福島みずほのどきどき日記

阪上武対談録「すべての老朽原発の廃止を」(8月25日収録)

 福島
 阪上さん、こんにちは。ずっと福島原発の老朽化した原発の問題に「フクロウの会」で取り組んでこられたり、いろんな活動をされていらっしゃいますが、まずその意味やきっかけについて教えて下さい。

 阪上
 「福島老朽原発を考える会」というのですが1995年にできた会です。その前に福島第二原発で大きな事故があって、それに対して一年半くらい運動があったのですが、それにかかわったことがきっかけです。普段は東電の本社と折衝しながら、原発の安全上の問題とか、究極的には脱原発を目指していきましょうということで動いていまして、柏崎原発、浜岡原発などがテリトリーです。

 福島
 柏崎、浜岡もそうですが、福島の原発についてずっと取り組んでこられましたものね。実際、老朽化の問題や耐震設計の問題が今回の原発事故で本当に出てきたと思います。福島原発に取り組まれたということもあり、今も福島の問題にずっと取り組んでいらっしゃいますよね。この間、一緒にやったこともたくさんありますが、この間の活動や最近の取り組みについて話してください。

 阪上
 事故後、一つ大きな動きがあったのが、学校20ミリ問題で、きっかけは事故直後に測定器を福島に届けようという動きをしまして、なかなか届ける相手が、皆さん避難しておられて難しかったのですが、たまたま20年前に一緒に動いていた人の手にわたって、その人たちは最初に学校を測ったんですね。なぜかというと、学校の再開が通常通りやるということになっていたので、測ってみたら非常に高い値が出て、それをもとに県に要請をして、学校の休校については結局聞かなかったんですが、県内一斉に測定をしますということと、国に学校の安全基準について確認しますということは約束してくれて、県内一斉に1,600カ所くらい測って、それで初めて、福島・郡山など、中通という地区の汚染の実態が浮き上がってきました。
 その中で特に放射線管理区域と言われる線量を超えるような学校が7割以上、福島市内では99%ということで、改めて、学校の値をとるように、そこから進めるようにという要請書を出したんですね。その2日後に文科省が20ミリシーベルトという安全基準を出してきて、当時福島では福島県のアドバイザーが100ミリシーベルト以下は大丈夫だみたいな宣伝をずっとやっていましたので、放射能について心配だと思っている人たちが、まわりは大げさなことを言うなという雰囲気もありましたのでなかなか声をあげられなかったのですが、やはり20ミリという20倍の基準だけゆるめられて何も手を打ってくれないということに対して非常にお母さん達が怒って、それが私たちのブログへの書き込みという形でどっと寄せられまして、300通か400通かけっこうな数で、これは大変だと地元の方と相談をして集会をして、皆さんに集まっていただいたんですね。
 集まってグループの中で自分の思いのたけを吐き出すという集会だったんですけれども、それを2回位するなかで本当に心配な方がいっぱいいる、その問題に自分達がちゃんと向き合わなきゃいけないと、子ども達を放射能から守る福島ネットワークがその場で結成されて、東京では政府交渉を福島さんにご協力いただいていろいろ設定してやりながら、文科省に対して20ミリシーベルトを撤回させようと、特に5月からは国会の中でもいろんな人が質問してけっこう社会的な動きになって、5月23日にはバスで福島から来て文科省で直接交渉をして、ようやく27日に文科大臣が1ミリを目指すと言って成果が出てきたという、そういう動きですね。

 福島
 そうですね、1ミリシーベルト以下を目指すということと、それまで除染には国は1円もお金を出していなかった、自治体がやっていたけれどバラバラだったんですね。ですから国が国の費用で除染をするといったのは前進でしたよね。あのとき、福島からお父さんお母さん達が子どもも連れてバスに乗ってきて、みなさんの「子どもの命を守れ」という声は文科省を動かしたと思いますよね。
 8月末までに暫定基準の20ミリシーベルトは見直すと言っているので、どういう中味で見直すかということもありますが、実は今日も行政交渉をずっとやっていたのですが、最近取り組んでいることについて教えて下さい。まず、福島の子ども達の尿から放射性物質が出るということの検査もなさいましたね。

 阪上
 学校20ミリの問題は、1ミリを目指すと言っていますが、それが学校の中だけだとか、内部被曝は除外するというような問題はまだ含んでいてそれで今日も行ったのですが、内部被曝や学校の外も含めてトータルにいかに子ども達を守らすかというのが重要になってくると思います。尿検査については3月に事故があったあと、4月5月と時が経つ中で県民の被曝の問題は当然焦点になってくるのですが、専ら外部被曝ばかりが問題になっていて、実際に内部被曝がどうだったのか、事故直後に吸い込んだ影響とか、食べ物からの影響もありますので、それにちゃんと焦点が当たっていなかったということもあり、フランスのアクロという独立の放射線計測機関から、尿をはかるなら協力しますとのお申出を頂いて、子どもネットに呼びかけますと、呼びかけてから1時間くらいで応募があり、10名くらいのお子さんの尿を検査するという作業をしました。
 結果は、10人中10人からセシウムが出ているというショックなデータが出て、値そのものをどう評価するかは1回の検査では難しいということで、むしろ実際に内部被曝の実態があることを明らかにするなかで、行政にちゃんとホールボディカウンターなり尿検査なりで内部被曝の実態把握をきちんとやらせようという、そんな観点で動いています。

 福島
 国会の中でもホールボディカウンターのことを質問したり、内部被曝を質問していますが、給食のことについても、福島市長と平和記念式典の前日に会って話したり、新聞にも出ていますが、福島市はベラルーシから機器を購入して給食については測る、他の自治体でも横浜市はピックアップ方式でやったりと広がっています。
 子ども達の内部被曝を防ぐためには、子ども達が必ず食べる給食の放射性物質を測り、高い場合は排除する、ということも第一歩だと思うんですね。これをなんとか文科省がそういうふうに踏み出すように何度も何度も交渉している最中ですね。それについて話していただけますか。

 阪上
 給食の測定については、測っている自治体、積極的に動いている自治体、そうでない自治体などがあって(福島:福島市は2学期からですね)、文科省はいろんな自治体が動いていることを把握しようとしている感じはあり、測定の機械をどうするかとか、誰がどんな責任を果たすかとか、そんな問題もあるのですが、お母さん方としてはまず実際に測ってその数値を出してほしいと、横浜市ならいつのどの野菜が何ベクレルまでとの表示が出ますので

 福島
 それは高いと排除するのですか、それともベクレルが出れば排除するのですか

 阪上
 今のところ、数字の出ているのが検出限界以下ばかりなので。

 福島
 私も全国でやってほしいとブログやツイッターで書くと、全国のお父さんやお母さん達からやってほしいと来るんですね。でも、まずとにかく福島県から始める。子ども達も外部被曝も他の県に比べて高い可能性があるわけだから、少なくとも福島県の子どもたちについては食材はできるだけ安全なものを、何か数値が高ければ必ず排除するというのをするべきですよね。
 今、自主避難や避難の権利について取り組んでいらっしゃいますが、最近の取り組みのことも話してください。

 阪上
 今、避難の権利を確立しようという動きをしていまして、なかなか避難区域の外側、福島や郡山などの線量の高い地域にいながら、政府の設定した避難区域の外にいるために支援や補償が受けられないでいる、あるいは逃げたくても経済的な理由でなかなか避難ができないという人たちがたくさんいて、非常に困っている、あるいは避難をしたとしてもきちんとした生活の保障が受けられない、めどが立たないということで非常に苦労されている方がいっぱいいらっしゃいます。
 その中で避難の権利を確立しようということで、一つは自分の被曝の状態とリスクを正確に把握してどういう方策をとるべきかと判断できる状態にするという、知る権利と、あとは避難を決意した時に行政的なサポート、避難先の確保なり仕事の斡旋なり、そういう状態にするというのと、あとは補償ですね。
 自主避難者に対しても、例えば水素爆発や線量の高いのを見て、特に子どもがいる場合には逃げざるを得ないというような、正当な理由をもって逃げた場合にはきちんと東電によって補償がされるという状態にしてほしいということで、それは紛争審査会に要請をしたり、東電に対して請求書を提出したり、そういう動きをしています。

 福島
 紛争審査会で交渉をして新聞に出ましたけれども、検討するとなりましたものね。線量が高いために自主避難をされた方々が全然だめということではなく、検討するということなので、そこでは交渉の余地がずいぶんあるわけですね。弁護士会なども入って、ADR、つまり紛争外解決、お互いに調整をしてそこでやるというところも、もし自分は放射線量が高くて避難をしたという場合は、いろんな仕組みを今後使ってそこで請求していくということもありますね。あと、集団避難、集団疎開も言っていらっしゃいますよね。

 阪上
 福島の人たちと県や自治体に提案しているのは、一つは、今ある避難区域の外側に、選択的避難区域、強制ではなくて自己判断ができる、判断した場合もしない場合もそれなりに支援が受けられるというような、準避難区域的なものを設定してほしいというのが一つ。
 それから避難する場合に、個別に好きなところにばらばらに行ってもう戻ってこないみたいになるのではなくて、地域の、コミュニティの、残る部分と避難する部分というふうになると思うんですが、避難する部分はコミュニティを維持した形で、学校を核とする疎開、それでまたまとまって戻ってこれるというような措置が取れないかどうか提案しています。

 福島
 私も茅野市に行ったときに、茅野市とカタログハウスで、カタログハウスも大きく寄付をして、福島の子ども達を夏休みの間、茅野市で子ども達のサマーキャンプみたいにする、あるいは北海道でもそういうことをとても取り組んでいるNGOがありますし、枚挙に暇がありませんが多摩市だって沖縄だってそうだし、各地で、自治体や場合によってNGOで福島の子ども達を引き受けるサマーキャンプなどもありましたし、実際、補正予算の中にサマーキャンプの分の予算が入ったりしました。でも、サマーキャンプでもいいんだけど、一人だけ行くと、又戻ってきた時にいじめられるんじゃないかという心理も働くようで、まとまって放射線量の高いところで集団疎開、もう一つの福島じゃないけれど、そして、除染をしたり、良くなったらまた戻ってくるというのは必要ですね。
 ひとつは今、除染について、削ったりいろんなことをもっともっとやろうと。児玉教授が衆議院の厚生労働委員会で発言をされ、また官邸に行って菅総理に、子供たちを守るためにと除染について申し入れをしたのですが、それについても、除染をやると、どういう形でやるかとか、総合的にどうするかというのは体系的に出したいと。私が聞いているのではおそらく26日にでも細野大臣が除染について出すということです。除染は、いろんな場面で総合的にやらなければいけないことも、莫大なお金がかかることも、大至急やらなければいけないことも、そこで生きている人がいるわけだから、もちろん国が何はともあれ、やらなければいけないことなんですよね。でももう一方で、除染をやっている間も被曝をするわけで、どんどん何ヶ月も経っていくわけだから、大人もさることながら、子どもたちについては、集団疎開というか、その一帯の放射線量が低くなるまでは集団疎開は是非やりたい、子どもを放射能から守るためには政治はやるべきだと思っているんですよね。どうでしょうか。

 阪上
 そうですね。言われたように除染については長期的な視点で取り組まなくてはいけなくて、除染か避難かとか、避難させないためにとりあえず除染というのではなくて、除染と避難は両立させなくてはいけないですよね。子どもはいったん避難させ、しっかりと除染したうえで戻ってきてもらうというような全体の長期的な戦略みたいなものが必要ですね。

 福島
 除染は絶対に必要だと。しかし、それもまた総合的に、正直お金も莫大にかかるので。ただ、除染があるから避難しなくてもいいというのではないと。もちろん、避難が必要ない子どももいるかもしれないけれど、より安全なために、あるいは放射線量の高いところは少なくとも。日本弁護士連合会が、放射線管理区域よりも放射線量の高いところの子ども達は避難させるべきだと言っているのが一つの基準とも考えられると思っています。

 阪上
 それは是非そんな形で、避難と除染を両立させることが必要ですね。

 福島
 除染が先行しても避難が進まないというのは問題で、それは両方、絶対に必要なんですよね。

 阪上
 避難させないための除染となってしまいますと、除染作業している間に子ども達が被曝してしまうという問題もありますし、どうしても短期間ということになると、その場で水を流して、汚染したものをそのまま下流に流すみたいなそんな対応になってしまいますので、もっとトータルに最終的に放射能そのものをどこにどう処理するのかを含めて、それと避難政策をうまく結合して、戦略を立てていくというのが重要ですね。

 福島
 8月中に20ミリシーベルトを打ち出した文部科学省が、20ミリシーベルトで大丈夫と言っているわけではないが、これをどういうふうに変えるのか、私たちは撤回と思いますが、で、今日の行政交渉であったのは、1ミリシーベルト以下といっても、それは内部被曝も含むのか、校庭だけでなく、学校への通学路なども含めて総合的に1ミリシーベルトだと、今日もそこがずいぶん議論になりましたね。

 阪上
 今の法定の基準が1ミリシーベルトだから、1ミリシーベルトにしますよと言われると、ついにやってくれたかという感じになるんですが、よくよくきくと、いや、学校の中だけだとか、あるいは食品は食品の基準がまたあって、がれきはがれきでまた1ミリだと、いろんな1ミリがあって、足し合わせると幾らになるんだみたいな、そうなってくるとちょっとまずいんで、トータルに子ども達をとりまく環境全てにわたって、1ミリに総合して抑えることができるかどうかという観点で見ていかなければいけないと思っています。

 福島
 これから厚生労働省が原子力安全委員会にも言われ、食品の暫定基準値も変えるわけですよね。それはきっちり厳しくしっかりやってもらう必要がある。しっかり蛇口を閉める、そして農産物や海産物については補償もちゃんとやっていくと、だけど基準値は厳しくやってくれと。汚染牛が流通したということはあるわけだから、うっかり知らない間に流通することもあるので、給食はきちっと放射線を測ってくれ、福島から始めて全国に拡大してくれ、とこれはありますよね。
 そしてもう一つ、20ミリシーベルトを事実上撤回して、じゃどうするかとなったときに、1ミリシーベルトといっても内部被曝やいろんなものもあるから、パッケージとしての1ミリシーベルトで、内部被曝をどうなくしていくのかという。これからいろんな数字が出てきたり、ほんとにまだがんばり時ですよね。
阪上さん自身が、今後こういうことを取り組みたいというものがあったら教えてください。

 阪上
 避難の権利運動という形で、避難したいと思っていてもなかなかできないでいる人たちが避難できる環境をどう整えていくかですよね。あるいは、避難して、でも避難先で生活に苦労している人たちもいますので、その人たちにもしっかりと補償ができるような、そういった動きを継続して今後も続けていきたいと思っています。

 福島
 そうですね。除染と避難とを両立させるというのは、福島に何度も行くと、残って生活している人と避難した人と、それから年齢やいろんなことによっても、人によってずいぶん捉え方が違う、でも、私は、ほんとに被曝をとにかくなくするために、子どもを持っている人や若い人たちの避難をほんとに応援するようにしないと、あとから、あの時避難していればよかったとか、あのときああすればよかったとかいうことだけはなくしたいと思っているんですよね。

 阪上
 そのとおりだと思います。

 福島
 阪上さんも裁判やいろんなことに取り組んで、もともとの出発点は老朽化した原子炉を廃炉にということですから、日本全国、老朽化した炉はいっぱいありますから、それはほんとにやめてもらわないとならないですね。今日はどうもありがとうございました。

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