福島みずほのどきどき日記

日隅一雄さん「東電記者会見を斬る」対談録

 福島
 日隅弁護士、今日はどうもありがとうございます。
今回の福島原発の事故についてどう思っていらっしゃるか、また、日隅弁護士は東電の記者会見にずーーーっと出ていらっしゃるということで、そこから浮かび上がってくる問題点などを今日はおうかがいしたいと思っております。よろしくお願いします。
今回の福島第一原発の事故、どう見ていらっしゃいますか。

 日隅
 東電原発事故、ですね。

 福島
 わかりました。東電原発事故、についてどう思っていらっしゃいますか。

 日隅
 東電原発事故で一番の問題だと思いますのは、チェックがきかなかった、つまり、事故が起きる前からメディアがきちんと問題をチェックしていれば今回のようなことは起きずに済んだんじゃないかと思っています。その思いを、記者会見に出ることによって深く持つようになりました。

 福島
 そこをもう少し話していただけますか。

 日隅
 今回の東電の情報、いろいろ開示しますが、わざわざ遅れて出したりきちんと出してきません。
 
 福島
 例えば、建屋間の放射線量がとても高いと、私は官邸などから聞いていましたが、3月にそれを持っていたのに、出てきたのが今日4月25日ですからね。ふざけるんじゃない、と思いますね。

 日隅
 当初から記者は線量マップを出せと言い続けてきましたが、それをずっと無視して調整していますと言ってきました。それから、いったん発表したものの内容を訂正したり、あるいは矛盾があったり。普通、そういうことがあると怒るじゃないですか、記者は。きちんとした情報を取るのが仕事ですから。ところが、食肉偽装のときなどと全く対応が違って、丁寧な対応です。

 福島
 明らかにされてないことが多く、私は中越沖地震の時にも思ったことですが、モニタリングポイントが全部停電になって、肝腎なことが出てこない。それは停電になったときにわかるようにしなくちゃいけないのに、全然学んでないし、それからもう一つは社長がベントや海水注入をいつOKと言ったのか、それが出てきていない。社民党はもともと東電のシュラウド、ひび割れの件で、私の記憶では当時勝俣さんに来てもらって、社民党が東電に公開質問状を出して交渉したことがあります。今までの一ヶ月ちょっとは事故のために全力を尽くしてもらうということでしたが、これからはきちんと公開質問状も出して論戦していかないと事実が出てこないと思います。

 日隅
 まさにそうなんですね。その点は、問題を解決するよりもむしろ重要だと思います。さきほど話に出た工程表も、きちんとした裏付けが全く出ていなくて、工程表のどの部分が実現可能か、どの部分が実現不可能なのかが明らかになっていない。そうすると本当にきちんと修復できるのかどうかも今の段階では分からない。責任問題もありますが、その前にこの問題を解決できるのかどうかという意味でもきちんと情報を開示してもらわないとそれがチェックできないという状態です。にもかかわらず、メディアがそのへんをきちんと書かない。最近はようやく、きちんと情報を出してないぞということを叩くようにはなりましたが、当初はやっていない。端的に東電がビッグスポンサーだということが一番大きいんじゃないかと思っています。そこを乗り越えてメディアが書かない限りは実態が明らかにならないと思っています。

 福島
 政府の対応も政府の対応ですが、東電の対応も東電の対応で、私はやはり、海水を意図的に流したことが問題だと思います。海水注入時点で海水の処理はどうなるのだろうと思っていた、そして海に意図的に流した、今は意図的にでなくても流れ続けている。とんでもないですよね。

 日隅
 あれも当初から、こういう漏れに対応するタンクなどを用意する必要があるのではないかということを、かなり早い段階から記者は聞いているわけです。特にフリーの記者を中心に聞き続けていました。
ところが、大丈夫、大丈夫と言いながら、漏らしちゃったわけですね。

 福島
 あれ、わざとですよね。

 日隅
 結局、第三者的に見れば、自分たちの失態を取り繕うために漏らした。しかも本来はタンクとして足りない部分を漏らせば良かっただけなのにもかかわらず、5、6号機の地下水も汚染されているという話を急に持ち出して、そちらも漏らした。その漏らすという行為をどうも正当化してるようにしか、第三者的には見えないですね。

 福島
 これは国際問題にもなりますし、一つ一つについてしっかり検証する必要がありますね。とにかく今の段階では、情報開示をできるだけやっていく。それが今も続いている原発事故に対する私たちのすごい責任だと思いますね。
 あと、直接記者会見に出ていらして、問題点について教えて下さい。

 日隅
 情報開示の点で一番わかりやすいのは、たとえば積極的に放水した低濃度の部分、これについてはこの位の放射性物質を流しました、それによる健康被害は起きません、魚を一年間食べてもこれくらいの影響しかありませんということを言ったんです。
 ところが、意図的ではなくて漏れてしまった高濃度の部分は、全体の量は発表したんですが、それによる影響はどれくらいあるんですかと聞いたら、それは答えないんです。ですから、都合の悪いことは答えない。自分たちにとって都合のいい情報は出す。こういう状況が今でも続いているわけです。今はインターネットなどで記者会見を全部見ることができますから、それを見て頭にくるというか、これは情報を十分開示してないんじゃないかと思ったら、一つは東電、もう一つは官邸、もう一つは記者、つまり新聞社に対して、ああいう追及の仕方じゃ生ぬるいということをきちんと伝えてほしいんですね。現場の記者さんはきちんとやりたいと思っているでしょう。ですが、やっぱりビッグスポンサーですから上から何がしかの影響で本来自分たちがやりたいと思っている取材ができずに、歯がゆく思っているはずですから、その人たちに読者がきちんと働きかけて記者を思う存分働かせることによって、国民がきちんと情報を得ることができるんじゃないかと思います。

 福島
 他に、東電についてここはおかしいということはありますか。

 日隅
 東電についてやはりおかしいのは、今回問題となっている補償のスキームですよね。つまり、東電を生き残らせることを前提に全てが動いている。これはやはりおかしいと思うんですね。銀行などが20兆つぎ込んでいるということもあって生き残らせようとしているようですが、本来は東電でまず全部責任をとったうえで、足りないところを国が払うべきなのに、国が先に払っちゃうんですね。

 福島
 おかしいですよね。第一義的責任は東電にあるわけだから、結局国民は電気料金という形であるいは税金という形で尻拭いをさせられてしまう。それはおかしいです。東電もそれ以外の電力会社もそうですが、いろいろな裁判を抱え、こういう問題があるではないかと裁判の中で、国会の中で、厳しく追及を受けてきても大丈夫だと言ってきたわけで、それはきちっと責任を果たすべきです。どこの民間会社が例えば何か問題を起こしてどうして国が先にお金を払ってくれるんですか。中小企業だったら真っ先に倒産しておしまいですよね。東電は総資産が13兆円と、予算委員会で社長が答えました。実はもっとあるのではないかという人もいるのですが、社長自身が答えたのはそれで、最低それだけはあるのです。送電線は、今は発電・送配電が全部一緒ですが、それを分離して、自然エネルギー促進がそうすればできると。今は、関東では東電、東北は東北電力、などとどこも地域の独占ですから、どこの電力会社も誰に遠慮がいるものか、というそういう世界ですよね。

 日隅
 そうですね。だからこそ東電は、やはり何がしか傲慢なところが感じられますね。会見などに行っても、ほんとに申し訳ないとこの人たちは思っているんだろうかという印象を受けてしまいますね、経営陣からも。

 福島
 それはその地域でもうナンバーワン、オンリーワンで競争相手がなくて、そして原子力発電所にお金をつぎ込み、不合理だと思うようなことをやっていたとしても、誰からも文句言われず、電気料金に加算ができるわけですからね。で、計画停電になったらお前達困るだろうと、そういうものすごい上から目線を感じますね。
なぜ自然エネルギーが1%かというと、国会で十数年前、ちょうど1999年、ドイツが自然エネルギー促進法を作ったとき、同じようなものを国会に出したのです。しかしそれは、当時自民党も民主党も賛成してくれず、経済産業省のRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)が通るんですよ。RPS法はある意味、自然エネルギーを促進させない為の法律のようなものですから、もし日本が十数年前、ドイツと同じような固定価格買取制度の自然エネルギー促進法を作ったら様相はずっと変わっているんですよね。
 それともう一つ、東電もどの電力会社も、本気で自然エネルギーを促進しようと思わなかった。原発は国策として促進するわけでもう一体となっているから、原発を動かした方が楽チン、というそういう感じはないでしょうか。だから自然エネルギーは今までは電力ミックスと言ってたけれど自然エネルギーは1%で、ドイツ・デンマーク・スウェーデンなどヨーロッパの多くの国がものすごく自然エネルギーを促進して雇用を作ろうというのとは全然様相が違うんですね。

 日隅
 きくところによると、3月11日の午前中に閣議決定をしたと。

 福島
 新しい自然エネルギー法案ですね。だから、自然エネルギー促進法をきちんと作ることと、固定価格買取制度をきちっと作ることと、もう一つは、原発依存をやめてそこにつぎ込んできたお金を自然エネルギーのテイクオフ、産業育成のために使うということですよね。
あと、弁護士でずっと東電の記者会見に出ていらしたというのはすごいことですが、他にいろいろ教えて下さい。

 日隅
 何度も言いますけれど、今の東電の問題というのは、積極的に情報を開示する姿勢が全くないことです。そこを変えないといけない。わかりやすい例で言うと、外国からどういう援助を得ていますか、と聞くと、これはもう何度も聞いたのですが、30くらいの援助を有償無償で受けていますという。それをリストにあげてくださいと言うと、全然出しません。これはなぜなのか。もう一つは例えばロボット。ロボットをオペレートするに当たって、今回もアメリカのロボットを入れたのですが、アメリカのスタッフに直接操作させればすむことなんですが、2週間かけて東電の下請けの人に学ばせたうえでロボットを操作しているんです。要は、外国の人とか第三者を現場に入れたくない、外国の人と日本がどういうやり取りをしているかを知られたくない、多分そういうことなんだと思うんです。

 福島
 でも今は非常事態で、そういうことを言ってる間に事態は進行するんですよね。

 日隅
 東電が考えていることは事態を速やかに収拾することよりも、自分達が何をしているかが外に漏れるのを防ぐということに力点を置いているとしか思えない対応なんです。ほんとうはそうじゃないのかもしれないけれど、少なくとも我々に対する情報の出し方を見ていると、そういうふうにしか思えない状況です。そこは速やかに改善して、それは統合本部があるんですから、官邸の方からきちんと指導して、情報を出せというべきだと思います。変な話ですが、外国からどれだけの援助を受けているかということを、我々国民が知らないということは、その国の人とどこかで話をしたときに有難うも言えないわけですから、本当に失礼な話なんですが。

 福島
 何が進行しているのかわからないというのは本当に変な話ですね。

 日隅
 ですが、それはよりわからないようにしているとしか思えない。

 福島
 線量マップについても、建屋のところの放射線量が高くて作業に手間取っている、大変だ、という話は聞こえてきました。ところがマップが出たのは25日で、本当にひどいと思っています。そういう健康に関すること、命に関すること、働いている人たちだってそれは明らかになって居ないわけですから本当にひどい。一貫して、命をだいじにするという観点にはなっていないということです。

 日隅
 言われるとおりです。例えばこんなことがありました。放射線管理員をつけなければいけないのですが、記者会見で東電は一度、緊急事態だから放射線管理員を外して作業しますということを言いました。私はそれを聞いてびっくりして、それは内規違反じゃないですか、政府から内規を外してでもやれという指導が出た、と聞いたのですが、次の会見で、あれは間違いでした、そんなことはありません、ちゃんとつけてあります、と。それくらいなんですね、健康とか生命に対する配慮は。作業員に対してそれが向かっているだけでなくて、おそらく周辺の住民にも、我々国民全体に対する意識も、態度に表れていると思います。

 福島
 私も厚生労働委員会で作業員のみなさん達の労働条件や、放射線の計量器がついていなければ結局あとで労災や、万が一白血病になったときに裁判で争えないじゃないかと質問したんですが、一事が万事、働く人間に計量器すら持っていない人がいたという、作業員だけでなくて、住民、国民に対する、海に流してしまうというのも、あれはやっぱりタンカーに入れなかったのは、タンカーに入れるとそのタンカーが使えなくなってしまったり、目に見えるじゃないですか。流してしまえばわからない。でも、これはずっと電力会社が言ってきたことで、六ヶ所の中でも長くやっていて、これはどうなるのかという質問にも、海に流せば希釈されますから、というんですね。その感覚で実は事故前、事故後もやっているんじゃないか、誰が何のせいかよくわからないみたいな。

 日隅
 でもそれは海外から見ると異常なことで、今回の流出は1回目でしたけれど、今後、2回目に、積極的でも仕方なくでも漏らすことがあれば、海外から日本は海洋テロ国家だとレッテルを貼られてしまうのではないかという心配すらあると思うんです。

 福島
 先日、茨城県知事が、ベントする前には教えてくれればよかったと言っていて、そうすればビニールハウスなどを閉めるとか。いつベントをするかなど一切言ってないんですよね。意図的に流すのも事前に言っていないし、ものすごい秘密主義、せめてそれは言うべきですね。国会でも説明がないですし、各政党に対する説明もないです。

 日隅
 アメリカには事前に言ったみたいですけどね。

 福島
 健康ということでは、社民党は15日以降、20キロ、30キロの自宅退避はやめて、きちんと国が責任もって避難させるべき、とりわけ、子どもと妊婦さんはするべき、とずっと言ってきました。今の時点で健康に対する配慮について、東電を見ていてどうですか。

 日隅
 それは本当に配慮が欠けていて、先ほど言ったこともそうですし、これは東電だけの問題では実はなくて、保安院、それから原子力安全委員会もそうですね。私は最近原子力安全委員会の会見にも出てみたいのですが、全く当事者意識がなくて、今回、校庭での限度値を年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトにあげましたけれども、それについても、それだと他国の作業員と、原子力の作業員と同じじゃないですか、不安が高まっていますよ、外国からも批判されますよ、と言ったのですが、それについて積極的にわかりやすい説明をしようとするところが全くなくて、単に国際基準ですから、という説明をするだけなんです。

 福島
 子どもについても、20ミリシーベルトについて厚生労働委員会で質問したら、原子力安全委員が出てきて、子どもは大人と違うように考えなくてはならないというのは理解できる、と言ったにもかかわらず、20ミリシーベルトですからね。私は文科省についても頭にくるし、原子力安全委員会についても頭にくるし、結局、3.11事故以降、基準値をひたすら緩めています。そしたら基準値って何、となってしまいます。
また少し話が戻って、東京電力が第一義的に責任を負わなければならない。どこの世界で自分のところが国民に被害を与え、それを尻拭いしてくれるのかと。原発は危険性があってこういうことが起こると、裁判でも国会でも散々言われてきたわけだから、自分達で責任をとるべきだと思いますね。

 日隅
 本当にそう思います。

 福島
 でも原子力賠償法以前に私も見たり、JCOの時など国会で質問をしたりしましたが、責任は実は負えないですね。つまり、たとえようのない被害が起きるので、実は被害責任を負えることなどできないんですね。

 日隅
 あの制度・仕組み自体も納得いかないですね。東電の責任について言いますと、清水社長が会見でどういう形で東電が責任を取っていくんですかと聞かれたときに、東電だけでは責任は取れるレベルを超えています、ですので国の枠組みが決まるまで東電としての姿勢を決めることができないと、こういう説明をしたのです。あきれてものが言えませんでした。まず東電として何ができるのかを明らかにするのではなく、国にもう完全に任せている。その一方で問題は、事故の解決に当たっては、国の積極的な支援を得ていない、隠して東電の中だけでやろうとしている、これは全く矛盾しています。まさに今、解決しようとしているその事故については、少々、予算を、税金を突っ込んでもいいから解決して欲しいわけです、我々としては。
ところがそこは、タンカーなどでもまず東電だけで手配してやり繰りしているような状況で、国が積極的に関与していない。これから先、水がどんどん漏れている、その高濃度の汚染水をどこかに保管しなきゃならない、するとその保管場所は当然コンクリートなどできちんと防護しないとならない、そうすると今からやらないと間に合わない。にもかかわらず、それをやっていない。そういうところにこそ、国はお金を使うべきであって、補償の部分はまず東電がすればいいのです。それが逆になっているのが納得いかないですね。

 福島
 おっしゃるとおりです。有名な話で、水素爆発の12日の官邸への報告が1時間遅れるわけですが、東電は情報を非常に隠して表に出さない。国民にも官邸にも守りの姿勢、保安院も東電も原子力安全委員会も。にもかかわらず、補償となると国のスキームと言われるとこれはひどいと思いますね。

 日隅
 そこは本当に腹立たしいですね。

 福島
 結局、国民が電気料金や税金という形で払うわけで、それは一企業として責任を果たすべきだし、こういう問題を起こして政策を変えるとすれば、発電と送配電を分けるとか。結局、電力会社に原子力発電所の件で今まで交渉に行っても、地域でオンリーワンでこわいものなどないんですね。

 日隅
 今もうすでに東電は深夜のお詫び広告などを出して、変な話ですがお金をメディアにばらまき始めているわけで、こういうことが許されるのもオンリーワンだからで、選択肢があればメディアもそこからのCMを断ることができるのですが、あれだけの大きな会社ですからどうしてもそこからのお金を受け取らざるを得ない、そしてまた借りができてしまう。

 福島
 でもその多額のCMをやるくらいなら補償にあてるべきですね。

 日隅
 福島の人はそう思っていると思いますよ。

 福島
 多額のCM料を自分達の農漁業への補償にこそくれと思うと思います。その辺が全然違いますよね。自分達の延命のためのCMじゃないですか。こういう構造を本当に変えて、安心できる未来を一緒に造って行きたいと思います。まだ東電や記者会見などウォッチし、情報開示なども全力でやっていきます。今日はどうも有難うございました。

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