、もと東芝の技術者の後藤政志さんが1、2、3、4と古い順番から傷んでいったということをおっしゃっていましたね。
只野
そうですね。たまたま福島第一には6基あって、地震当時動いていたのは、1・2・3だけで、4・5・6は定期検査中で停止していました。浜岡でも、今5基動いています。裁判の途中、裁判の一審判決までは全部動いていたんですが、裁判のあと、中部電力は耐震基準が変わったこともあり、1号機と2号機は自主的に廃炉にすることを発表しました。それはやはり、新しくできた耐震基準に従って補強する場合、ものすごくお金もかかるということも言っていますが、一方では、長らく使ってきたもので、応力腐食割れはじめ老朽化現象が多々出て来て、想定した地震に耐えられないかもしれないと危惧したと思います。今回福島で起こったものは、第一の1・2・3の順番に古いわけですが、古い順番に止めていればこういった災害は未然に防げたのではないかと思うと、非常に痛恨の極みです。

福島
敦賀が41年ですし、30年から40年経っている原発もかなりありますよね。だから、古い順からしっかり止めないと、老朽化でいろいろガタが来ていると言えますよね。

只野
ただちに原子力発電所を全部今日から止めるというのは、確かになかなか難しいかもしれません。ただ、誰もが認めるような基準を作り、老朽化した原発を着実に止め、新規建設をやめて、再生可能エネルギーにシフトしていくことが今一番議論されるべきで、想定東海地震の直上にある浜岡原発は誰が見ても危ないのですから、これはすぐ止めるべきです。それから、日本各地の古い順番から手当てをして止めていくべきだと強く思います。

福島
日本にはいま54基原発がありますが、月曜日に質問するので聞いたら、動いているのは22基です。定期検診などがあって、案外動いていません。それから、電力容量。夏のピーク時よりはるかに上に電力容量を設けているので、実は供給量と容量の間にずいぶん差があって、原発を止めても実は困らないというところがほとんどですし、大丈夫だと思います。
それからもう一つ、浜岡原子力発電所についていえば、一つは、直下型地震が起きる可能性があるんですが、更に津波対策が全くだめなんですね。

只野
中部電力が津波対策と言っているのは、前の砂丘です。

福島
(4月1日に)見に行きました。小さな砂丘なんですね。鳥取砂丘のようなのではなくて、ほんとに子どもの時行ったような砂浜、それが堤防だと言って、そんなばかな、と思いました。これからボーリングをして12メートルの塀を立てると言っているんですが、100メートルの塀でもなく、今の時点で砂浜しかないんですから、それを堤防だと言いくるめることはできず、だとしたら、津波対策もダメなんですよね。

只野
岩手県も大きな堤防がありましたが、津波の威力はすごいというのがあれで実感できるんじゃないでしょうか。あれを見て、砂浜が耐えられるとはとても思えないですね。

福島
とても思えないですね。それともう一つ、福島原子力発電所は一応、保安院はゴーサインを出した、しかし、浜岡原子力発電所の耐震設計は、中間は出たけれど、最終的な決定は出ていません。

只野
おっしゃる通りです。耐震設計指針が変更され、それに対応して電力事業者は次々に報告書を出しています。場合によっては補強して。それが一次的には保安院で承認され、最終的には原子力安全委員会で承認されます。現に最終承認されている原発もたくさんあります。浜岡原発はそれが全然できていない。なので、すぐ止めてほしいということです。少なくとも安全性が確認されていない、今の耐震基準にのっとっていないという意味ではそれが通るまで止めろ、とか、百歩譲って、中部電力が津波対策をすると言っているわけですから、じゃ、その津波対策ができるまで止めろ、という迫り方もあってもいいかもしれません。

福島
津波対策などにお金を使う、お金をつぎ込んで安全性を高める努力もぎりぎりやってほしいですが、それ以上に原発は安全ではないので、きっぱりやめた方が中部電力の経営のためにもいいのではないかと思います。

只野
おっしゃる通りです。 電力について、原発を止めると電気が不足するのではとおっしゃる方がいらっしゃいます。確かに耳に聞こえがいいのですが、しかし先ほど福島さんがご指摘されたように、実際には足りるということを資料を見てちゃんと勉強して頂きたいと思います。
2002年9月に老朽化、ひび割れを隠していた問題がありました。当時、東京電力管内の発電所はすべて止まりました。柏崎7基、福島第一・第二すべて止まりましたし、中部電力もあのとき、隠していたことがすぐわかって5基全部止まりました。9月で夏の(電力需要)ピークではないかもしれませんが、全部止まりました。しかし、停電は起きませんでした。ですから、2002年の経験を踏まえて、省電力、自分たちの暮らし方を見直して、この夏原発は動かないという前提で暮らすしかないので、原発がなくても何とかなるんだということを、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

福島
資源エネルギー庁から(どのようにエネルギー需要を賄うか)揚水力などの(案が)出てきています。東電自身の総合容量もすごく高いですから、私たちも電気を節約できるところはやり、絶対に原発を止めても大丈夫だと思います。
ところで最後に、只野弁護士は原発裁判にずっと関わられてこられましたが、今回福島原子力発電所の事故、その後の動きなどを見て感想があればおっしゃって下さい。

只野
私は先週の日曜日にいわき市に参りました。第一原発から30キロのところでした。津波被害を目の当たりにして非常につらい思いをしました。しかし津波被害だけでしたら、それでも大変な苦労ですが、何とか回復できるかもしれない。私は出身が宮城なので、今回非常につらい思いをしています。しかし、原発はもう全然質的に違うものですね。もう皆さん、どことなくぴりぴりされているし、本当にここにとどまっていていいんだろうか、特に小さいお子さんのいるお母さん達が学校の校庭で遊ばせちゃいけないなどと言われて、これは安全なのかということです。
事故に関して一言言いたいのは、情報の開示を徹底してほしい。もういろんなシミュレーションがあるわけですから、そういった情報を開示して、国民はそれほどばかじゃありません、みな自分で考えて自分で行動するわけですよね。無用な被曝を今回与えている。そういう事態を避ける時間はあった。今回、止める・冷やす・閉じ込める、の止めるはできたので、数日の単位で時間はあったのに、それを全く無駄にしてしまい、無用の被曝を防げなかった。これからでも遅くないので、政府には情報の開示を徹底してもらって、これ以上の被曝をさせないようにしてほしいと思います。

福島
福島の原子力発電所の問題から、私たちは過去の裁判で争われたことを思い出して、議論されていたじゃないかと。ある意味、裁判所もそれを見抜いたり、毅然と判決を出したところもあって、もんじゅは高裁で今回止めるとなったり、志賀原子力発電所もあまりにずさんだったから、一審では止めろとなっていますよね。しかし、多くの裁判所の判決が、たくさん論点が出て非常に論争されていたにもかかわらず、認めた。だから、一つは、保安院や経済産業省、原子力安全委員会の安全が全く無力になったということと、裁判所の判断も無力だったということで、根本的な見直しをすべき。原発は安全じゃないというところから、政策の見直し、政策の転換をすべきだと思っています。
浜岡を一緒に止められるように頑張りましょう。 有難うございます。


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