福島みずほのどきどき日記

広河隆一さん「子どもの健康と未来を最優先に」対談録

 福島
 広河隆一さん、こんにちは。
 「DAYS JAPAN」の編集長でフォトグラファー、ジャーナリストの広河隆一さんです。
 わたしも「DAYS JAPAN」を購読しています。素晴らしい雑誌なので、ぜひよろしくお願いします。
 ところで今日4月26日はチェルノブイリで事故があってまさしく25年目です。チェルノブイリとそして福島を考える、あるいはまさに福島原発震災とどう向き合うか、命をどうするか、なんですが、広河隆一さんはチェルノブイリに40回くらい行かれたんですか?

 広河
 50回です。

 福島
 すみません。50回も出かけられたということで、今日もスライドなどを見せて頂きながら、子ども達の病気などに改めてショックを受けた思いがしました。また、福島に行かれて、ガイガーカウンターが切れてしまうという報道を拝見してショックを受けましたが、チェルノブイリに50回以上行ってらして、また福島の現地に行ってらして、今、思っていらっしゃることを語ってください。

 広河
 一番最初に、核の被災地だけじゃなしに、戦争の場所もそうなんですが、必ず加害者は被害を隠すという、そのことをいつも考えながら我々は取材しています。どこかが見せない、隠した場合には、必ず中では都合の悪いことが起こっている、というふうに思わなければいけない。だけどまさかそれが福島の原発で同じことを経験するとは思わなかったですね。あのときも、放射能の値も種類もそうだし、それから現在どうなってるのかということもそうだし、最初の発表が安全だ、大きな事故じゃない、人体に影響ないということばっかりを繰り返していく。

 福島
 直ちに健康に影響はありません、という

 広河
 本当にばかげたことですね。万全の措置をしているからと言ったら、それであらゆる質問が封じられると思っている。あるいは想定外の事故だと言う。そういう言葉の遊びのような、そういう言葉を使ったら、もういいだろうという感じで。あるいは、むやみに危険を煽らないとかね。じゃあ、本当の危険はどこなのかということもだめなんです。結局、彼らが言っているすべてのことは、保安院にしろ、電力会社にしろ、政府にしろ、自分達の言うことだけを流しなさい、と。それ以外に疑問を持つことは不安を煽ることであり、危険を煽ることである、と、それ以外の何ものでもないんですね。
 多分、東京に座ったままだったら僕はそれで非常に鬱屈した気持ちになったままだと思うんですけど、現地に行って、その翌々日ですか、13日に中に入って僕自身が放射能を浴びるという、しかもそのときには人体に影響もないし、大丈夫だと言ってるけど、僕の50回のチェルノブイリの経験からは、これはもうとんでもない数字で、信じられない数字で、今まで経験したことのない放射能を僕が今浴びている、というそのことをあそこで感じました。全く信じられないと思いましたね。

 福島
 チェルノブイリに50回以上行っていらして、今お話の、経験したことのないような、ということをもう少し話していただけますか。

 広河
 僕の放射線検知器は1の位から10の位、振り切れた場合に10の位から100の位、そして振り切れた場合は100の位、それ以上はないんですね。だから、100マイクロシーベルトのところで僕の測るのは、ほとんどのところはそれ以上になるような事態はないものですから。もっと低いものはたくさんありますが。それを持って僕はいつも行くんです。で、針が振れている間は、これくらいの針なんだから気をつけようと、舗装道路の上ではこれだけど、横の道路の中に入っていくとこれは振れてしまう、だから元に戻ろう、とかね。だから、放射能というのは形もないし、色もない、唯一信じられるのはそういう機械の針の動きなので、僕はそれを持って自分の動きを決めていたんです。それが振り切れてしまうという事態になって、僕はどうしたらいいかわからなくなって、ほんとにうろたえてしまった。

 福島
 どこで振り切れたんですか。100で。

 広河
 100で振り切れて、友達のを見たら1000でも振り切れていたんですよね。もう、信じられないですね。

 福島
 50回以上チェルノブイリに行かれて、一番思っていらっしゃることは何でしょうか。

 広河
 子ども達のことですね。いつも犠牲者は小さな子からになっていきますけど、チェルノブイリの事故のときも、0歳から5歳、6歳という、そのくらいの子ども達が、やがて5年後、10年後に圧倒的にたくさんの人たちが甲状腺がんを発症するわけですよね。新陳代謝、細胞分裂が活発な子ども達ほど放射線を取り入れてしまう。だから今のところ、日本で安全宣言をしているものは全部健康な大人のことですよね。まさか、どの病院でも、妊婦の人たちや小さな子どもに放射線、X線さえも浴びるのをやめなさいと指導しているときに、一回のものだから大丈夫だからとか、よく科学者の人たちが言えるなと。全く非科学的なことを言うような状態になって、何を取り繕っているのかというと、今までは絶対に安全だと言っていた、そういうことを言っていた人たちが事故が起こってしまってから、いや、これはたいしたことはないと言わざるを得なくなって、そういうことを言うことによって、もっと被曝を広げてしまっているんですね。隠すことによってどんどん被ばく者を増やしている。パニックを恐れているというような言い方もしますけれど、パニックを恐れて被ばく者を増やしたらどうするんですか。

 福島
 そうです。ほんとにその通りですね。福島の中で20キロ圏内よりもっと入っていらっしゃったりしていますが、今度福島で一番感じられたことって何でしょうか。

 広河
 とにかくまずやらなきゃいけないのは、子どもや妊産婦の人たちを、早く、80キロ、100キロ逃がして国民宿舎とか全部開放してまずそこは受け入れますと。それで、なんでもなくなりました、納まりました、良かったですね、で戻ればいいじゃないですか。万が一に備える、というのはそういうことで、最悪の事態に備えるということが危機管理ですから、自分達の願望で決めちゃいけないんですね。これは何とかもっと鎮まって欲しい、安全ですよという。彼らの発表する数値は上がっている時には言わないんです。それが落ち着きましたという時に発表する。だけど、上がっている時に被曝するんですね。上がっている時に人々に知らせなかったら、大変なことになるわけですよね。自分達の都合だけで、彼らが考えているのは、安全というのは人間の安全ではなくて、原子力産業の安全なんですね。

 福島
 20キロ、30キロ圏内の、避難させるというのが遅れるたりするのがおかしくて、一ヶ月あったわけだから、どこに避難させる、どうするというのを考えて、国はとにかく責任をできる限り果たすからこうしてくれと、真実、これは子どもや妊婦を守れ、みたいなことをやらないとだめですよね。

 広河
 東電もモニタリングポストが壊れてしまってから、手持ちの使えるものを、彼らは何百といっぱい持ってるわけですよね。それで測ればすぐわかるわけですし、彼らは知ってたわけですよね。でも、知らせるわけにはいかないと。こんなに危険なのかと知らせてしまうことになって自分達を追い詰めるからですね。

 福島
 おっしゃるとおりで、私も保安院が出しているモニタリングポストのを見て、計測不能とか不可とかなっているんですね。中越沖地震のときもそうで、電源がなくなったら原発の近くのモニタリングポストが全部計測できないとなっていて、何でかと尋ねると、電源がないからですと言うんですが、最も必要なときにモニタリングポストが機能しない。おっしゃるとおり、計測器があるわけだから発表すればいいんですよね。

 広河
 小さな手持ちのものでいいんですよ。僕の持っているような。これでも振り切れてしまう。あるいは手持ちのものでも1000マイクロシーベルトのものもあるのだから、それでも振り切れたと言えばいいんですね。でも全部隠すんです。

 広河
 チェルノブイリの事故のあと、1年経っても、食べ物にものすごい放射能があったので、ドイツなんかでは各都市に市民検査所というのができたんですね。食べ物を測る機械と空間を測る機械は違っていて、空間の方がわりあいに安く手に入るんですが、食べ物の方は何百万も、場合によっては千万もして、一つにつき、30分も1時間もかかる、そういう機械なんですが、自分達は、国や電力会社にそういうことを任せられないというので、ドイツの市民達は各都市にそういうのを作ったんですね。最初の発表はクリスマス近かったから、全ての乳製品を全部出したんです。どこのメーカーのいつものものは何ベクレルあるということを全部出したんです。それはニュースレターで発表して、それを見ながらお母さん達が買い物をしました。我々も、自分達の体は自分達で守らなければならない時期にあると思うんですね。呼びかけたら、何百万か一緒に出しましょうという方たちも出てますので、もっと大きくやるためには、そういうことを恒常的にやってくれる人が必要だと。機械のお金とかそんなのは集められると思います。それができたら福島県の各都市にでも、そして東京にでも置きたい、と思います。

 福島
 食べて内部被曝があると大変ですし、とにかく事実を知ることがまず第一歩ですものね。

 福島
 私はチェルノブイリに50回以上行かれたということも大変尊敬をするんですが、福島の現場に入られてジャーナリストとしてみなにいろんなことを知ってもらおうと。今、一番、広河さんが思っていらっしゃることを最後にお願いします。

 広河
 子どもの健康ですね。子どもの健康の話を全部ないがしろにして、とにかく取り繕おうとして、だからもっと高いレベルでも大丈夫だみたいにして。あれは大人の数値としても危険な数値ですからね。それを子どもに適用させてる。しかもそこで50センチで測って安全だと。そこでひっくり返って、砂や埃を体の中に取り入れたらどうするんですか。とにかく今は子どもたちの未来を、これは10年後、20年後に何が起こるかわからない、でも何が起こるかはスリーマイルでもチェルノブイリでも立証されているわけですね。福島ではそれが全く関係ないわけじゃなくて、わかっている。今更、想定外などといわずに、彼らは子どもたちの万が一のことを考えて行動すべきだと思います。

 福島
 おっしゃるとおりで、チェルノブイリももちろん、大人も被曝したり、生き物も被曝したりしたけれど、子ども達の甲状腺がんが増えたことはとても心が痛みますね。政治の結果、傷つくのは子ども達であり、未来です。文科省が20ミリシーベルト、50センチで測っていいんだというのは、おっしゃるとおり、1センチのところと1メートルのところと、明らかに1センチのところが、福島県の計測したのでも全部高いんですよ。ですから、子ども達の方が平均身長が低いし、乳児は低いですから、子ども達を守れ、ということを声を大にして言いたいですね。最後に何かまとめてください。

 広河
 今僕はジャーナリストとして、向こうが隠していることがあるんじゃないか、それなら伝えなければいけない、数値を出さないんだったら、自分達で数値を測らなければいけない、そういう活動をしています。
 今やらなければいけないジャーナリズム、メディアは戦争で魂を売り渡してしまうという、イラク戦争もそうですけれど、今度の放射能の事故でも、メディアは半分、売り渡してしまってますよね。自分達のスポンサーとかバックアップしてくれている電力会社の圧力とかあると思うんですけど。だけど、ジャーナリストがジャーナリストであらねばならないのは、こういうふうに人間の命と向き合った時だと思います。

 福島
 今日は本当にどうも有難うございます。

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