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福島みずほのどきどき日記

「ある精肉店の話」

 「ある精肉店の話」と言う映画を見ました。
 「祝の島」に続く纐纈あや監督作品第2弾です。
 とってもいい映画でした。いのちを食べていのちを生きるとチケットに書いてあります。
 
 私は大学生の時に、大きな食肉センターを訪れたことがあります。
 今回、その時のことをとても思い出しました。
 7代続く精肉店。牛を飼い、牛を解体し、その肉を売る、そのことを家業として家族で力を合わせてやってきた1つの家族の物語です。
 
 女友達と一緒に映画を見に行ったら、彼女は肉を食べることができない人なので、映画をみて大丈夫だろうかとそう言いました。でも彼女もしっかり映画を観てきました。
 私は実は、とてもお腹が空いている状態でこの映画を見たので、この映画を見たあとお肉が食べたくなりました。
 それくらい、私たちが命をもらい、命を食べるいう事をとても実感するそんな素晴らしい映画でした。
 私は多くの子どもたちにこの映画を観てもらいたいと思いました。
 私たちは、命をもらい、命を食べる。多くの人たちの手が入って、そして肉を食べる。そのことに心から感謝をしたい。
 
 この映画を見なければ、肉や魚はスーパーの切り身でしかなかったのかもしれません。
 切身としてしか感じないのではなく、 生き物を私たちは食べるのだということを考えることができる素晴らしい映画でした。
 牛を解体することは、凄まじい力仕事でした。真剣に命に向き合い、真剣に仕事をすることなくしてそのことを実現をすることはできません。そして、肉だけではなく、内臓、皮も含めて全てのものを有効活用していく作業が続きます。

 そして、この家族が力を合わせていくことが素晴らしいことです。

 牛の解体、肉を売る仕事をしていくために、みんなが力を合わせていかなければなりません。
 小さい時から、親を助け、親と一緒に作業していくことが描かれています。おばあちゃんが居間にいて、その居間には、犬がいます。犬は家族をじっと見ていて、とてもおとなしくしつけられています。何代もの家族が力を合わせてやっていくことが淡々と温かくこの映画で描かれています。

 私はいわゆる長男の生きかた、たたずまいがとても印象的でした。お父さんを見て育って、お父さんのことを理解し、後をついでいく。妹や弟や妻と力を合わせて、家業を営んでいく。その不思議な佇まいに覚悟や決心というものを見ました。人権教育などで話をしています。優しくて、淡々としていて、真剣です。

 次に、部落差別のことを改めて考えました。

 私は狭山差別裁判の弁護人の1人をしています。今でも東京高等裁判所に、証拠開示の交渉に行ったりしています。

 裁判のなかで、学んだことがたくさんあります。

 この映画を見ながら狭山裁判のことを考えていました。この映画の中で、お父さんは、事を書いたり、読んだりすることができません。それは学校の中で差別を受けて、学校に行かなくなったからです。狭山裁判の石川さんも、長いこと字がうまく書けませんでした。そのことをこの映画を見ながら考えていました。

 この映画の中でも狭山裁判の集会に行くことなどが描かれています。人権教育と言うと堅苦しくなるかもしれませんが、まさにこの映画が1つの人権教育なのではないか。

 私はこの映画を見ながら改めて水平社宣言を考えていました。この映画の中でももちろん水平社宣言が取り上げられます。なぜ、自分たちが差別をされなければならないのか。差別を受けてきた自分たちが、誇りを持って生きる時が来たのだという水平社宣言のそのエッセンスはこの映画の中で淡々と素晴らしく描かれているように思います。

 もちろんこの映画は堅苦しい映画ではありません。 1つの家族の生き生きとした日々が、生き生きとした仕事が、お祭りをしたり、太鼓を作ったりする様々な日々が描かれています。そして、その日々の中に、一人ひとりの仕事への思い、家族への思い、社会への思いなどが描かれています。私は、その意味でもこの映画を1人でも多く、とりわけ1人でも多くの子どもたちに見てほしいと思いました。

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