福島みずほのどきどき日記

広瀬隆さん「原発メルトダウンについて」概要(2011年6月16日収録)

 福島みずほ(以下「福島」)
 広瀬さんは、1979年のスリーマイル島の事故から市民運動を始められ、「危険な話」など多くのご著書もあります。ごく最近、「福島原発メルトダウン」を朝日新聞出版から出されています。基礎的な知識も得られる、コンパクトで読みやすいものですので、ぜひ皆さんもお読みください。
 今回の福島原発事故をどうとらえていらっしゃいますか。

 広瀬隆さん(以下「広瀬」)
 起こってはならないことが起こったことにショックを受けていますけれど、事故が終わっていないことと、時間が何十年もかかることをみなさんに知って頂きたいのと、これと同じ危険性が日本中の原発にあることを説明したいと思います。
 私も勘違いしていましたが、こんにちまで、国も東電も保安院もみな、津波で事故が起こったと説明していますが、これは間違いで、福島第一の4号機の主任設計者だった田中三彦さんが首相官邸データから明らかにしたことは大変ショッキングで、今回の地震は福島から130キロ沖合で起こった地震で、地震の揺れとしてはそんなに大きくないんですよ。1号機から6号機まで、大体500ガル前後だったんです。
 ところが、田中さんが解き明かしたのは大変なことで、地震の一撃で、燃料棒が入って燃えている圧力容器のいろいろなパイプのどこかが破損したということを、首相官邸データの圧力データをずっと見ていくとわかります。70気圧という高い圧力で運転されているのが、深夜に翌日までに9気圧落ちているのです。最初にどこかわからないけれど破損が起きて水蒸気が噴き出して、燃料棒が外に顔を出しますね。すると水素も大量に出てきます。その外側の徳利型の格納容器がガスでどんどんふくらんで、4気圧までしか耐えられないのが8気圧も出て、上ぶたを持ち上げる形になって水素ガスをオペレーションフロアというコンクリートの建物に出た。そこはもう空気で、水素があれば水素爆発が起こる。そういう形で1号機と3号機の爆発が起こったということを解き明かしたのですが、これをずっと認めなかったけれど、5月半ばから次々とメルトダウンが起こっていたというニュースでおわかりのとおり、ついに東電関係者もそれを認めたのです。
 爆発した1・2・3号全部が、のぞけないので配管のどこか分からないけれども損傷が起こっていることになった。これは私には本当にショッキングなことで、500ガルなんです。阪神大震災以降では、鳥取県西部地震で1,500ガル位だし、そのあとの宮城県、2004年の中越地震、2007年の中越沖地震、3年前の岩手宮城内陸地震、みな2,000ガルを超えています。だから、これは普通の地震で全部壊れるということです。ではなぜ他の原発は今まで大事故を起こしていないかというと、直撃を受けなかっただけなのです。
 今度は沖合130キロであっても直撃だったので、それで破損してしまった。このところの日本の世論をみていると、たとえば昨日か一昨日の朝日新聞の世論でだいぶ力づけられたのは、74%くらいは段階的に原発廃止と言っている、これはいいことなのだけれど、段階的廃止なんて言っている時間はないというのが私の結論です。普通の地震が原発の地帯で起これば、福島と同じことが起こってもおかしくない状態なのに、しかも今回太平洋プレートが激動したわけですが、太平洋プレートは長い日本列島の下に1千キロも入っているわけです。これがあれだけ動いて、その上にのっているものが動かないはずはないんですよ。フィリピン海プレート、その上にユーラシアプレート、北米プレートがあって、この4枚のプレートの上にわれわれは生きているわけですが、どこが今動いてもおかしくないのです。
 私が「原子炉時限爆弾」を書いたのは、それが怖くて、まもなく動く、太平洋岸は特に危ないと、去年おととしと東北地方で原発を止めてくれと言って歩いてまわったのは間に合わなかったのですが、今も日本全体が今年の1月と同じ状態にあるわけです。もう3か月経ったと皆さんが思っているのはのんき過ぎるので、まだ3カ月しか経っていない。地震にとっては1秒のような短い単位です。段階的廃止などというのんびりしたことをしていて日本がもつとは、私には思えません。

 福島
 とにかくまず、再稼働させない。今は54基、もんじゅを入れれば55基、動いているのが17基、ただ定期検査などで再稼働させなければ、来年3月にはゼロになる。私も、浜岡原発を止めるべきだと国会で何度も質問し、総理にも電話しました。浜岡だけ、なのではなく、浜岡が最も危険だからですが、地震が起きたら耐えがたい被害を与えるという緊迫感はどこもありますね。

 広瀬
 私も今、全国の全部を止めたいんです。止められるという希望を持っています。なぜかというと、自治体の首長はどうしようもない人たちがいっぱいいますが、現地の人たちは今度のことでほんとに怖いということがわかっています。一番力づけられたのは、福井県知事の西川一誠さんが朝日新聞のインタビューに答えて素晴らしいことを言っています。私の言っていることとほとんど同じなのですが、国は今回の事故があったので妻に対策をしろと言っているが、津波が原因なのか、地震の直撃が原因だという説もあるのに、何故それを検証しなのかと。
 5月下旬の地元紙に出ましたが、二ヶ月も経ってまだしっかり対策を自分達で練り上げることができないんだ、と。もう一つ素晴らしいことを言ったのは、福井県民の安全と電力需給とは、これは関係ないことだと、まず人間の命がだいじだ、と、そう言って下さったんです。
 以前、福島県知事の佐藤栄佐久さんが思いだされるんですが、14基の原発を抱える、日本最大の原発基地の県知事さんがこう言って下さったということは、他の立地県の知事さんを問い詰める一番だいじなことだと思います。「あなたはこの意見をどう思うんだ。」と、県民がみな詰問すればいいんですよ。「県民はどうでもいいのか。」とみな言うべきで、そうして問い詰めていけば、どこの県知事も「イエス」という答えしかない、止めるしかない。さきほど福島さんも言われたように、福島第一、第二、東海第二、女川、東通と太平洋岸の原発は止まっており、柏崎2、3、4号も中越沖地震以来再起不能、島根も止まっており、浜岡3基を除くと、ほとんど原発の出力などないのです。
 これで定期検査があります。この定期検査を具体的に考えると、原発で被曝させられながらひどい労働条件で働いている労働者の人たちが、今福島に集結させられている、そうすると日本全国の原発の定期点検なんてまともにできないと思います。ほんとうに安全を考えるなら、電力会社の立場からでも、運転再開できるはずはありません。今年の夏場で、最大で1,300万キロワットくらいの見通しですから、止めるところまでもっていけます。原発がなくても停電しない、とみな気がつくでしょう。
 自然エネルギーにせよ、という必要さえない、将来、エネルギーをどうするかということはありますが。原発を今全て止めるという行程では、資源エネルギー庁の公式発表資料で、自家発電が全国で6千万キロワットあります。原発は今年の3月10日まででさえ、4,900万キロワット程度でした。今年の夏でも、節電もライフスタイルの変更も工場の停止もなくて大丈夫です。電力会社はその電力を買い取りさえすればいいのです。普通の企業がしっかりした発電機を持っています。
 それを使って、今、原発を止めてしまうことが一番で、自然エネルギーを使うとか、いろんな選択はみな後で議論すれば良いので、今は日本人全体が生き残ることを考えるべきです。送電料金を下げさせる。送電線の開放は法律的に国会で議論しなければいけないけれど、今はそんな時間はないので、とりあえず送電料金を下げさせるように国会でも動いてほしいです。そこまでいけば、なんだ、簡単なことだ、と国民全体が気づくと思うんですね。

 福島
 計画停電がありましたけれど、あれも、きちっと大口のところと話をするとか、例えば夏のピーク時というのも、ほんの何日間かの日中数時間ですから、生活よりも大口利用者である工場にシフトを考えてもらうとか、工夫次第でできるんですよね。

 広瀬
 いや、でも、僕が言いたいのは、みなが節電しなくちゃいけないと固定的に思わされているのはそうじゃないんだということです。電力会社が15%節電を要請する行動に出ているのは、私の見るところでは、原発よりも送電線のほうがだいじなんです。独占利権をとられまい、と電気事業連合会はそれで真っ青になっていると思います。

 福島
 菅さんや枝野さんが、発電と送配電の分離、と言ったのは国会では初めてだったんです。自然エネルギーを作ろうが何しようが、接続料がとても高くて、地域独占だと、結局供給ができないのです。

 広瀬
 そうです。自然エネルギーの人たちにも言いたいのですが、送電線を開放してくれないと、それを自由に使うことはできません。まずは、送電線の開放の国民的な運動をやるべきです。そうすれば自然に原発の土台が崩れます。

 福島
 東電が持っている送配電は5兆円ときいたことがあります。総資産を国会できいたら13兆円と言って、送配電で5兆円、今、原子力の賠償をしなければいけないので、東電は送電線を国に売り、国は東電に接続料を払ってもらうという形で、将来的には、スマートグリッドとか、全国的にやれるといいのでしょうね。

 広瀬
 いや、スマートグリッドをやっている人やメーカーの人にきくと、スマートグリッドはとてつもないお金がかかるのと、資源コストとか、スマートメーターを各家庭に設置したり、標準化したりで、技術的に大変な壁があるというのです。情緒的にではなく、技術論で考えないとならない。われわれ普通のユーザーはそんなに賢くないのですが、ユーザーがスマートメーターをきちっと見るようにならないとあまり意味がないという装置、システムです。そういうものに過大な幻想を抱くよりは、今の現実で、火力で何も問題を起こしていないのだし、昔の火力と違うのだから、それをきちっと使っていくことで、乗り切ってほしいです。
 僕が原発反対運動を始めたときから思っているのは、電力会社は一度原発を全部止めてみろ、と。止めたら簡単にわかることです。電力会社は電気を売らないと儲からない企業ですから、絶対に手当するんですよ。電力会社は、自分達はどこから電気を持ってくればいいか知っているのに、なぜ15%停電などと言うかというと、送電利権を死守したいからです。

 福島
 東電の救済スキームがありますが、今こそ、ひっぺがしてとらないとだめですね。

 広瀬
 僕も昔調べて、送配電網の資産がほんとに大きい、発電所より大きくて、大変な問題がここにあることがわかりました。ヨーロッパでも、送電線開放から電力自由化になりました。日本は電力自由化になったと言いながら、使わせない自由化です、トリックを使って。経産省から電力会社への天下りも、金の問題ではなくて、送電網の利権を絶対に聖域として、自分の手の中に握るようにしてきたのが天下りの一番の問題であり、官僚が悪いのです。

 福島
 私は、原子力は未来のない産業だと思っていて、それを死守するよりは、新しい産業を作る、雇用を作る。今日もドイツの緑の党のもと環境大臣と話をして、35万人の雇用、太陽光も日本を抜いたとか、風力は海外に出す分をいっしょうけんめい作っている。日本もいろんな産業は必要で、しかも循環型で放射性物質を出さない産業が必要です。だから、極端に言うと、旧利権VS未来、という感じですね。

 広瀬
 今私の話していることは、電力会社対全産業の対立です。(福島:実はそうなんですね。)だから全産業を救ってくださいと言っているだけなんですよ。独占的な電力会社にだけ甘い汁を吸わせるのではなく、みなが豊かになって、小さな電力会社が日本中にいっぱいあるわけですから、それをみなで使っていけばいいというだけの話です。

 福島
 たしかに電力会社VS全産業ですし、全国民かもしれないですね。

 広瀬
 この議論は10年前にもあって、当時は通産省でしたが、通産省内が1対1くらいに分かれて争って、僕たちは希望を持ったのです。通産省は全部原発派かと思っていたら、省内にもすぐれた人がいて。

 福島
 そうですね、理性と知性と合理性で考えたらこれは、という議論があったんですね。

 広瀬
 電力自由化という方向に向かってかなり希望があったのですが、それが全部つぶされてきたのです。今こそ、国民的に完全電力自由化へ持って行く。あまり言いたくないけれど通信や鉄道など他の業界もそうなってきていますし、電力だけ地域独占というのはもはや通用しないと思います。

 福島
 地域独占と原発がリンクしていますからね、他のを入れさせないという。

 広瀬
 電力会社が原発をやめて、すぐれた技術をどんどん導入する、もうすでに導入していて東京湾岸では世界最高のガスコンバインドサイクルを並べているのだから、なぜそういう技術を持っていながら原発に拘泥するのか、そして国民を敵に回して嫌われるのは、彼らにとっても損だと思うし、電力会社の一般の社員だってそんなことはしたくないでしょう。だからこれは、電力会社の上層部の一部の人間の頭の悪さが招いている、ほんとうにつまらないことだと思うんですよ。

 福島
 中国電力本社にも二度行きまして、上関原発やめたらどうですかと言っても平行線だったのです。でも、さっき出た福井県知事と一緒で、山口県知事も、海面埋め立て許可は出したが原子炉の設立認可は出していなかったのですが、考えを変えて工事ストップとしましたからね。

 広瀬
 あの知事が変わって僕も希望を持っています。上関原発はとんでもない計画ですしね。で、新規の原発はもうないと僕も自信を持っていますけれど、今動いているものでは、福井県の若狭は老朽化がすごいんです。福島第一は事故を起こしましたが、1号機より前の年から動いているのが敦賀1号と美浜1号ですから、40年以上経っていて、ほんとに怖いんですよ。事故前には、それを50年にしようと言いだしていましたが、若狭を調べると、戦前にはやまのように地震が起こっているのが、戦後福井地震の後ずっと静穏期がほぼ半世紀続いて、それから、兵庫県南部地震、鳥取県西部地震、などと続いて今活動期に入っていて、戦前と同じ状態に戻っていると私は見ています。
 14基まとめて行くのでは、と怖くてしょうがないですね。ああやって止めてくれている西川さんに、日本中の知事が学んで、科学的にも学ぶべきだと思いますし、一元的に国の責任だなどという知事は住民はリコールしても当然ですね。

 福島
 福島原発事故以来、毎日リアルに感じているし、怖いし、そして子ども達や小さい命を思うと、大人の責任を感じます。いったん事故が起きたら故郷を失ってしまうんだという、美しい海、きれいな山、手入れのされた田畑、酪農家、学校、子ども達、保育園、とあらゆるものを失う、それと比較すると。よくコスト論で、今原発を止めたらLNGがかかるとか、自然エネルギーはコストも高いとか、冗談じゃないと思います。金と命なら命でしょう。

 広瀬
 立命館大学の大島先生が週刊東洋経済の特集で、コストを吟味して電力会社のとんでもない嘘をあばいています。経済誌が全部あばいているとおり、原子力は一番高いお金がかかっているわけだから、海江田さんが電気料金があがるなどとおどしをかけているけれど、調べてみろとどなりつけたい、原発にかかっているとんでもないお金を基準にせず、もとどおり下げたうえで話をしろと思います。電力不足、化石燃料のコスト、そういうでたらめのトリック、明らかな嘘を使って、まだ原発を維持しようという気が知れないですね。
 どうせやめるんですから。日本だけではなく、先進国の原発は1960年代から始まっていますから、みなもう寿命に近づいて、まとめて百基廃炉という時代に入っています。これから新設なんて皆無で、自然消滅することがわかっている。だからこそ今、アジア・中東に原子力を売り込み始めたので、それはもっと危険なことで、原子力に未来はひとつもないのだから、段階的とか延命策を考えるとむだなことで日本全体が苦しむのですから、どうせやめるのなら、早くやめたほうがいいと思いませんか。

 福島
 どうせやめるとしても、それまでの間に地震が起こる可能性もありますし、スリーマイル、チェルノブイリ、福島、の間隔は狭いんですよね。しかも、地震学者は、地下のエネルギーは活動期に入ったと言っていますものね。

 広瀬
 私は、みなさんが議論しているような悠長な時間はないと思っています。ともかく54基全部、一緒に止める、廃炉にしましょう。

 福島
 はい、ありがとうございます。

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