福島みずほのどきどき日記

鎌仲ひとみ監督対談録「エネルギーシフトへの記録」(6月9日収録)

 福島みずほ(以下「福島」)
 こんにちは。今日は監督に来ていただきました。鎌仲ひとみさんです。「ミツバチの羽音と地球の回転」、これは国会の議員会館でも映画上映会をしました。
 全国各地で、ぜひ皆さんたちの地元でも上映会をやって下さい。
 この映画について話していただけますか。

 鎌仲ひとみさん(以下「鎌仲」)
 実はたった今、渋谷のユーロスペースで、再々アンコール上映中です。
 4月にもアンコール上映をしたんですが、そのときには、人が立ち見でも入りきらないくらいたくさん来て、地震の後のリアクションが、普通の人がたくさん来て、原発について「何かおかしいな」と思っていたけれども自分は何もしなかった、あるいは家族が被災地にいて、この原発のことでものすごく苦しんでいるし、悩んでいます。
 自分にはいったい何ができるんだろうかと考えて映画を見に来る、という人がすごくたくさんいるんですね。
 実はこれは3本目です。「ヒバクシャ 世界の終わりに」が1本目で、「六ヶ所村ラプソディー」が2本目です。

 福島
 「六ヶ所村ラプソディー」に斑目さんが登場するんですよね!
 斑目さんは原子力安全委員長ですけどね。

 鎌仲
 斑目さんは「六ヶ所村ラプソディー」に出てくださって、原子力は安全、安心できるものでもないし、いつも大丈夫だろうかと思いながらやっている、とか、最終的に使用済み核燃料についてはお金で解決できる、みたいなことをおっしゃっているんですが、その一つ一つはものすごく正直なお話なんです。

 福島
 ただ、浜岡原発で割り切らなければ原発ができない、と裁判所で言って、それについては、割り切り方が正しくなかったと予算委員会で答弁しました。
 「ヒバクシャ 世界の終わりに」ですが、ヒバクシャってカタカナじゃないですか、核兵器の被爆も原発の被曝も、チェルノブイリ、イラクの劣化ウラン弾、それも「ヒバク」の問題、ということでとりあげていらっしゃいますよね。

 鎌仲
 そうなんです。だからこの映画の中にはイラクで白血病やガンになる子ども達が出てくるんですね。そこから私のヒバク者を訪ねる、世界中をめぐっていく旅が始まるわけなんですけど、日本の人たちは、核兵器、原爆が使われなかったらヒバクはありえないものと思い込まされてきて、今回福島が起きてものすごく多くの人が、私たちも含めて被曝してしまった。(福島:今も続いていますね)
 そして、イラクだけではなく、アメリカの核兵器工場、これが六ヶ所村と同じ再処理工場で、プルトニウムを取り出す、その風下でもすごくたくさんの放射性物質が出て、被曝した人たちがいるんです。そこはまさしく今の福島で起きていることとものすごく似ていて、ダウンウィンダーズ、風下住民と言うんです。今回も福島から出た大量の放射性物質が拡散していった。
 それは原爆のように、同じ距離のところに同じだけ放射線が飛んでいったのではなく、放射性物質というものが放出されて拡散したので、それは風向きによっていっぱい飛んでいくところと、風上は飛んでいかない、とまだらになっていると思います。
 そういう汚染されたところに住みながら、少しずつ体の中に放射性物質を入れていくという低線量の慢性的被曝に、今、私たちはさらされているわけです。

 福島
 外部だけでなく、食べ物という形でも、これだけ海の汚染があるわけですしね。

 鎌仲
 海だけでなく、大気にも出て、土壌も汚染されて…。

 福島
 水。
 それから汚泥の中にたくさんの放射性物質がある。汚泥からセメントを作るわけで、もしかしたらビルに住んだら、実はセメントが放射性物質を含んでいる。どれも一つずつは低線被曝量かもしれないが、全部足すと、内部被曝も入れると莫大になっていく。
 とりわけ、子ども達への影響はほんとに心配ですね。

 鎌仲
 そうなんですね。だから20ミリシーベルトを文科省が撤回すると…。

 福島
 いや、撤回しないけれど、でも1ミリシーベルト以下を目指すとは言った。

 鎌仲
 でも20ミリシーベルトは安全だと山下教授は言い続けていらっしゃるわけですね。それに関して私は問題だと感じますし、その線量では子どもの健康は保証できないと思うんですよね。

 福島
 20ミリシーベルトが一人歩きしてそれで大丈夫みたいになりましたからね。その責任は大きいけれど、今、具体的に被曝を減らすために何ができるか、やっていきたいですね。
 折角なので、「ミツバチの羽音と地球の回転」、ぜひ皆さんも見てください。
 この映画の話をして下さい。

 鎌仲
 舞台が2つありまして、この祝島、ここに美しい海を埋め立てて原発を2つ建てるというのが中国電力さんの計画で、もう足掛け29年、祝島の人たちはすごく一生懸命1ミリでも遅く止めたいということでやっていらして、もう一方では、ここの中にさまざまな人が描かれているのですけど、スウェーデンを取材して、脱原発と脱石油を同時にやって、持続可能なエネルギーというのをめざしているんですね。
 脱原発をめざしているんですけれども、その地方地方で自分達の足元にあるエネルギーを使って自然エネルギーでエネルギーの自立を、例えば私のいなかだったら富山県がやるというような、そういうことをもう始めている。

 福島
 特に印象的だったのはスウェーデンの人がグリーンな、クリーンなエネルギーを買えばいいじゃないかと言って、え、日本ではそれができないの?と言うところがありましたね。
 民主主義の問題だ、みたいな話も出ましたね。だから今、発電と送配電の分離、1社だけが地域独占をするんじゃなくて、いろんな発電にみなが参入できるし、発送電の中で自分はグリーンなエネルギーを買いたいと、グリーンなエネルギーを応援しようと、そういうことがシステムとして出てきているというので、ぜひ皆に見てもらいたいですね。
 私は祝島に行き、泊まりましたが、本当にいいところで、ただこの上関原発の予定地と祝島って4キロしか離れていないんですよ。
 祝島の人たちは主にここで魚をとっている。しかもここは瀬戸内海なので、万万が一、福島原発のような事故が起きたら、瀬戸内海が汚染されると思いますよね。
 4キロでしょ、万が一事故が起きたら逃げられないですよ、或いは故郷を失っちゃうんですよね。だから祝島の人たちが29年間闘ってきて、建ってない。
 県知事も海の埋め立て工事の許可は出したけれど、原子炉の許可はまだ出てない。知事地震は埋め立ての許可の来年の更新は考えると言っているので、(鎌仲:地震の、原発事故のおかげですね)ただし、本当はそれがなくても止めたかったが、とにかく新規の原発、海を埋め立てて作るようなのはダメですよね。

 鎌仲
 29年間、あまり反対運動が理解されなかったんですよ。祝島の人たちだけが反対してるのよね、っていうことをマスコミもそんな雰囲気で描いて来たし、それどころか、東京では誰も知らない、全国紙では絶対取り扱わないことだったんですけど、今回の事故が実際起きてみて、祝島だけが被害を受けるんじゃないんだと、もしあそこに原発を建てたなら、ものすごく広範囲に、山口に住んでいる人も、四国に住んでいる人も、瀬戸内海全域に面している人たちも(福島:大分の人もですよね)被害を受けるということにみな興味を持って今回のことを見ることができるようになったので、上関原発への意識というのは大幅に広まったと思います。

 福島
 そうですね。希少動物もいるし、上関原発を建てさせないことはほんとに必要ですよね。

 鎌仲
 でも中国電力さんは建てないとはまだおっしゃってないし、より安全な原発を建てるという新しいことをみつけてきて、より安全な原発ということを言ってるんですけど、私がなぜこんな映画を作ったのかというと、日本人はこれまでスイッチを入れたら電気がつくと、だったらそれでいいじゃないかと、それがどこでどうやって作られて、一体どういう風に私たちはそれを消費して、その結果ゴミを出しているのかということに関して全く知らない、とか、原発に危険性についても知らされてこなかった、と感じてるわけですよ。
 だから、エネルギーについて考えるいろんなヒントが入っていて、私たちが私たちの責任でエネルギーを選んで、管理したり作ったりということにも目配りをするということをスウェーデンの人たちのようにできたら、日本は変わっていけると思うんですね。

 福島
 それから、原発がなくても生きていけると言いたくて、原発依存症じゃないけれど、原発がなければろうそく生活に戻るような言い方をする人がいるじゃないですか。それは違うんですよね。
 福島の人たちも、自分たちは東京に電気を送るためにやってきたと言うし、柏崎刈羽もまさにそうですもんね。

 鎌仲
 でも、原発がなくても実は大丈夫で、というふうに、この事故の後にマスコミも言い出し始めましたし、そういう計算もデータも出してきてるんですけど、やはり人々の心の中に長くプロパガンダされてきた、電力会社や政府が、日本は原発なしには成り立たないというメッセージ、で、それをやっている人たち、例えば東京電力の影響力の大きさ、あるいは政府・国策というものに逆らいがたいという思いが、まだ人々の中にものすごく強く植えつけられているので、こんなに悲惨な事故がまだ現在進行形で起きていても、堂々と原発について話をするとかということはまだテレビの中で出来ていないと思うんですよ。
 オープンにされていないと感じます。

 福島
 そうですね。だからこそ、本当にそこを変えたいですね。原発がなくてもほんとにいいんですよ。
 私ははっきり、原発は未来のない産業だと思ってるんです。
 新たに電力会社にみな参入できないし、自然エネルギーもできないわけじゃないですか。3月11日、自然エネルギー促進法案を閣議決定してるんですね、午前中、地震の日の朝に。
 私はそういうことをやって、新たな、これは経済産業省自身も2020年に10兆円産業くらいになると言っているんで、総理がG8で発言したのは、経済産業省のプランなんですよね。
 だとすると産業育成にもなるし、地方分権にもなるじゃないですか。(鎌仲:いいことばっかりなんですよね) 福島で、ものづくり、太陽光や風車の自然エネルギーの製造を誘致したい、誘致してくれと、私、国会議員に言われました。
 だから、地域が本当に地域分散型でやれるわけで、私はほんとにもう一回原発事故が起きたら、日本は破滅すると思ってるんですよ。

 鎌仲
 でも海外では、もう日本はだめだなと、今の事故ですら思われているのに。ほんとに私たちはみなで力を合わせて今のこの事態に、少しでも良くなるようにしなければならないですよね。
 その中の大きな一つがエネルギーをシフトすることだと思っています。で、スウェーデンのエネルギー庁長官が、送電網を分離しない限り、自然エネルギーは決して増えないと、バリアを外すんだ、と言うんですよ。そのバリアを是非、外していただきたいと思っています。

 福島
 そうなんですよ。だから、たとえば、あなたのところの買わないよと言われたら、いくら自然エネルギー作っても流通ができないんですもんね。野菜を作って、魚を獲って、本を書いても、流通できなければビジネスにならないわけで、そういう意味では、流通させないとだめなんですよね。

 鎌仲
 場当たり的にああだこうだと言うんではなくて、やっぱりエネルギーのビジョンを大きく掲げるということが、原発に頼るのではなくて自然エネルギー、より持続可能なエネルギーにこれからできる限り変えていこうと決めたら、日本の技術はたくさんすごくすぐれたものもあるし、できることもたくさんあるし、ものすごく早い時間でそれが達成すると、それが雇用を生み出し、経済をより活性化させるということが普通の人たちに伝わることがすごくだいじだと思います。

 福島
 この「ミツバチの羽音と地球の回転」で驚いたのは、沖縄的に言うとおじいおばあが、特に女の人がすごく元気ですよね。みなが海でほんとに必死で守ろうとしていて、中国電力側が島民の皆さん、とかって語りかけるじゃないですか、あなた達、過疎地で第一次産業に頼っていても細々となるだけだから、原発ができればそこで働いたらいいじゃないかと言うじゃないですか、あれにはほんとに、バカにすんな、と思いましたね。

 鎌仲
 でもそれが、その時代遅れの日本の国策の姿だったんですよね。

 福島
 原発で被曝して白血病になって亡くなり、労災認定した人や、労災認定の裁判で認められなかった人や、いろんな人を見てきて、それはやっぱり命がだいじなわけで、また、配管が爆発して下請けで亡くなった人たちというのも、美浜で事故の直後に入ったので、命がだいじとすごく思う。
 ほんとにここで、また第一次産業やる、あるいはいろんな形で産業を作っていくということは可能なんですよ。だって、みんなハッピーなんだもん。それを全部こわしてしまうのが原発なんだって。

 鎌仲
 台なしになりましたね。例えば、飯館村はあんなに濃く汚染されてしまったけれども、ほんとに有機的な、持続可能な地域をめざしていたのに。これから、被曝というものが私たちのすごく大きな問題になってくると思いますし、放射性物質が放出されたことで、無関係な人たち、原発から電気を使っていたかもしれないけれども直接的な利益や恩恵など受けていなかった人たちがこれから健康被害を受ける可能性がすごく高まっているわけですが、それが原発から、福島から出た放射能のせいだと証明する手立てもまた難しいので。

 福島
 今日たまたま広島・長崎の被爆者の人たちと話していて、かれらは原爆の被害にあった直後、吐いたり、急性ですよね、ですけど、いろんな証拠を集めたりとかないじゃないですか、日本もデータをきちっと集めてない、立証するのに裁判でどんどん却下されていくし、原爆で当時ものすごい目にあった人たちですら、立証が困難だったわけですよ。
 そうするとほんとに難しくなる。彼らが今日言っていたのは、健康手帳を一人一人が持つように絶対すべきだと言っていて、つまり、今、厚生労働省は、働いている人たち、労働者に対してはデータ管理をコンピューターですると言っているんですが、本人がもしかしてわからないかもしれないですもんね。
 働いていた労働者の人たちと、一般の人たちと、両方健康管理手帳って必要ですね。もう一つはやっぱり、あらゆることをやって、とにかく除染をするなり、避難をするなり、被曝を少なくする。あと、食べ物については、基準を厳しくして安全だとしたうえで、補償をきちっとすべきだと思っているんですよね。

 鎌仲
 風評被害と言っているのは責任の転嫁だと思います。本来は汚染をもたらした東京電力やそれを管理できなかった政府が責任を持つべきであって、実際入っているか入っていないのかわからない、心配している人たちが怖いから買えないと言っているのが風評被害だというのは、根本的な間違いだと思いますよね。

 福島
 もう一つ、「六ヶ所村ラプソディー」もそうですが、鎌仲さん自身のこの3本の映画、「ヒバクシャ 世界の終わりに」「六ヶ所村ラプソディー」「ミツバチの羽音と地球の回転」、この原動力ってなんですかね。

 鎌仲
 実は、被曝で子ども達の命を失いたくない、というのがもともとの出発点だし、この3本を貫いている私の思いなんです。これ以上子ども達を被曝させたくないし、被曝で苦しめたくないし、被曝で病気になって死ぬようなことを子ども達に起こさせたくないと、それは大人の責任で、放射性物質をこれ以上環境に出すようなそういう条件を減らしていかなきゃいけないと思って、その本質的な解決が原発依存をやめるということなんですよ。
 原発をやり続ける限り、放射性物質がどうしても環境に出てくるし、どうしようもないゴミもたまるので、イラクの子ども達が劣化ウラン弾で被害にあったように、それも原発のゴミですから、だから、そういうものから脱け出して、使っても使ってもなくならない、自然と共生していくミツバチのようなやり方でエネルギーを作っていこうというメッセージを、3本目には込めたんですね。

 福島
 「ミツバチの羽音と地球の回転」を見ると、祝島で若い山戸さん、(鎌仲:孝さんね)一方で原発の問題点やスウェーデンの制度、発電と送配電の分離とかあるんですが、私は、祝島の中で子どもを育てながら若い人たちが、島の中で暮らしていこうという前向きな意欲、ビワ茶とか魚とか売って産業化していこうとあるじゃないですか、そういう日常生活の豊かさ、お祭とか、そういうものにすごく心打たれましたね。
 だから、原発はお祭も島も故郷も未来も奪ってしまうんですよ。未来のない産業なんですよね。

 鎌仲
 かけがえのないものに、今回、空気、単なる空気、思い切り吸えない、空を見ても山を見ても放射能に汚染されていると感じる、海も、何もかもが目に見えない放射能に覆われている、それが私たちに危機となってくるという、当たり前のものを失ったことに気がついたときに、当たり前のものがいかに大切かと。

 福島
 まだこれは案の段階だけれども、国家戦略室が作ったものに、6つの戦略の中のひとつに原子力、ってあるんですね。世界で一番安全な、最も安全な原発を作る。冗談じゃない。
 すさまじいコストもかかる、今まで安全だ安全だと言っていてそうじゃなかった、これから安全なものを作るという、しかし、日本は地震があって津波があって、鎌仲さんもおっしゃるとおり、どんなことやったって放射性廃棄物が出る、処理できないものが出るわけじゃないですか、そういうところに莫大なお金をつぎ込むくらいであれば、未来に向かって、自然エネルギーや違うエネルギーに対してやるべきですよね。

 鎌仲
 それが賢い選択だと思うし、私たちがそれを選択しなければ、未来の子ども達に申し訳が立たないですよ。

 福島
 「六ヶ所村ラプソディー」の映画を見た若い人たちやサーファーの人たちが、海を守ろうとやってくれたじゃないですか。「ミツバチの羽音と地球の回転」も若い人たちや、環境がだいじだという人たちや、ほんとに多くの人たちが見てくれましたよね。

 鎌仲
 まだ継続中です。まだまだ見てもらわないと、まだまだです。

 福島
 映像の持つ豊かさにとても癒されるといいうようにも思っています。ぜひ、見てください。今日は鎌仲さん、創作される立場からいろいろお話くださってありがとうございました。

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