硫黄島からの手紙 ー硫黄島から生還したパン屋さんは日本国憲法を歓迎しただろうー
2007 / 01 / 07 ( Sun )
1月7日(日) 
 新聞の広告に載っていた映画「硫黄島からの手紙」についての糸井重里さんのコピーは、「わたしは、ただのパン屋です。」というものです。

 この映画は、硫黄島で総指揮をとった栗林中将をはじめ、幕僚、そして、様々な兵士の立場から描かれています。パン屋というのは、二宮和也演ずる兵士西郷であり、もともと大宮でパン屋をやっていて、妊娠中の妻花子を残して出征をし、妻にたびたび手紙を書き、生きて帰りたいと思っている男です。
 渡辺謙演ずる栗林中将というのは、実在の人物で、アメリカやカナダに駐在し、だからこそアメリカとの開戦に反対をした人物なのです。
 
 兵士たちが、海岸で穴を掘っている場面があります。栗林中将は、これでは米軍の戦車がくれば、一日で負けてしまうと考え、島のいたるところに洞窟を掘り、持久戦に持ちこみ、少しでも本土決戦を遅らせようと考えます。
 精神論ばかりで、反対をする幹部たち。「アメリカべったりだ。」と陰口をたたきます
 栗林中将は、あっという間に玉砕をするのではなく、徹底抗戦し、かつ一日でも長く兵士が生きられるように考えます。
 他の兵士は、撤退して本隊に合流せよという中将の命令を無視した上官の指示で自決したのに、パン屋さんたちは、すり鉢山から撤退し、本隊に合流したところ、上司である伊藤中尉(中村獅童)からは、「生きてすり鉢山を離れるなという指示だったはずだ。」として、日本刀で首を切られようとしていました。中将は、伊藤中尉を、「兵士の命を粗末に扱うな。」と叱りつけ、そして、「撤退を命じたのはわたしだ。」と言い、処刑を免れさせます。
 戦場の場面での理不尽さ、おろかな判断、戦略としても合理性がなく、兵士の命を無駄にしかねないことが描かれます。

 5日間で、陥落できると米軍は考えていましたが、日本軍は、張り巡らした地下壕を活用し、徹底抗戦し、36日間かかって陥落します。
 硫黄のにおいがし、暑く、飲み水や食料が枯渇し、赤痢などの病気も広がっているなかで、死闘が続きます。
 
 日本軍の兵力2万933人、米軍6万1000人、日本軍の戦死者は1万9900人で、米軍は6821人です。
 日本軍は、ほとんどの人が戦死をしました。

 感動的な場面があります。
 負傷し横たわった米兵とバロン西(ロサンジェルス5輪で馬術で金メダリストをとった実在の人物)が英語で「どこから来たのか?」と話す場面。
 その兵士が亡くなった後、その兵士の母親からの手紙を読み上げる場面です。「生きて帰ってきて。」という母親の手紙です。
 「鬼畜米英」と言っていたけれど、そうではないのだということが、日本軍の若い兵士たちにもわかります。
 
 監督・製作をしたクリント・イーストウッドは、この硫黄島で亡くなった日本とアメリカの両方の人たちすべてを追悼しようとして、この映画を作ったのではないでしょうか。自決をした人を含めてすべての人を追悼しようとたのではないでしょうか。

 アメリカ側からの映画「父親たちの星条旗」もできるだけ早く見たいと思っています。

 記憶に強く残っている場面があります。
 パン屋さんに、召集令状を届けにくる人がいます。「おめでとうございます。」と言ってもってくるのです。
 生きて帰ってこれない可能性が高いのに。
 「愛国婦人会」のたすきをかけた女性たちは、悲しむ若い妻に対して、「こんなご時勢なのだから」とガンと言います。

 また、憲兵が、街を歩いていて、「ここは非国民のうちだ。」と言います。何だろうと思ったら、「日章旗が掲げてない。」として掲げさせます。

 戦争はつくづく嫌な愚かな残酷なものだと思います。
 戦争に反対な人も死にたくない人もいろんな人をすべて巻き込んでものすごい勢いで連れていってしまいます。愚かな選択、愚かな作戦、理不尽な仕打ちに太刀打ちができなくなっていっています。
 こんな愚かなことの巻き添えは断じてごめんだと強く思いました。でも戦争はすべての人を巻き添えにするのです。

 国民の命など全く大事にされていません。
 硫黄島には、本土から援軍は来ません。

 パン屋は、栗林中将に3回助けられます。
 
 パン屋は、米軍の捕虜になりますが、その後、恐らく生きて日本に帰り、日本国憲法の制定を歓迎したのではないでしょうか。
 彼は、妻と娘のところに生きて帰りたいと念じていました。
 生きて帰れなかった人たちも家族のことを死ぬまで思っていたでしょう。栗林中将も含めて家族のことはみんな心配だったはずです。そして、残された遺族は厳しい生活をしたはずです。
 
 これから平和のことを考えるときに、この硫黄島のことに思いをめぐらせようと思いました。

 ところで、安倍総理もこの映画を見ています。

 国民をこのような境遇に追いやることが、総理の考える「美しい国」の結果ではないかと思います。

 どんな気持ちでこの映画を見たのかぜひ論争をしたいものです。
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