福島みずほのどきどき日記

3・11以降の国会報告 その2

 第5 労働者被曝について

 被曝、そのなかで働く人たちの被曝や労働条件の問題は、今でも続いている重要な問題である。
 労働者被曝については、「原発ジプシー」(堀江邦夫著)という本もあれば、樋口健二さんの写真集、藤田祐幸さんの嶋橋さんの労災についての本もある。
 多くの取り組みがなされ、それぞれ労災認定を応援する運動もあった。
 3月11日後も多くの団体が、何度も何度も行政交渉を続けている。
 また、原発で働く労働者ばかりでなく、20キロ、30キロ内で働く公務員のみなさんの被曝の可能性も重要な問題で、社民党として、申し入れなどを行なってきた。現在、汚泥処理やがれきの処理、除染にあたる人たちの被曝の問題、港湾などで働く労働者の被曝の問題などたくさんの問題がある。

 ここでは、とりあげてきたことであまり知られていないことなどに絞って書いていく。
  
 1.3月11日以降、週刊現代などをはじめとして、週刊誌、新聞、インターネットなどで、原発で働く人たちの被曝、労働条件、食事、待遇、騙されて原発で働かされたことなど、様々な報道がなされた。

 食事の改善などを厚生労働委員会で質問をした。
 ところで、新聞に、働いていた人たちで、たどれない人たち、行方不明の人たちがいるということが報道をされた。
 なぜそうなるのか。 
 原発で働く人たちについて、電力会社も厚生労働省もそもそも把握をしてこなかったのである。
 下請け会社に振り、そこで集められた人たちが働くのであって、そもそも電力会社は、直接把握をしていないのである。だから、今回の福島原発事故の直後からも東京電力、厚生労働省は直接把握をしていないのである。
 
 このことについて、2012年7月14日、厚生労働委員会でわたしが、質問をしたときに、当時の厚生労働副大臣小宮山洋子さんが次のように答弁をしている。

 「厚生労働省といたしましては、昨日までに原則3月、4月中の新規従事者全員の内部被曝測定を終了するように指示をしました。132人の連絡先不明者が判明をしたということは大変遺憾に思っています。」

 「なぜこういうことが起きていたかといいますと、以前は紙台帳に事業場名と名前だけを書かせていたんですね。ただ、その後、それでは駄目だということで免許証などでちゃんとチェックをした作業員証、裏にバーコードも付けたものに、発電所内は4月半ばに、Jヴィレッジでも6月8日にしていますので、それ以前のところはどうしてもこういうものが、その管理がきちんとなっていなかったために出てしまっている、そこも徹底的に調査をするようにというふうに言っておりますし、今後そういうことが出ないような対応も今取らせているということです。」

 結局、今まで一人ひとりをチェックするということにしていなかったために、今回も行方不明の人たちが出てきてしまっているのである。

 2.放射線量のチェック
 働いている人にとって、毎日毎日自分がどれだけ被曝をしているか知り、チェックし、また、累積してどれだけ被曝をしているかを自分でわかっている必要がある。
 日々の労働にまぎれていると、自分できちんと記録をしようとならなくなってしまう。きちんと記録を本人に渡し、また、積算のデータも本人に示すべきなのである。

 今までは、放射線管理手帳は、たとえばある発電所を辞めて、次の発電所で働くときに、働く人に交付をされるというものであった。これはおかしい。
 妊娠したときに、自治体から交付される母子手帳は、その母子手帳を母親が手元に置いて、自分や子どもの体重や変化を書き込んでいくもので、自分と子どもにとって、貴重な記録となるものである。
 どうだったっけと思えば見ることができるし、身長や体重などつい忘れてしまうことも記録として残り、変化が良くわかる。
 手帳は本人のものであり、放射線管理手帳も実は本人がもって、確かめ、記録として本人が持っておくべきものではないか。
 そのことに取り組んだ。

 そのことについて、7月14日の厚生労働委員会で、当時の副大臣である小宮山洋子さんは、わたしの質問に対して、次のように答えている。
 
 「これまでも累積の線量については放射線管理手帳というのがあるわけですね。ただ、委員がおっしゃるように、確かにそこで働いている人たちが日々ちゃんと自分の被曝線量が分かるようにすることは必要だと思っていますので、先日もお答えしたように、紙によって日々通知をするようにいうことで、これは東電も準備を進めていますが、レシートみたいな形なんですけれども、それは出すようにはしていまして、あと、1月ごとぐらいには文書でそれをまた出すようにというふうにも指導しているところです。その放射線管理手帳との関係も含めて、どのような形がいいかは更に検討したいと思います。」

 現在どのようになっているかについて、再度確認をしてみる。
 また、データベースがどうなっているのか、他の原発ではどうなっているのか確認し、また、報告をします。    

 3.下請
 2004年8月9日、福井県美浜原発3号機で、配管が破裂し、熱湯が噴出して、作業をしていた5人が死亡、6人が重火傷を負うという惨事があった。わたしは、その現場検証の最中に、社民党の視察団として、現場にはいった。そのとき、死傷された人たちは、下請けの人たちであった。
 
 厚生労働委員会で、6月16日に質問をした。

 質問(福島みずほ)
 今日、改めてお聞きをします。雇用形態、例えば一番多くて何次、下請があったんでしょうか。

 答弁(平野良雄さん)
 厚労省では、現在、福島第一原発の方で、いわゆる協力会社というのが22社ございまして、その下にいわゆる下請というものがあるわけでございます。
  その実態につきまして、5月26日から6月15日にかけまして実態の聴取、把握をいたしました。その結果、一番多いところで、下請の次数につきましては4次というふうに把握をいたしております。

 質問(福島みずほ)
 日給はどういうものでしょうか。
 
 答弁(平野良雄君)
 日給につきましては把握してございません。

 質問(福島みずほ)
 1度弁当ぐらい入れたらどうかと言ったら、1週間に何回か、毎日ではないが弁当が入るようになったようですが、でも相変わらず食事はレトルトが圧倒的に多いですし、是非、日給の把握、労働条件について、厚労省、労働局が身を乗り出して実態調査をされるよう強く申し上げます。

 しかし、全労働者の労働条件の把握ということは実現をしていない。


 第6 核燃料サイクルについて

 1.核燃料サイクルの危険性
 核燃料サイクルとは、ウラン採掘に始まり、ウラン濃縮、ウラン燃料の製造加工、原子力発電、使用済み燃料の再処理、高速増殖炉による発電、これらのサイクルから発生する低・高レベルの放射性廃棄物の処理・処分の連鎖を言う。核燃料サイクル施設とは、これらのうち、原子力発電以外の事業を行なう施設のことである。

 再処理技術は使用済み燃料を溶解して液体状にした上で、プルトニウムとウランを分離して、プルトニウムを取りだす技術である。
 
 世界で、重大事故が続出している。
 そもそも核燃料の燃料ペレットに閉じ込められていた放射性物質を溶解する作業を伴うため、事故によって放射性物質の放出が始まると、甚大な被害となってしまう。
 また、事故が起きなくても、環境への放射性物質の放出は原発よりもはるかに多く、問題のあるものである。 
 
 2012年1月5日付けの東京新聞は、今まで核燃料サイクルに10兆円の費用が投じてきたと論じている。これほど莫大な費用を投じながら、頓挫をしている。諸外国がとっくの昔に、放棄をしているこの再処理をまだ、日本がやろうとしていることは、全く理解ができない。機構のなかに、再処理のための費用が、現在、3兆円近く積んである。これからもドブにお金を捨てるように、再処理に費用を投ずるのか。全くの無駄であり、危険である。この3兆円こそ、国民のために、有効活用をすべきである。
 
 使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取りだし、このプルトニウムを高速増殖炉で使うという計画は、そもそも高速増殖炉が頓挫し、できないために、全く意味のないものとなっている。高速増殖炉もんじゅはナトリウム火災事故を起こし、14年間停止し、ようやく動かしたと思ったら、今度は、炉内中継装置を撤去しようとして、この装置が原子炉内に落下をしてしまった。落下した装置をようやく引き上げたが、ナトリウムを使っているために,原子炉内がどうなっているのか、目視できず、どうなっているのかわからないのである。それでも一日5500万円を使っているのが、高速増殖炉もんじゅである。このもんじゅは、2003年1月27日に名古屋高裁判所金沢支部は、もんじゅの原子炉設置許可処分は無効であるとする住民原告勝訴の画期的な判決を出しているほどである。
 この判決は、不当にも最高裁が変更をするが。

 高速増殖炉もんじゅは、廃止し、廃炉にするしかない状況である。動かすことは、危険であり、成功しないもののために、多額の税金を投入していくことは、無駄であり、愚かなことである。
 
 もんじゅの話が長くなったが、高速増殖炉もんじゅが廃止になるということは、再処理をやる意味がないということである。プルトニウムを取りだして、もんじゅで使うということがなくなるからである。

 2.再処理のコスト
 わたしは、2004年3月17日、参院の予算委員会で、再処理事業のコストと直接処理、つまり再処理をしない場合のコストについて質問をしている。
 再処理の費用は、六ヶ所だけで、19兆円である。当時の税収は50兆円くらいだった。税収に比べてもあまりにあまりに、あまりに多額。1ヶ所の1つのプロジェクトに19兆円も使うのは経済合理性から言って全くおかしい。
 再処理をしないで、直接処分をすれば、コストはかなり安くなる。
 では、再処理をしない場合のコストは、いくらか。
 日本の役所であれば、コスト計算をしているはずだと思ったが、聞いても数字が出てこない。単純に処理する場合のコストも計算をしているという噂が広がっていたが、役所に聞いても、うまく数字が出てこない。何か変。どこか変。とても変。計算をしているのか、してないのか。しているはずだ。そこで、このことについて質問をすることにした。
 
 質問(福島みずほ)
 私が質問しているのは、安全性の問題もさることながら、コストが余りに大きい。19兆円というのは、それは日本の経済にとっても大きな痛みとなってしまうんではないか。
 では、お聞きします。再処理をしない場合のコストは幾らでしょうか。

 政府参考人(日下一正資源エネルギー庁長官)
 私どものところ、日本におきましては再処理をしない場合のコストというのを試算したものはございません。
 これは、昨年10月に閣議決定されましたエネルギー基本計画におきましても、核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的な考え方としていることも受けているわけでございます。しかしながら、一定の条件の下での計算でございますから、必ずしも我が国に直接あてはめることはできませんが、OECDのレポートにおきまして、再処理をする場合の方が再処理をしない場合 と比較して約1割程度費用が高く掛かるという試算もなされていると承知しております。

質問(福島みずほ)
 国がある政策を取るときには、その道に突き進むのか、やめるのかというコスト計算をきちっとすべきです。コスト計算をされていないということについて、つまり、この19兆円が果たして必要なものか、そうでないのかについて、あるいは他の道のコストが幾らなのか計算をされていないと。日本ではこれからもこのコスト計算はされないのでしょうか。
   
 実は、政府は、直接処分をした場合、再処理のコストの約4分の1であるということを1998年に計算をしていたのである。
 その報告書をわたしは、後に見で、本当に驚いた。
 しっかり計算し、しっかり報告し、その上で、こんなものを見せたら、反対の声が強くなるとして、表に出さないことにしているのである。完全な隠蔽である。その審議会には、電力会社も参加をしている。再処理が高くつくから、国民で負担をなんて言えないはずなのである。高くつくことは、電力会社も百も承知だったからである。
 知らされなかったのは、国民と国会である。
 
 この答弁は、だから明確な虚偽答弁である。

 「原発社会からの離脱-自然エネルギーと共同体自治に向けて」(宮台真司、飯田哲也著 講談社現代新書)ではこのときのことが記載をされている。部分的に引用をする。

 <飯田哲也さん>
「当時の経済産業省の村田さんなどは、経済合理派で、六ヶ所再処理工場を当時止めようとした。
  その状況で、東電企画部が経産省に「六ヶ所をなんとかしたい、このままでは東電の経営が危ない」と相談をしたところ、原子力課長が全部はねつけて、退路を断ってしまったのです。
  福島瑞穂さんの国会で「再処理と直接処分の経済性を比較したことがあるのか」と質問して、当時の日下一正資源エネルギー庁長官が「いままでは検討したことがありません。これから検討します。」と答弁をした。実は日下さんの後ろのキャビネットには、直接処分のほうが安くつく報告書があったのです。明らかに虚偽答弁です。」

 この虚偽答弁は、問題になるもののその後、経済産業省内の経済合理派、再処理をすべきではないという人たちの方が弾圧をされていく。
 
 この問題について、わたしは、2004年10月20日に改めて質問をしている(参議院予算委員会)。

 質問(福島みずほ)
 まず、核燃料サイクルのコストについてお聞きをいたします。
 この予算委員会で、三月十七日、再処理のコストは十九兆円、しない場合のコストの試算はあるかと質問しました。そのような試算はありません、これが答弁でした。しかし、それは虚偽、間違っていました。これだけ資料が出てきて、十年前に通産省の審議会で議論し、このような試算は出さないようにしましょうと十年間隠ぺい、封印をしてきました。
 この点について、大臣、謝罪をお願いいたします。

 答弁(国務大臣中川昭一君)
 委員御指摘のとおり、本年三月十七日の福島委員の御質問に対して、当時のエネ庁長官がそういう資料はございませんという答弁をいたしました。その後、あの新聞等にも出ましたので調べたところ、答弁者で、答弁者並びに答弁作成者は、その時点でそういう平成六年の審議会の資料があるということを知らなかった。知らなかったからなかったというふうに作成し、そして答弁をしたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、結果的に、福島委員のこの国会の正式の場における御質問に対して結果的に間違った答弁をしたということで、この場をおかりをして、福島委員、また原子力というのは国民の理解と信頼に基づくわけでございますから、そういう意味で国民の皆様におわびをし、と同時に、その両名並びにもう一名を七月付けで私から訓告並びに厳重注意、そしてその後、更に精査をいたしまして十人に、十人に対しまして私から厳重注意を八月に行ったところでございます。

質問(福島みずほ)
 この予算委員会で虚偽の答弁がされたことは重大だと思います。
 違いますよ。この答弁書の作成者、安井正也さん、当時原子力政策課長、三月時点、十年前にこの部局の総括班長でした。知らないわけないですよ。これだけ審議会で議事録をやり、このような試算を出すと計画が通らない、再処理の計画が通らないからやめましょうという話合いを、議事録をお配りしておりますが、出しております。知っていたんじゃないですか。

 答弁(国務大臣中川昭一君)
 ですから、今年の三月の答弁作成者は、今、福島委員御指摘のように、十年前の審議会、いわゆるその資料を、資料というか、この問題に取り組んだ審議会のときの担当課の総括班長でございましたけれども、しかし、その後の省内での徹底的な調査を省を挙げてやったわけでございまして、三月における答弁作成者である担当課長にも何回も長時間にわたって、知らないのかと、どうだったんだというふうに聞きましたが、答弁作成責任者、担当課長は知らないということでございまして、またそれを覆すだけの、全部で二十五人ほど徹底的に関係の職員を調べましたけれども、まだそれを否定する状況にはないということで、結果的に、その担当課長は知らないということを我々としては受け入れたということでございます。

 質問(福島みずほ)
 信じられるでしょうか。十年前、担当課の総括班長であった。そして、再処理のコストは十九兆円、しない場合のコストはそれよりもはるかに安いというのが出ていて、答弁の作成をその人がして、そんなこと知らなかった、そんなことはあり得ません。
 問題なのは、十年間、こういう議論を国会の中で、国民の皆さんの中で、地元で議論することを封殺をしてきた、そういうことです。このような計画は白紙にすべきではないですか。   

 ここで、中川大臣は、答弁者と答弁作成者は当時知らなかったと答えている。
 しかし、これは明確におかしい。大臣は、はっきりと、2004年3月に「試算したものはございません。」と言う答弁を作成をした者は、この問題に取り組んだ時の審議会の担当課の総括班長だったと答えている。
 自分が仕事を担当をしているのに、知らないなんて訳はない。また、当時の記録をひっくりかえせばすぐわかることだ。答弁を作成するときに、調べないわけはないし、また、調べる以前に自分が担当をしているのだから調べる必要もないことなのである。
 どうしてこのようなことがまかり通るのだろうか。

 結論ありきではないか。

 経済産業省は、ここでまた2004年10月20日に虚偽答弁をしているのではないか。
     
 ところで、2012年1月1日の毎日新聞の一面を見て、改めて驚いた。
 「経済産業省の安井正也官房審議官が経産省資源エネルギー庁の原子力政策課長を務めていた04年4月、使用済み核燃料を再処理せずそのまま捨てる『直接処分』のコスト試算の隠蔽を部下に指示していたことが、関係者の証言やメモで分かった。全量再処理が国策だが、明らかになれば、直接処分が再処理より安価であることが判明し、政策変更を求める動きが加速したとみられる。」と。

 予算委員会の議事録を示したが、このとき、中川大臣も認めているように、安井正也さんは、1998年の審議会の担当課の総括部長であり、しかもわたしが、3月に質問をしたときは、原子力政策課長であり、政府の答弁の作成者なのである。
 知らないわけはない。
 
 この記事によれば、担当課長は、4月に改めて隠蔽を指示していることになる。このことを前提に時系列を整理すると次のようになる(2012年1月1日付けの毎日新聞参照)。

 1998年 
 審議会にコスト計算が出る。

 2004年3月
 「直接処理について、試算はあるか」とわたしが聞くが、「日本におきましては再処理をしない場合のコストというのを試算したものはございません。」と虚偽答弁

 2004年4月
 メモを隠すよう指示

 2004年5月
  経産省の諮問機関「総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会」で、複数の委員から直接処分のコスト計算を求める意見が出るが、原子力政策課は委員たちに試算の存在を伝えない

 2004年6月
 分科会は、約19兆円を電気料金に上乗せする新制度の導入案をまとめる

 2004年10月20日
 国会で、質問するが、大臣は、3月の答弁が虚偽答弁であったことは認めるが、課長は知らなかったと答弁
 
 このとき、再処理をさせないように政策転換をできなかったことはかえすがえす残念である。
 これから、核燃料サイクルの廃止を多くの人たちと実現をしていく。
 そして、虚偽答弁をし、嘘をついてまで強行していった経済産業省のなかの推進派の人たちは、本当に問題である。


 第7 被曝について

 1.しなくてもいい被曝をしている
 東電福島原発事故が起きて、放射性物質が空に、海に、大地にまきちらされた。
 多くの人が事故のとき、その後、そして、これからも被曝をし続けるのである。
 遠くの人たちも食べ物を食べるという形で、内部被曝をしていく可能性がある。
 被曝はどこからだったらしてもいいということではないだろう。できるだけ被曝はしないほうがいいのであり、事故のおかげで、みんな被曝をしていく。
 「どこからだったら大丈夫」ということは実は存在しないと思っている。被曝をしないですむのであれば、できるだけ被曝を少なくするように力を尽くすしかない。とりわけ子どもたち、未来のいのちに対して、今、生きている大人たちは責任がある。

 2.1mSvについて
 3月11日前に、文部科学省が、小学生・中学生に対して出している副読本はひどいものである。小学生の副読本は「わくわく原子力ランド」、中学生の副読本は「チャレンジ!原子力ワールド」であり、原発の安全性が強調され、原発がかかえる問題点は書かれていない。
 
 その後、3月11日後に、放射能についての副読本が出された。
 小学生用は、「放射線について考えてみよう」、中学生用は「知ることから始めよう放射線のいろいろ」、高校生用は「知っておきたい放射線のこと」、そしてそれぞれそれを教える先生用のガイドブックがある。
 3月11日以降に作った放射能についての副読本なのであるから、しっかり原発の問題点や被曝の規制などを教えるものであるべきだと思うがそうなっていない。

 子どもたちへの副読本に全く記載をされていない非常に重要なことがある。
 それは、日本では、放射線量の規制の基準が1mSvであるということである。これをまず、真っ先に教えるべきではないか。1mSvの基準は変わっていない。
 このことについては、先生の教えるための教材用の解説のなかには書いてある。ではなぜ子どもたちの副読本には、図ではあるものの文章ではっきりわかるように書いてないのか。
 基準は1mSvなのだということを子どもたちにしっかり教えるべきである。
 だからこそ、今回の東電福島原発事故によって引き起こされた放射線量が高いと言えるのである。
 
 3月11日前の副読本は、ひどすぎる。
 原発安全神話を子どもたちに教えこむものではないか。わたしは、いのちを軽視していると思う。
 しかし、すさまじい事故を経験し、今も被曝が続いているなかで、1mSvという基準をなぜしっかり書かないのか。わたしは、いのちを軽視していることは、変わっていないと考える。
 この放射能を教える副読本は、根本的に見直す必要がある。

 宮城県に行ったときに、多くの女性たちと話をした。すると、そこで、「100mSv以下であれば、健康に影響はありません」と講演をしている学者がいるとの話を聞いた。福島でも宮城でも、話を聞いた。
 誤解を与える説明である。
 このような説明は、即座にやめるべきではないか。

 3.福島県の学校現場における20mSv問題について
 学校現場において1mSvから20mSvという基準を政府が4月19日に出したことは、大きな批判を浴びた。
 政府がこのような基準を出すのではないかということで、その前にも厚生労働委員会で質問をしたが、4月19日に出てしまう。
 そして、その後、20mSvでいいのだということが一人歩きをしてしまう。
 
 この20mSvというのは、とても高い値である。
 労働衛生法での管理区域設定基準は1・3mSv、放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律による管理区域設定は1・3mSvである。
 当時、1・3mSvをはるかに超えるところが多かった.市民団体の調査で、75・9%の学校で管理区域基準1・3mSvを超える放射線を観測、20・4%の学校等では個別被曝管理が必要となり得る放射線を観測。

 結局、1mSvの基準ではやれなくなったので、基準の方を上げることにしたのである。これは本末転倒ではないか。子どもたちが学校で勉強しても大丈夫ですというために、基準をあげるのだから、子どもたちの命を優先して考えているとは思えない。
 
 政府が20mSvという基準を出さないように、4月19日の厚生労働委員会に、原子力安全委員会の委員に来てもらいそのことについて、議論をする。
 子どもは大人と違う配慮が必要ではないかという質問に対してである。
 原子力安全委員の久住静代委員の答弁は次のとおりである。

 「国際的に当てはまりますルールとしては日常的には1mSv以下でございますが、こういう状況を現存被曝状況と私どもは放射線防護で申しますけど、その場合にはこれは1から20mSvの範囲を適用していくというルールかと思います。ただ。じゃ年間20でいいということではなくて、そのうちでできるだけ低く被曝線量を下げていくということは当然のことでございますので、そのようなルールの中で、先ほど申しました子供に対して血の通った適切な対応をしていくということかと思います。」
  
 この直後に、原子力安全委員会は、1から20mSvという基準を出してしまう。このとき、議事録は作成をされていない。
 きちんとした召集手続きを経ていないし、議事録を出して欲しいと言ったら、後に簡単なメモが出てきた。

 なぜこのような結論になったのか。
 このように大事なことを簡単に決めたのはおかしいと原子力安全委員会の事務局に言ったら、事務局は、原子力安全委員会の事務局のところに、文部科学省の事務局が来て、何度か打ち合わせをしていったと答えた。ということは、文部科学省のイニシアティブで進められたのだろうか。
 わたしは、そう思っていたが、厚生労働委員会で、6月7日、鈴木寛文部科学副大臣にこのことを質問をすると違うニュアンスが返ってきた。

 一体誰がこれを決めたのか。
 2011年6月7日の参議院厚生労働委員会の議事録から引用する。

 質問(福島みずほ)
 この二十ミリシーベルトについては、原子力安全委員会でも厚労省でもなく文部科学省が指導をしてきました。これを、二十ミリシーベルトを引き出して動いたのは文科省です。
 一ミリシーベルト以下を目指すとしてくださったことについては、ちょっと質問をしますが、私は、やっぱり二十ミリシーベルトというのを出した文科省の責任はあると思っているんです。二十ミリシーベルトでいいとは言っていない、それは繰り返し国会でも答弁されました。一から二十となっています。二十でよしとはしていない。しかし、二十ミリシーベルトという数字を出したためにそれで二十ミリシーベルトよしとなったんですよ。二十ミリシーベルトが独り歩きをした、この責任はどうなるんですか。

 答弁(副大臣鈴木寛君)
 文部科学省は、今のことを引き出したという事実はございません。原子力災害対策本部において発案をされ、そして原子力安全委員会に助言を求められお決めになったことを文部科学省と厚生労働省が通知をせよという御指示がございましたので、私どもはその担当部局に対して通知をさせていただいたと、こういうことでございます。

 質問(福島みずほ)
 原子力安全委員会に随分ヒアリングをしました。文科省と何度も何度も、専門的助言をする前に文部科学省の事務方と原子力安全委員会の事務方で何度も話をしているじゃないですか。明らかに文科省が主導していますよ。

 答弁(副大臣鈴木寛君)
 これは全て原子力災害対策本部の指示を受けてやったものでありまして、主導はしたという事実はございません。

 質問(福島みずほ)
 じゃ、やっぱり聞きたいですね。二十ミリシーベルトというのを引き出した張本人は誰なんですか。

 答弁(副大臣鈴木寛君)
 原子力災害対策本部の責任において、その指示に基づいて各省の関係職員がそれぞれの職務を履行したと、こういうことでございます。

 質問(福島みずほ)
 文部科学省と原子力安全委員会はずっとこの件で協議をしているんですよ。文科省は、子供たちの命を守るんだったら二十ミリシーベルトなんて出すのは論外だと頑張るべきじゃないですか。

 答弁(副大臣鈴木寛君)
 文部科学省の職員が単独で独断で原子力安全委員会と折衝したという事実はございません。全て原子力災害対策本部の指示の下に行っております。

 質問(福島みずほ)
 対策本部の誰が具体的に指示したんですか。

 答弁(副大臣鈴木寛君)
 最終的な責任は本部長において行われております。

 質問(福島みずほ)
 文部科学省の中において二十ミリシーベルトについてはどのような議論があったんですか。

 答弁(副大臣鈴木寛君)
 これは原子力災害対策本部が安全委員会と御判断をされて、そして官邸の中にも専門家のアドバイザリーグループがあって、そこでの御議論を受けて、そして安全委員会の御議論を受けて決まったことであります。
 もちろん、原子力災害対策本部の一員に文部科学大臣が入っていると、これは関係大臣全て入っているわけでございますが、そのことは事実でございます。
 ただ、これはICRPの勧告というものを、そこに何か付け加えることも、あるいはそこから何か引くこともなく、その勧告に淡々と従っているということで我々は理解をいたしたところでございます。

 質問(福島みずほ)
 文科省は子供たちの命を守ってほしいんですよ。だからこの問題をずっと取り上げてきました。先日、一ミリシーベルトを目指すということなんですが、一ミリシーベルトを目指すための文科省が今具体的にやっていらっしゃる行動について教えてください。

 答弁(副大臣鈴木寛君)
 文部科学省はもとより子供たちの心と体とその発達について最大限の努力をこれまでもいたしてまいりましたし、これからもいたしてまいるということに何ら変わりはございません。
 ただ、そのときに、是非御理解をいただきたいのは、これは国連科学委員会の勧告にもございますけれども、被曝者として扱われたという体験が精神的な影響を与えると。そして、例えばチェルノブイリの報告でありますと、そのことによって数百万人の方が結局自立できない、意欲がなくなって自立できないというような報告も出ているということも御理解をいただきたいと思います。
 もちろん、一番の大前提として、受ける線量を下げていくということは当然の原理原則であるということも我々は明記をさせていただいております。
 そういう中で、五月二十七日に、福島県内における児童生徒等が学校において受ける線量低減に向けた当面の対応についてお示しをいたし、そしてこの学校において受ける線量については一ミリシーベルト以下を目指すという、こういう方針を出させていただきました。
 このことを実現すべく、まず福島県内の全ての小中学校等に対して携帯できる積算線量計を配布し、これにより児童生徒等の受ける実際の積算線量のモニタリングを実施をいたしました。これまで五十五校については行っておりましたけれども、全ての小中学校において行えるようにいたしたところでございます。そして、それを原子力安全委員会に報告をすると、こういうことにしております。それから、空間線量が毎時一マイクロシーベルト以上の学校を対象として、校庭等の土壌に関して線量を低減する取組に対し、市町村の教育委員会等と学校の設置者の希望に応じて財政的支援を行うことといたしました。つまりは、ほぼ全額を国が負担するということでございます。こうした対策を行っております。
 引き続き、全校に配布いたしました携帯積算線量計の数字がこれから上がってまいりますので、そうしたことを踏まえて更なる検討を引き続きしてまいりたいというふうに考えております。

 この中間報告のなかに、「文部科学省は、20mSv/年という値を設定するに当たり、福島県放射線健康リスクアドバイザーが100mSvまでの被ばくであれば健康に影響はないと説明していたことから、政府があまりに低い基準値を示すと、現地を混乱させる可能性があることも参考とした」という記述がある。

 誰が主導して決めたのかと思うが、福島県の学校再開の基準について、福島県が現地対策本部に要望し、これを受けた文部科学省が検討を開始し、安全委員会も意見を出し、関わったどの機関も20mSvはおかしいとしなかったことが問題ではないか。
 また、そもそもこの基準が福島県の学校再開の基準のために作られたものであり、高くなってしまっている放射線量にあわせて、1mSvの基準を上げて、20mSvとしたと考えられるのではないか。
 初めから、子どもたちのために、1mSvにすることをめざすとするのではなく、学校再開のために基準を変えてしまったことが問題である。
 同じことは、労働者の被曝の限度についても、埋めてもいい汚泥のべクレルの基準についても、3月11日以降変わってしまうのである。
 
 とにかくいのちを守るというのではなく、現実に合わせて、基準を変えており、そこでは明確にいのちが軽視されている。
 これは、実は、避難の範囲についても同様である。
 早く20キロから30キロの自宅退避を避難に切りかえるべきだと何度も何度も要請したが、難しい、困難であるということであった。

 この20mSv問題は、福島をはじめ多くの人たちの子どもたちの命を軽視しておかしいという怒りを引き起こした。当然である。
 議員会館のなかで、何度も何度も行政交渉が行なわれた。矢面に立っていたのは、文部科学省の職員である。
 わたしが忘れられないのは、5月23日に、文部科学省の庭で開かれた政府交渉である。政務3役は仕事があるということで出てこなかった。
 福島から、おかあさん、おとうさんたちが、バスに乗って多数やってきていた。庭が一杯になっていた。
 俳優の山本太郎さんが、「子どもの命を守れ」といったことを大きな声で言っていた。
 子どもを連れた女性が切々と訴える。

 このときのポイントは、主に、2つ。
 1mSvに戻せということ。
 除染の費用はそれまで、全部自治体の負担だった。だから、経済力のある自治体はやれても経済力のない自治体はやれない。自治体で大きな格差が生じていた。だから、除染の費用を国が持つべきだ、というものだった。
 
 このときの交渉で、役人は必ず政務3役に伝えるということを確認した。

 後日、伝えたかどうか確認をすると、きちんと伝えたという回答。それなら、今度は、大臣たちに会って、このことを進めたい。
 高木文部科学大臣は、「福島さんと2人なら会ってもいい」ということだったので、5月26日に大臣室でお会いをする。大臣は、長崎出身。長崎の被曝の話にもなった.前述した2つのポイントについては、大臣は、基本的に了承をしてくれた。 
 次の日の5月27日、文部科学省は、児童生徒が学校において受ける1線量低減に向けた当面の対応を発表。
 1mSv以下をめざすということと国の費用で除染するということを盛りこんだ。
 
 子どもたちを放射能から守る福島ネットワークやFoEやふくろうの会やいろんな人たちと話をする。不充分な点はあるが、一歩前進という意見が多かった。良かった。

 浜岡原発停止もそうだが、実に多くの人たちの多くの熱い熱意と行動が、政府を動かし、政治を動かしていることを実感できた。
 あれだけの人たちが、文部科学省に来て、また、それまでの多くの行政交渉や集会がやっぱり変えたのだと思う。
 問題がこれで解決したわけではもちろんない。 
 
(以下、続きます)

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