福島みずほのどきどき日記

大島堅一対談「原子力発電費用は安くない」概要(7月26日)

 福島
 こんにちは。今日は大島堅一さんに来ていただきました。立命館大学の教授で、「再生可能エネルギーの政治経済学 エネルギー政策のグリーン改革に向けて」(東洋経済新報社、2010年)を出していらっしゃる方です。
 今日も国会の中での超党派の勉強会やいろんなところに来て頂いています。
これは20年くらい研究されていらっしゃるんですね。

 大島
 そうですね。大学院に入ってからくらいですね。

 福島
 1967年生まれですからすごく早いですね(大島:そうですね)。どうしてこういう、コスト、原発は本当に安いのか、ということに着目されて研究されていらっしゃるんですか。

 大島
 私の専門は環境経済学なんですが、私の先生の一橋大学の寺西俊一先生から、環境問題は被害者がいる学問だから一番こだわれるテーマにしなさいという指導を受けました。
 だったら原子力だなとなりまして、原子力についてさまざま研究をしようと思ったんですが、エネルギー政策の中で原子力は中心じゃないかとある意味で言われていたんですが、それを財政の面から研究してみたというのがきっかけですね。

 福島
 すごく心強いです。私も2000年代に、再処理の費用が18兆円じゃないか、直接処理よりはるかに高い、なぜこれを嘘をついて隠してたんだ、と国会でやってコスト論をすごくやっていたのですが、当時は原発が安全というのが強かった。今は、ほんとにどうなのよ、政策どうするかというときに、私たちは本当に合理的に考えてどんな社会を選択するか、という点では、大島堅一さん頼りじゃないですけど、わたしたちも研究の成果にすごく拠っています。
 大島さん、原子力発電は安いんでしょうか。

 大島
 もともと原子力政策、原子力発電は、海外では普通は高いということなんですが、日本ではものすごく経済性があると非常に強調されますね。私自身は中立的に、本当に安いのか高いのか研究したんですが、今の政府の出している資料、2004年の電気事業分科会のコスト検討小委員会では、キロワットアワー当たり5.3円と、モデル計算上は安いということになっているんですね。
 あれは単なるモデル計算なので、一つ一つ前提条件を変えていけば、もちろん高くも安くもなるんですね。報告書を見ると、計算式は書いてあるんですが、データが正確に書いてなかったりで再現はできないです。ですので、実績値で見ていったんですが、実績値では、1970年度から2007年度まで全部集計すると安いとは言えないということになりましたね。

 福島
 とりわけ、電源三法に基づく立地のための交付金などが入ってないですからね。

 大島
 そうですね、原子力政策は国家政策として推進されてきたというところがあるので、単に電力会社にとってのコストだけではなくて、国民的な、国家としてどれだけ払っているのかという話が重要ですね。ですので、今お話いただいた交付金、これはとてもたくさん周辺自治体に払っています。もんじゅみたいに、技術開発を国が自らするというのもありますので、この二つを入れて考えないといけないと思っています。

 福島
 もんじゅ自体、人件費をのけて1兆円近くお金をつぎ込んで定量のワット数を出していないですからね。あと、再処理の費用も入っていないですね。

 大島
 再処理の費用も、電気料金の一部に一応は取り始めたんですけれど、全部は取ってませんね。もともと再処理だけで11兆円、バックエンドコスト事業全体で18.8兆円と言われていますが、そのごく一部がようやく国民から取るようになってきたということですね。

 福島
 一つは税金で国民が負担しているもの、それから、電気料金に加味しているもの、全部を入れたら非常に多いですし、六ヶ所村だけで18兆以上、19兆円というのも、六ヶ所村だけですし、もっと膨らむんじゃないかと言われていますね。

 大島
 今計算されている18.8兆円というお金は、六ヶ所再処理工場で再処理したり、そこから出てくる放射性廃棄物の処分費用だというものです。日本は使用済み燃料全て再処理するという方針でいますので、六ヶ所だけでは100%運転しても半量ですから、18.8兆円といっても、それが倍になるかどうかはわかりませんがかなり膨れ上がることは事実です。

 福島
 それともう一つ素朴な実感として、こないだも福島市にいったんですが、食べもの、牛、海、山が、それに東京にも、日本全国に食材が広がっている、そうすると、戦争の被害と同じくらい、計算できないというような、原発安いなんてよくも言ってくれたなという感じがするんですよね。この賠償費用って本当に全てのものを入れたら、計算できないくらいじゃないかと思います。

 大島
 そう思います。今、賠償関係でいろいろなスキームが出ていますけれど、因果関係がはっきりしている部分だけ、直接的なものだけに限って、政府の避難命令にかかわってのみがあたかも対象になるかのように論じられていますが、仮に払われたとしても一部ですし、例えば議論になっていますが精神的被害が一月あたり10万円、半年過ぎたら5万円になるとか、信じがたいことが入っています。
 ほんとうは原発の被害は出てしまうと、今おっしゃられたように自らの住んでいた街とか文化とか全てが失われてしまって、最近ヒヤリングを福島でやってたりしますが、本当に悲惨な現状で声が出ませんね。それは福島だけではなくて、汚染牛などもいろんなところに飛んでいて、濃淡あると思いますが、非常に広い領域に広がっていますので、経済的に全然割に合わないということだと思いますけれど、悲惨な現状ですね。

 福島
 これもあれも、やはり原発があってその原発が事故を起こす、すごく高リスクのもので、誰が悪い彼が悪いというよりも、もともと原発が問題なわけで、大島さんは非常にきちっといろいろな計算をされているんですが、お互いの共通認識で、今回福島の原発事故が起きて、原発の被害って計算できないくらい打ちのめされているという感じがしますよね。未来もわからないもの。

 大島
 どうなるかわからないわけですね。さまざまな被曝をされている方がいるわけですし、労働者の方など一番高濃度で被曝されているわけですね。彼らは超長期にわたって、経過観察するとは言っていますが、その人にとっては戻ってこないわけですね、命にしても、文化にしても。ほんとに原発の被害は恐るべきものだと思います。

 福島
 人の命を傷つけているわけですからね。でも、ぜひこの本を、あるいは大島さんの論文を読んで下さい。というのは、きちっと計算をして、この前提でこういうのだ、ってあって、原発が決して安くないことをきちっと立証されているんですね。
今度は、再生可能エネルギー、これは高いのか安いのか、についてはどうでしょうか。

 大島
 再生可能エネルギーは、日本は今議論になっていますけれども、世界ではもはやほとんどの主要国が走っていて、成長産業だからこそ投資しているんですね。もちろん今はある程度コストが高い部分もあるんですけれど競争性があるものは原発よりも安くなっているものもありますので、今の時点で見てはだめで、超長期にわたって下がっていくのであれば投資すべきじゃないかと、少なくとも主要各国はそうみて投資しています。

 福島
 今回、原発を止めるとコストが高くなるという議論もあります。燃料費が3.5兆円という計算をしているところもありますが、原発を止めると高コスト、ということについてはどうですか。

 大島
 追加的に火力を使わなければいけないので燃料費がかかることは事実なんですが、原子力を動かさないことによる便益があるんですね。原子力に関しては、電力9社が1兆7、8千億円くらい原子力だけの費用でかけています。もし仮にその部分が大きく減ってくるのであれば、3.5兆円といっても、初年度で2兆円なにがしのお金になってきますから。
 それで、総費用だけをとるのではなく、純費用でとるべきですし、仮に2兆円とか2.5兆円であっても、再生可能エネルギーで原子力を置き換えていくということであれば、だんだん再生可能エネルギーが増えるに従って燃料費が要らなくなってくるわけですね。ですので、トータルで考えて、ほんとにかかるのかどうかを判断しなければならないですね。

 福島
 それからさっき出た再処理のためのバックエンドの費用、再処理なんてやらないということになれば、少なくとも六ケ所の19兆円はないので、原発にかかるお金と今かかっているお金を引いて、そして自然エネルギーもだんだんコストが下がりますし、太陽も風も燃料費はかからない、自前のものなわけですから、安くなりますよね。それからよく、産業が外に行くと言われますが、これについてはどうですか。

 大島
 通常、経済学でも普通に観察していると、企業が外に移るときには、大きな要因になるのが労働コストで、もう一つは移った先の市場規模です。燃料コストで移動するということはほとんどないのですが、統計で見ると主要産業の製造コストに占める電力コストの割合は1、2%です。仮に電力料金が10%くらい上がったとしても、製造コストに占める割合は1、2%に過ぎませんから、それよりは為替の変動のほうがコストに大きく響くので、個別産業・企業は別かもしれませんけれども、基本的にマクロで見ると、それほど海外移転を促すようなものにはならないのではないかと考えています。

 福島
 よく電気料金が高くなったときに、アルミなどが海外に行くと言ったけれど、あれは何十年前の話で、電気料金を理由に海外に、というのは過去の話ですよね。

 大島
 アルミはかつて石油ショックの時、移ってしまったんですけれども、もうないので、例えば機械産業、特に自動車産業など、雇用も大きいし、GDPに占める割合も大きいのですが、そこに占める電力コストの割合は1%未満になっていますので、ほんとにそれで出ていくという要因になっていれば政策的にきちんと対処できる範囲だと思うし、対処しなければならないですけれども、なんか感情論でいつでも動くぞ、というのはあまりにも冷静でない、ある意味脅しと言われてもおかしくない、根拠のはっきりしない議論だと思いますね。

 福島
 原発は、国が、あるいは電気料金に上乗せできるので、つっかい棒があるわけですよね。そのつっかい棒を皆、見て見ぬふりというか、見ないようにしていた。自然エネルギーは初期投資についてはバーンと応援してやる必要があるが、産業がテイクオフして自立できるようになればもうそれ以上の応援が必要ないわけですから、可能性は大きいと思うんですよね。

 大島
 再生可能エネルギーの大きな基本は、今完全にテイクオフしていない産業を後押しする、もし仮に発電コストが下がってくれば追加的な費用は要らない、むしろ、入れてはいけない。原子力産業みたいに特定の産業にいつまでもお金を投資すること自体が間違っているんで、政策的なゴールが見えてきたときにはもうなくしていいんですね。
 今国会で審議されている固定買取制、あれはとても良くて、買い取り価格を下げていけば自然と追加的な費用が下げられる。しかも市場価格と同じになればもうそこに頼らなくてもよくなるわけですから、とても簡単にビルトインできる、そういう制度ですね。それで、固定価格買い取り制度をきちんと入れて再生可能エネルギーをテイクオフさせることが、日本経済にとってはいいんじゃないかなと思っていますね。

 福島
 あと、送配電の分離と地域独占なんですが、電力会社それぞれはネットワークを組んでお互いにつるんでいながら、互いに競争はないわけです。こんなに都合のいいことはない(大島:ほんとですね)。私を脅かす人間は誰もいない、そして、もし東電がいやでもそこからしか電力は買えないわけだし。

 大島
 日本では、発電・送電・配電・小売は全部垂直統合されて地域独占されているわけですね。大手の事業者は電気事業の自由化がありますので、他のところから買ったりしていますが、小売はできてませんね。ですので選べません。
 あともう一つは、再生可能エネルギーは送電系統ですね。ネットワークを垂直統合されて他の電気事業者と手を結んでいない、ネットワークを組んでいないところに問題があります。本来ならば全体でナショナルに大きな容量で系統をつないでおけば、再生可能エネルギーを入れるときに非常に簡単に入るんですが、今は非常に狭いところで区切っているので、実際の容量はあるのに買う量が非常に少なくなってしまっているということが起こっていますので、今すぐにでも発送電をきちんと分離して、再生可能エネルギーを後押ししていく必要があると思います。

 福島
 ずっと数字を出してきちんと研究してこられて、原発を国策として、あるいは電力会社が何でこんなに推進してきたのか。経済合理性から言うと、ハテナです。「十万年後の安全」という映画を見ましたけれど、十万年、百万年、お守りなんてできない、少なくとも地下水の豊富な日本のようなところで場所なんてあるのか、と思って、ちょっとでも合理的に考えたら疑問符いっぱいでやめるはずのものが、これだけ研究されてきて、何故原発にこれだけ入れ込んできたと思われますか。

 大島
 それは大きな問いですね。過去の原子力白書など見ますと、過去は非常に明るい雰囲気が漂っているんですが、原子力に対する将来、未来への期待があったんだと思いますね。わが国は原爆の被爆国で、だからこそ、もちろんいろんな政治的な要因があってアメリカのもとに原発が始まったということがありますが、基本はなぜ国民が支持したかというと、被爆国であるからこそ平和利用して、それをわが国が発展させるんだという気概や、それを支持する夢があったと思うんですね。
 ただそれが途中で安全神話、ありもしないのに言っている間に電力会社が信じてしまって、そういうところから変質して、あともう一つはさまざまな財政的支援ですね、実は特別会計など見ますとお金があり余るほどあるんですね、それで、ほんとうは財政需要があるからお金が必要ということで財政を作るのに、逆にお金があり余って財政需要を作っているという側面があって、目的と手段が入れ替わって、原子力を推進することがあたかも国策であるかのようになってしまったのではないかと思っています。

 福島
 立地勘定も、なかなか原発を作りにくいから、実はお金が余っているということがありますよね。税金もさることながら、実はこの電気料金の中にお金を積み上げて、広告費を幾らつけたって電気料金に加算できる、こんなぼろいことはないじゃないですか。市場原理から言えば、自分のところでたとえば広告費はこれくらい削減しようとか、景気が悪くなってきたから個々を我慢しようなのに、地域独占ですから電気料金に加算できるわけですよね。この電気料金の仕組みについてどう思われますか。

 大島
 電気料金の仕組みも、公益事業であるからこそ、さまざまな保護がなされているわけですね。一定の報酬率が認められて投資を促すことができるという、それは公益事業としては適切なんですが、広告費として東電は百億円以上持っているとか、本来公益事業がなぜそこまで持つ必要があるのかという、それもほとんど審査や検証もされずにいて、おっしゃられたような疑問が出てくるわけですね。私もその疑問を共有していますが。

 福島
 特別会計というか、一般会計に入れて特別会計的に数年前に少し変わりましたが、前に特別会計の中における広告費を調べたときに60億だか80億だかで、国会で質問したときにそれが少し下がりましたが、そもそも電気料金の中に広告費が莫大に、びっくりするくらい入っている。だから電気料金の仕組みも変える必要がある。わたしたちは合理性の中で、命を大事にする、そしてこの社会をどうするかと、立てるべきなのに、ほんとにこれって一体なんだろうと。原発のリスクについては、もし国が法律を作って電力会社はこの限度でいいですよとしなければ、どの保険会社も絶対に原発事故の保険を担保しないと思うんですよ。

 大島
 それどころか、原発の事故が起こったときに、被害補償の限度額が今はなくて、限度額をつけようという動きが出てきています。限度がないということは貸す銀行にとっては非常にリスキーだからですが、でも原発の事故の被害は実際に青天井にあるわけですので、ほんとは限度額をつけてはいけないのです。
 そこになぜ限度額をつけるかというと、そもそも原発は市場原理の中ではやれないということのあらわれだと僕は思っているんですね。被害は青天井なのに、損害額に天井をつけようとしている議論は非常に危険だと思いますし、青天井の部分は国民の懐から取ろうとしているので、本来はあってはならない、そういう電源であれば市場経済の中でやってはいけないということだと思います。

 福島
 私がずっと原発に取り組んできての素朴な疑問は、なぜ原発だけ生まれる前から現在まで50年以上にわたって、かくも異様に保護される業界というか経済領域があるのかほんとにわからない、で、電源三法もそうですし、損害についてもそうですし、市場原理が全く機能していない。市場原理がまともに機能したら、電力会社は原発をやらないんですよね。

 大島
 本来そうだと思います。そこでまかないきれない分を、財政とか国民の懐を当てにしてやっていますが、そこはもう一度費用の面から見直す必要がありますね。

 福島
 原発は本当に安いのか、いや違う、再生可能エネルギーは本当に高いのか、いやそうじゃないんじゃないか、今まで明らかにされなかったことを私たちはきちっと見る必要があるんじゃないか。そして20年前からきちっとコスト計算をしてどうかという提案をされてきた大島さんの実証的研究に励まされています。
最後に何かメッセージをお願いします

 大島
 私自身は本の中で安全性とか危険性を議論しているのではなくてずっと費用計算しているのですが、こういった不合理なことがなぜ起こっているのかと考えると、本質的には財政の仕組みとか利害関係から来ていると思います。エネルギー政策の決定のあり方も、私から見れば非民主的ですし、その仕組みを今変えるチャンスだと思います。
 これ以上の衝撃はないと思いますし、ないようにしてほしいですが、もしこのまま何も変わらずに、必要だよねと、何もなかったかのようになれば、半永久的に変わらないだろうと思うので、そこを非常に懸念しています。民主主義が貫徹するようなエネルギー政策の仕組みにしてほしいですね。

 福島
 政府のもとにエネルギー・環境会議があるんですが、資料は出てくるんですが、他は公開でもなんでもない、その元にある幹事会は資料も議事録も公開もされていないんですね。ですから合意なき国策を進めてきて、国民的議論も合意もなかった、知らせてこなかったわけです。今度はエネルギー政策は、日程も情報公開し、全部リアルタイムで知らせ、議論をしっかりやっていくということが必要だと思います。
 経済産業省がやっている賢人会議に脱原発の人はいないじゃないですか。何でこんなにふざけたことを未だにやっているのかと思いますが、きちっと国民に対して説明しながら、実はおおもとのデータも細工されているとも思っているので、私たちは曇りなき目でしっかり見なくちゃならないと思っています。電力の需要は高く見て、供給については低く見ているんですね。
 水力発電も資源エネルギー庁の説明では6割くらいしか見ていないんですよ。渇水の時の最低のものなんです。データで出てくるのに、実は大元のものは細工されている、それをしっかり情報公開をさせていく中でみなの議論をしていきたいと思っています。その意味で大島堅一さんは、データを、根拠は何でどういう議論をしていて、何が入っていなくてどうかということを数字の上で緻密に正確に、でもわかりやすくやってこられた方で、この研究に意を強くして頑張ってやっていきたいと思っています。今日は本当にありがとうございました。

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