福島みずほのどきどき日記

石橋克彦「浜岡原発は止めるべき」対談録

 福島
 石橋先生、こんにちは。
 今日は、石橋克彦先生、神戸大学名誉教授に、原発震災についてお聞きします。
 私は十数年前ですか、石橋先生の神戸のご自宅に原発震災、地震の話でおうかがいしたことをとても覚えています。原発震災という言葉を作られ、はじめておっしゃったのが石橋先生で、今の福島原発は、まさに原発震災なわけですが、2005年の衆議院予算委員会で石橋先生が発言されていらっしゃる、原発震災は普通の災害と違う、助けにも行けないし、そのあと、どうしようもなくなってしまう、という原発震災の問題点を発言されていて、今読んで、ものすごくリアルなんですよね。原発震災や、それに注目されたことについて話をして下さいますか。

 石橋
 私はあくまでも震災論から入っていったんですけどね。過去の震災はいろんなパターンがあるわけです。津波が主だったり、山崩れが主だったり。これだけ文明が複雑になって、都市が過密高度化してくると、今までとは違う、今まで見たこともない震災もあるんじゃないかなといろいろ考えていて、一方で、私は昔から原子力に関心はあったけれども、ちゃんと勉強していなくて、それこそ工学の人があれだけ大丈夫だと言っているんだから大丈夫だろうと思っていたところがあったんだけど、神戸の地震のあとで、もう一回原発のことも考えてみようと思ってみたら、あまりにも日本の原発が地震を甘く見ているということにびっくりして、そうすると、さっきの震災、今まで見たこともない震災、というのに、ひょっとして原発による放射能災害が、普通の震災にからんで大変な様相を呈するかなと思って、それで考え始めたんですけどね。

 福島
 おっしゃるとおりで、地震が終わっても原発震災になって耐え難い苦痛や耐え難い問題をずっと長期的に出すという意味では、原発震災というのは、日本でこそきちっと議論されるべきテーマだと思います。

 石橋
 世界的に地震国で原発があって起こりかねないところはまだあると思うんですけれど、日本で真っ先にその可能性を考えて、なくすことを世界に訴えていかなくてはいけなくて、それで私は2003年に札幌で地球物理学の国際会議があったときに、たまたま、自然災害と人間が作ったものとが一緒になったようなリスクのセッションがあったので、そこへ原発震災の発表を申し込んで、これは決して日本だけの問題ではなくて、グローバルコンサーンの問題だということを言ったんです。
 だけど、一番可能性が高いのが日本で、これだけの地震国でこんなに原発が密集しているところは他にはないですから。だけど、まさかこんなにあっけなく起こってしまうとは思わなかった。その前に何とかしたかったですね。

 福島
 そうですね。ですから、浜岡原発の差し止めの裁判で、石橋先生が色々おっしゃっていらっしゃることが全部的中した。非常用電気ディーゼルなどが失われるということは、今の原子力安全委員長斑目さんが、そんなのを考えない、割りきりが大事だ、そして判決もそういうことは考えなくていいんだ、と言ったけれども、まさに起きた。 今から、3.11より前の石橋先生の論文を読んでいると、預言者のような形でむしろ震え上がってしまうというふうに思いますね。
 
 石橋
 だけど僕はね、日本の原発があまりにも地震を甘く見ているということを一番問題にしたので、それには原発のことも一応知ってないと書けないので、言ってみればにわか勉強したんですよね。ですから、ああいう事故の的確さというのは、例えば、高木仁三郎さんだったり、外国の研究者であったり、原発に批判的な専門家が的確に予測なさっていたわけで、ただそれをなるほどなと思ったので使わせてもらった。それと、本当に地震は怖いんだという、そこは私の専門分野ですから、それと、結び付けた。地震に対して原発は非常に危ないよ、ということをおっしゃっていた人は以前からずいぶんいるんですけれど、震災論の立場から結びつけて、原発震災という言葉を作って、社会に関心を持ってもらったというところは、多少私ができたかなとは思いますけれど。

 福島
 確かに地震列島ですからね、日本は。そして今、地下のエネルギーの活動が活発になっているんじゃないですか。

 石橋
 多くの地震研究者は、日本列島は地震の活動期に入ったと。これは1995年の阪神淡路大震災の頃から言われるようになりました。特に今回、3月11日の巨大地震のあとは、どこで何が起こるかわからないみたいな、地震だけでなくて火山もですね。

 福島
 浜岡原子力発電所はもう止めるべきだと私などは思うんですが、どうでしょうか。

 石橋
 危ないのは決して浜岡だけではないんですけれど、浜岡の危険性はほんとに理解しやすい。原因もかなりわかっていて、明瞭に危ないですから、これは真っ先に止めてほしいですね。それで、止めたからといってそれでいいわけじゃなくて、止めてずいぶん冷却してから、炉心の全燃料を取り出して、その燃料を使用済み燃料貯蔵庫に入れて、また何年も十何年も置いとくわけですから、一刻も早く手当をしないと、地震は仮に三十年後だとしても、今すぐやらないと間に合わないかもしれないわけですよ。

 福島
 今回の福島原発の事故については、津波というふうにも言われていますが、津波より以前の地震ではないかという意見もあります。福島原発の事故についての地震学者としての見解を教えて下さい。

 石橋
 たしかに田中三彦さんという方が綿密に検討されて、津波が来る前に、地震の揺れで1号機に関しては、冷却材喪失事故という一番シビアな事故が起こったのではないかと言われているわけですけれども、地震学的に見ても、今回の地震はまず、福島原発で想定を超えるような強い揺れがおこったことがまず事実だし、それから、これは東電も発表していることですが、振動が続く時間が非常に長かったんですよね。何度も何度も、配管や何かが長時間揺すられて、そこで破断したりすることは十分考えられることで、そのへんを結局、今回の事故は今後十分調査しなければなりません。
 それからもう一つ、今はデータが完全に公開されていない、隠されていると思うので、それはそれこそ、福島先生などにご尽力いただいて、是非全部出してもらいたいけれど、それで多分、2006年に改訂された耐震設計審査指針、それが地震の想定が不十分だったということがわかったということや、バックチェック、福島第一原発は一応これをパスしているんですけれど、それが甘かったということが明らかになりました。そうするとこれは非常に重大で、日本全国の原発の耐震バックチェックを全部やり直さなければならない、それから耐震指針も改めて改訂しなければならない、そういうことになるので、非常に重大ですね。

 福島
 それから、津波対策をしよう、非常用電気ディーゼルを上に上げよう、塀を高くしよう、浜岡なども砂浜ですから塀を建てようなどと言っていますが、もちろん、安全性を厳しくチェックするということはとてもだいじなんですが、予想もつかない地震や予想もつかない津波が起こりうる、しかも日本は地震列島ですし、何らかの活断層の上にあるものも多いですよね。よく、豆腐の上に立っている原発、という言われ方をしますが、そもそも日本の地震列島に、原発は似合わないといいますか、富士山に月見草は良く似合う、の逆で、日本列島に原発は合わないんじゃないかと思っているんですが。

 石橋
 日本の国内だけで、井の中の蛙で、原発が是か非かなどと言っているのは、ほんとに私は情けないと思うんですよね。世界的視野に立って、世界地図に地震の震源をプロットして、もし人類が世界で共同してどこかに原発を建てましょうと言ったとき、真っ先にここはやめましょうと言われるのが日本列島なので、そういうことを地球全体の視野で見ないで、日本列島の中だけで、今までの成り行きやしがらみで、原発が良いか悪いかなどと言っているのはほんとに困りますよね。

 福島
 石橋先生のお話を聞いていると、地震と震災は別ですが、地震についてまだまだわからないことがたくさんあったり、地震をあなどってはいけない、という、地震は起きるかもしれないけれど、震災をどう防ぐか、あるいは震災をどうやって少ないものにしていくか、となったときに、原発震災が起きないように、安全性を厳しくするか、あるいは安全性を厳しくしても日本の原発震災は起こりうるわけで、だったら、コントロールできないんだったらもうやめようよ、と思っているわけですが。

 石橋
 科学技術が進歩して、人間本来の持っている知恵というか叡智がすっかり忘れ去られて、人間が欲望に任せて大自然に対して無理な技術の適用をしてゆく、それの用心棒というか、それを担保するために科学が使われてしまって、どこまで無理をしていいか保証しろみたいな感じでいろんな計算をしたりして。でも、そういうぎりぎりのきわどいことはやっぱりこういう地震列島では本来やるべきではなくて、昔の人は、村の長老があそこの池に近づいちゃいけないよ、とか、そういう長年の知恵で危ないところをわきまえていたりということがあるわけですけれど、今はすっかり何でも技術で自然が征服できるみたいな感じが、これは原発に限らず強いんですが、それが非常に怖い。
 他の新幹線や飛行機よりも違って、格段に安全でなければ困る原発にまで、安直に科学技術を適用して、技術過信で、強振動の計算にまで、地震学の分野で、わからないことはいっぱいあるんですけれど、でも、こういう断層を仮定すればこの原発はこの程度の揺れで収まるとか、むしろ言い訳の材料のように使われていて、これは人間が本来持っている知恵というのが忘れ去られていると思います。そういうことをやっていると、それはいずれ、必ず、大自然からしっぺ返しを受けると思います。

 福島
 今日はほんとうに有難うございました。

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