福島みずほのどきどき日記

崎山比早子「放射線基準量は我慢量」概要

福島
今日は、元放射線医学総合研究所主任研究官で医学博士の崎山比早子さんに、放射線、放射能、外部被曝・内部被曝、体に対する影響、ミリシーベルト、シーベルトの単位などについて、専門家の立場からのお話をうかがいます。
まず、放射性物質の拡散について教えて下さい。

崎山
[図:原発事故による放射性物質の拡散]
これが福島の事故現場で、敷地内はかなり汚れています。けれども、放射線は距離の二乗に反比例して減衰するので、遠方の人は直接の被曝は考えなくてよいのです。ところが、遠方でも、放射線を浴びるのは、ベントや水素爆発で、放射性物質が風下に拡散したことにあります。
そのときに、降雨・降雪があると、雨や雪に付着した放射性物質がまとまった地域に落ち、この地域をホット・スポットと言います。遠方で被曝するのはこういう理由によります。

福島
放射線と放射性物質について教えて下さい。

崎山
[図:放射線と放射性物質(放射能)の関係]
文科省や電力会社でよくある説明で、放射能はランプから出る光、放射性物質はランプに当たる、というものがあります。小学校では、放射能は安全という洗脳教育がなされていて、教科書にはそこまでしか記述がありません。
しかし、光と放射能は全く違います。光は身体を透過しないので、DNAを傷つけませんが、放射能は透過してDNAを傷つけます。放射能を大量に浴びれば死亡するし、少量の場合は将来発ガンの可能性があります。
放射能という言葉は、キュリー夫人がラジウムを発見したときに、放射線を出す能力という意味で名づけたのですが、現在は、放射能と放射性物質とはほぼ同じ意味で使われています。

福島
外部被曝と内部被曝について教えて下さい。

崎山
[図:外部被ばくと内部被ばく]
内部被曝は空気や食べ物によって体の中に放射性物質を取り込み、体の中から放射線を浴びることです。放射能雲の下にいて放射能を浴びるというときには、線源が身体の外にある外部被曝です。医療目的のX線もそうです。外部被曝の場合は、線源から逃げることができる、或いはコンクリートや鉛などの遮蔽物をおくことができます。
けれど内部被曝は、いったん身体に取り込むと逃げることができないという意味で外部被曝と異なります。
食べ物で入ってくるものは今すぐに症状は出ないかも知れないけれど、蓄積すると今後気にしなくてはなりません。
プルトニウムはアルファ線を出します。アルファ線は飛ぶ距離が40ミクロンと小さいので、外にある場合は問題ないですが、いったん体内に入ると、半減期が2万4千年と長く、排出しにくいので、一生体内から被曝することになり、危険な元素です。

福島
今、文科省や原子力安全委員会が出している、学校での基準、50cmの高さで20ミリシーベルト、については、私たちは問題とみて交渉中ですが、このミリシーベルトという単位について教えて下さい。

崎山
[図:放射線の量を知るための単位]
1ミリシーベルトは、公衆の1年間の線量限度と言われています。1ミリシーベルトとは、放射能を浴びたときに細胞の核に平均して1本ずつ放射線が通ったということです。核には、身体の設計図としてのDNAがあります。例えばCTなどで10ミリシーベルト浴びるとすると、CT撮影部分の細胞の核に、平均して10本ずつの放射線が通るということになります。

福島
初期のテレビや記者会見などで、よくレントゲン撮影との比較がありましたが、1回の撮影と1日24時間連続して浴びること、また、部分的な撮影と全身に浴びることとは違いがあると思いますが。

崎山
医療被曝は、日本は世界で一番多くて、不安な被曝をさせられている問題はありますが、受けたくなければ拒否もできるものです。

福島
それに医療被曝は病気発見のためで、より大きな価値のために被曝を選択する、という面がありますが、原発からの被曝は有用性は全くなく、選択の余地もない、純然たる被曝ですね。

崎山
年齢的な区別もありませんね。ガンなどは高齢者に多く、検査のための医療被曝は成人が中心です。区別のない被曝では、一番被害があるのは、妊婦・胎児・子ども・育ち盛りの人ですね。

福島
文科省は、子どもも大人も同じ、と言い、計測も50cmで問題ないとしています。けれど、福島民友、福島民報で報道されたように、地表に近いところほど濃度は高いのです。子どもについての問題点は二つあって、一つは、成長盛りは放射能を取り込みやすい、甲状腺も小さくてヨウ素が集まりやすいという子どもの体の特質、二つ目は慎重さで、子どもは身長も低いし、砂場で遊んだり、しゃがんだりも大人より多いですね。
子どもや胎児にとっての放射線について教えて下さい。

崎山
おっしゃったそのとおりです。それに加えて、子どもはこれからの人生が長く、環境の放射性物質にさらされる機会も多いです。だから、一回放射線を受けるとあとの人生でがんになる確率が高くなる点が大人と違います。人にもよりますが、子どもと大人の差については、3倍、5倍、10倍などの説があります。

福島
チェルノブイリの事故のとき、ロシアではヨウ素剤をあまり配布せず、ポーランドでは1050万人に配り、甲状腺がんはチェルノブイリの方が多く出る結果になりました。ヨウ素剤の配布は、日本では40歳以上には行わないというのは、これはなぜでしょうか。

崎山
 広島、長崎の原爆の障害調査を今でもやっていますが、そのデータで40歳以上は甲状腺がんが増えなかったと記録にあるようです。

 福島
 子どもは甲状腺が小さく、ヨウ素が集まりやすいと聞きましたが。

 崎山
 子どもは甲状腺ホルモンの産生も盛んです。これは代謝に必要で、子どもは代謝も盛んなので、とりこみやすくなります。
 
 福島
 文科省や原子力安全委員会が、子どもと大人の規準を同じにしているのはおかしいですよね。

 崎山
 それはとてもおかしいです。放射線作業者の限度は年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトを超えないとなっていて、平均すると年間20ミリシーベルトです。これは成人の値で、大人の線量を子どもに適用するのは絶対におかしいです。

 福島
 通常は1ミリシーベルトと言いながら、事故でとたんに数値を上げるのもひどい話です。

 崎山
 放射線に関して安全量というのはないので、生物学的には、自然放射線以外は少ない方がいいのです。1ミリシーベルトと決めたのは、原子力産業があるからで、これより少なくするとやっていけないからです。それ以上にするのは、経済的社会的理由からで、生物学的理由からではありません。

 福島
 子どもについてまでいきなり20ミリシーベルトにあがるのはおかしいですね。少なくとも政治は子どもを守るべきです。

 崎山
 学童なり幼児なりを集団で避難させるのが本来の政治のあり方でしょうね。

 福島
 学校や親の仕事もあるので、なかなか困難なのは理解できますが、長めのサマーキャンプのような形でできないかと思います。一番大切なのは命であるにもかかわらず、文科省や原子力安全委員会は、社会のルールに力点を置き、その地域で学校に通わせ、外遊びの時間を制限するということにしています。
次に、人工放射能と自然放射能の違いを教えていただけますか。
 
 崎山
 放射線は線量が同じなら同じです。自然放射線も避けることができないし、ガンの原因にならない保障はありません。

 福島
 医療放射線のように、有用性のために選択するのと、全ての人間が被曝するのとは違いますよね。

 崎山
 それは全く違いますね。

 福島
 チェルノブイリ25周年の記念集会で、神田香織さんの「チェルノブイリの祈り」という講談を聞きました。急性被曝をした消防隊員の妻が語るというものでした。放射線の問題について教えて下さい。

 崎山
 [図:放射線がDNA に当たると]
 一番の問題はDNAを傷つけることです。DNAは身体の設計図で、それが放射線で傷つくと元に戻りません。DNAの化学構造は、二重螺旋が向かい合っている中で3つの塩基が1つのアミノ酸を形成していますが、その配列がだいじで、狂うと蛋白質ができなかったり、変異が起きたりします。この化学結合は弱いつながりで、このエネルギーに比べると診断用のX線でも、1万5千倍から2万倍で、ここに簡単に傷をつけるし、この傷は生体にとっては治しにくい複雑な傷です。治したとしても間違いや変異を起こしやすく、それがガンの理由になるということです。いっぺんにたくさん浴びると治せなくて急性障害を起こし、少ない場合には変異を起こして将来のガンにつながります。放射線の障害とは、ひとえに遺伝子に対する障害です。

 福島
 直ちに健康に影響はない、とよく言われますが、放射線のリスクについて教えて下さい。

 崎山
 [図:放射線とリスクの関係-低線量の場合]
 一度にたくさん浴びるとDNAがずたずたに切れるので、7千ミリシーベルトで100%の人が死亡します。JCOで亡くなった方は、1万7千から2万ミリシーベルト浴びました。最先端の医療を受けましたが、83日間で亡くなりました。今、7千ミリシーベルト以上浴びて、医療で助ける方法はありません。DNAをつなぐことはできませんから。3千から4千ミリシーベルトで50%程度の人が死亡したり、いろいろな急性障害をあらわします。脱毛や、出血が止まらない、骨髄がやられるので感染症を起こす、などです。急性症状が現れる一番低い線量が100から250ミリシーベルトで、リンパ球、白血球が一時的に減少しますが、時間が経てば治っていきます。これが急性障害の閾値で、これより低い場合には急性障害は起こしません。直ちに健康に影響はないというのはこのことだと思います。
 けれども、急性障害でなければ安心なのではなくて、晩発障害があります。コメントする専門家は晩発障害のことを忘れたように見えますが、どんな教科書にも急性障害と晩発障害は並べて書いてあります。線量が低ければ急性障害は出ませんが、線量に応じた晩発障害があります。

 福島
 低線量でも晩発障害がある、食べると内部被曝からは逃げられない、ということですね。線量当たりの発ガンリスクについて話してください。

 崎山
 [図:線量当たりの発がんリスク]
 これは、日本からもたくさん委員が出ている、国際放射線防護委員会の出しているモデルです。国際的に放射線の安全量は存在せず、低ければ低いなりにリスクはあるので、積算で線量を考えて、1万人の人が1ミリシーベルトを浴びるとその中の1人、10ミリシーベルトで10人、100ミリシーベルトで100人がガンになる、という前提で防護を考えてくださいという勧告です。急性障害が出ないから安全というわけではありません。

 福島
 作業員の人たちの基準を100から250ミリシーベルトに上げ、あるいは福島県は女性の基準を緩和し、福島県の学校の基準は20ミリシーベルトにしていますが、基準値とはいえ、浴びていいわけはないですね。

 崎山
 この図は閾値なし直線説のモデルですが、こういう可能性はありますが我慢してくださいということですね。

 福島
 DNAを持つあらゆる生き物が被曝していますが、浴びなくて住むものは浴びないほうがいいですよね。

 崎山
 基準値は安全量ではなく、我慢量です。その考え方を言ったほうがいいですね。1万人のうち、250人がガンになる可能性があり、その中に入るかもしれないが、それは我慢してもらう、というのが基準値です。
 事故がなくても原発で働いている人は常に放射線にさらされているし、また、使用済み核燃料もあります。今回も不安材料は冷却プールの使用済み核燃料で、プールはとても不安定で、東電はそこに7月までにコンクリートの柱を建てると言っていますが、それまでに余震があったらどうするんですか。使用済み核燃料は反応はしないと言っていますが、崩壊熱はとても出ています。原発は発電に対して事故がなければいいというものではなく、常に使用済み核燃料が大量に出ています。今、世界で20から30万トンと言われています。その処理を誰も知らないままに発電をどんどん推進しているのは大きな矛盾です。

 福島
 更に、日本は地震列島で、事故が起きなくとも、使用済み核燃料については、福島・北海道・青森、みなノーと言っています。必ず問題は起きると思います。
 また、よく、広島・長崎でも今は草木が生えて大丈夫、と言う人がいます。あれは兵器で、原発は平和利用だからいいとは思えません。人間の命に対する侵害という点ではつながると思いますが、広島・長崎での放射線の問題と今回の事故とでは何が同じで何が違うのでしょう。

 崎山
 原爆の場合は、広島に落ちたウランは800グラムで、いっぺんに爆発したので、放射熱と爆風が大きかったのです。けれど、70年間何も生えないといわれたけれど今は大丈夫、と言われますが、原発のウラン量は比較にならない位多いのです。1号機で原子炉の中に60トン、2号・3号では94から96トン、冷却プールには冷却水がそれぞれ百何トン、4号炉は230トンです。その量が環境に出たら、広島・長崎の比ではありません。日本人は原爆の経験があるだけに、比較して大丈夫という人が多いのですが、量的には格段に違う、そこを考えないといけません。

 福島
 余震や万が一の事故があれば、それだけのものが環境に出ることになります。今、日本は地震の活動期に入っていると言われてもいます。これは人間がコントロールできるものではないですね。

 崎山
 崩壊熱など、誰もコントロールできません。ひたすらに冷やすだけにものすごい労力を使っています。

 福島
 命に対する放射線の問題についていろいろありがとうございました。命を大切にする視点から、新規の原発は建てない、老朽化したものは廃炉にしていく、ということで、命と生き物のために頑張りたいと思います。

 崎山
 浜岡と柏崎は直ちに止めないとならないですね。それに、地球上の全生物に対して、日本が加害者になる可能性のある問題です。

 福島
 今日はどうもありがとうございました。

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